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黙って笑って抱き寄せて

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黙って笑って抱き寄せて

3 - 自由なままで、変わらぬ二人で

♥

17

2020年03月09日

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慎一郎

ただいま

リビングのソファーに腰掛け、体重を預ける

今日はいろいろなことがありすぎて疲れた

こずえに告白してみたものの相変わらずこずえは どこか掴みどころがない

これは幼馴染としても恋人としても如何なものだろう

なんとか告白をしてみて少しだけ強くなれたかもと 思った矢先の出来事に

自分は打ちひしがれていた

おう、兄貴か

遅かったじゃねぇか

飯できてるから、さっさと食えよ

慎一郎

うん、ありがとな

どうしたよ持ち前のウザさはどうした?

慎一郎

え、お前が心配するほどか?

慎一郎

こずえにも面白くないって言われたが

もしかして、こずえさんにふられたか?

慎一郎

いや、付き合うことになった

だったら、なんで何落ちこんでんだよ

慎一郎

現実を受け止められない

玉砕覚悟の告白が成功したことか?

慎一郎

告白したあと一緒に帰ったんだけど

慎一郎

明日休みだから近くに遊びに行こうって

二人で?

慎一郎

二人きりで

デートじゃん

慎一郎

やっぱりそう思う?

それ以外何があるよ

慎一郎

いやぁああああ死ぬぅうぅ

そりゃ妹に尻叩かれてやっとの思いで告白を決意したような
ヘタレ兄貴には荷が重いわな

慎一郎

そうなんだよなぁ

慎一郎

まともに会話できるかも怪しいし...

でも、やるじゃんか

ちょっと見直した

慎一郎

何が?

こずえさんにデート誘われるってなかなかだよ

なんたってこずえさんは中学時代の私の師匠で
表沙汰にこそなってなかったが

血染めバットの女帝
と呼ばれていたからな

慎一郎

そんなのあったの!?

慎一郎

普段ガラの悪いお前が随分懐いているから
奇妙だとは思っていたが....

私はあの人に女としての道を教えてもらったんだ

私が姉さんと呼ぶのはこずえさんだけだと決めてる

慎一郎

もしかして、告白をやけに勧めてきた理由は....

こずえさんを姉さんと呼びたいから

慎一郎

やっぱりか....

まさか成功するとは思ってなかったがな

ここまで来たんだから逃げるなよ?

こずえさんに愛想つかされるようなことしてみろ

私が黙ってないからな

兄をここぞとばかりに利用する可愛げのない妹と

デートと称して飯を奢らせようとしてくるであろう 愛すべき幼馴染は

いついかなるときでも俺を追い詰める

俺は小遣いと明日来ていく服の確認を終え、 デートという名の戦場に赴く覚悟を決めたのだった

こずえ

ちょっといい?

私は兄の部屋の扉の隙間から顔を覗かせた

部屋は相変わらず、隅々まで掃除が行き届いており 机の上には整然と医学書が並べられている

兄は人の良さそうな顔と語り口でで人脈を広げるやり手で その類まれなる人心掌握術で多くの女子を虜にする 俗に言うイケメンと言うやつだ

しかしながら蓋を開けてみれば 被った猫の下には悪魔すら戦慄させるであろう 性格の悪さと狡猾さを持ち合わせている

私の方に振り向き、人畜無害そうな笑顔を向ける兄にこう続けた

こずえ

兄さん明日朝から出かけるから
昼ごはん置いとくよ

大丈夫だよ
自分で作るから

友達と遊びに行くの?
お小遣い渡しとこうか?

こずえ

自分のやつで足りるだろうから大丈夫だよ

そう?

今日は随分機嫌がいいね

こずえ

先輩に告られたんだ

ホントに?
すごいじゃん

彼ヘタレなのによくやったよ

こずえ

付き合うことになったから
明日はお昼ごはん奢ってもらう

つまりデート?

こずえ

そうなるのかな?
私から誘ったけど、遊びに行こうとしか言ってないよ

じゃあ僕はお義兄さんになるのかぁ

こずえ

なんで結構する前提になってるの?

弟が欲しいなってちょっと思っててね

慎一郎くんは面白いからな〜
見てて飽きないし

こずえ

兄さん先輩と仲良かった?

こずえ

前も先輩の頭蓋骨が好きとかなんとか言ってたけど

いや、慎一郎くんとはクラス違うから

小学生のときに少し話したことあるだけ

俺が一方的に知ってるんだよ

こずえ

これ以上は踏み込んではいけない気がするから
もう聞かないことにするよ

我が妹ながらなかなか鋭いね
賢明だな断だと思うよ

そんな妹のために兄さんが服を選んであげよう

こずえ

私の部屋に入るための口実だよね?

バレたかー

でもデートなんてお前は初めてだろうし
経験豊富な兄が色々教えてやろうと思ったのは本当なんだよ?

こずえ

余計なお世話だ

いや〜手厳しい

こずえ

そもそも、先輩が好きだから付き合ったわけじゃないよ

ご飯おごってもらうため?

こずえ

先輩をおちょくるため

ほれ見ろ
慎一郎くんのこと大好きじゃない

こずえ

嫌いではないよ?

こずえ

告白してきた先輩冷やかすのめちゃくちゃ楽しいし

愛が歪んでるね(*´ω`*)

こずえ

愛じゃない

ならなんて言うの?

こずえ

この気持ちに名前なんてつけるのは無粋だよ

何でもそう言えばはぐらかせると
思ったら大間違いだからね?

私はなんとなくムカついたので扉を勢いよく閉めた

大好きだと言うのはあながち間違っているわけでもないのだが しかしながらそれを口にしてしまったなら

私はこの気持ちを型にはめなくてはならなくなる

このまま自由な二人のままで 変わることなくずっと幼馴染のまま

だらだらと先輩の隣で笑っていたいだけだ

だから明日はデートでもなんでもなく ただの幼馴染として先輩に会いに行く

こずえ

なんで恋人なんかになったんだろう

慎さんより先輩って呼ぶほうが しっくりくるし

付き合わなくたって予定が合えば いつでも二人で遊びに行けるにも関わらず

付き合ってしまった

たぶん私はその場の雰囲気に流されてしまったのだ

そう思って、少しだけ後悔した

後悔してしまったのだ

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