これでもういいんだ。
また静かな生活に戻るだけ。
何も変わらない。
いつも通りの日々が戻ってくるだけ…。
五月
……ん……。
五月
(静かだな…)
五月
(いつも通りか…)
ガサガサ
五月
ん……?
五月
!
五月
この匂い…
七菜
おはよう。いつきさん。
五月
なぜ来た…。
五月
来るなと言ったはずだ。
五月
それとも俺に喰われに来たのか?
七菜
……いいよ。
五月
は…?
七菜
私このまま終わるなんて嫌だ!
七菜
いつきさんに食べられるのなら
七菜
悔いはないよ。
五月
お前……本気で言ってるのか?
七菜
うん。
七菜
最後にさ…。
七菜
今までありがとう。私のことを支えてくれて。
七菜
昨日はごめんね。あんな酷いこと言っちゃって。
五月
…………
俺は……
五月
俺には…喰えない。
七菜
……
五月
なんでっ…!
五月
どうして!
五月
俺は狐だぞ?!
五月
なんでお前はそこまでするんだ…
七菜
…私、いつきさんのこと嫌いじゃないし。
七菜
それに、
七菜
狐だってなんだって
七菜
いつきさんはいつきさんだから。
五月
っ…!
五月
なん…で…
五月
なんでお前は…
五月
………
五月
……ふっ…
五月
はははっ……
七菜
ねぇ、いつきさん。
七菜
私を支えてくれた時と同じように
七菜
今度は私がいつきさんを支えるから!
五月
……
五月
俺が何言ってもどうせ聞かないだろ?
五月
好きなようにすればいい。
七菜
やったぁ!
七菜
よかったぁぁ…!
こうなるはずじゃなかったのに、
よかったと思ってる自分がいる…
七菜
いつきさん、今度からは隠し事なしよ!
七菜
分かった?
五月
なんで俺がお前に指図されなきゃならないんだ…
七菜
ダメだからね?
五月
わかったよ…
五月
その代わり七菜もだぞ
七菜
わかってる
七菜
お互い隠し事はなしね!
七菜
じゃあ!また明日ー!
五月
あぁ、また明日。
いつも通りの日々というのを勘違いしていたのかもしれない。
七菜と出会ったあの日から
『いつも通り』は変わっていたのかもしれない。