りお
りお
りお
2人きりの教室で、彼女は窓から外を眺めて呟いた
こんなに寒い日に窓なんか開けて、揺れるカーテンすら景色に入れ込んでいる
りお
りお
外の景色から目を逸らさず、彼女は僕に問い掛けた
大輝
大輝
大輝
りお
可笑しそうに吹き出して笑う彼女を、僕は眩しいものを見る様に目を細めて見詰める
彼女の笑顔を見るのも明日で最後なんだと思うと、胸がギュッと締め付けられる
卒業なんかしたくない
もっと、ずっと一緒に居たかったのに
りお
りお
まるでお別れの直前を思わせるその台詞に、本当にお別れなんだと心臓が痛む
僕は何も答えられなくてスッと彼女から視線を逸らした
朝早いこの時間は、朝練の準備を始める生徒の声しか聞こえてこない
教室が並ぶこの階には、多分僕と彼女しかいない
周りは静かで、僕の心は騒がしくて、そして彼女も静かだった
りお
りお
りお
あの日は確か雨が降っていた
委員会の居残りで帰りが遅くなり、僕は一人で学校の廊下を歩いていたんだ
大輝
大輝
昼頃から降り始めた雨が止む事を願いながら、僕は委員会の仕事をしていた
その願いは届かなかったようで、仕事が終わった時には更に強く雨は降っていた
誰も居ない廊下をトボトボと歩き、1階の昇降口を目指す
ふと、何かの物音で足を止める
大輝
誰かが黒板に何かを書いている、そんな感じの音がする
不思議と怖いとは思わなかった
恐怖ではなくて"見つけてあげなくちゃ"と使命感の様なものが、僕の中には芽生えていた
廊下を足早に進み、教室を1つ...また1つと確認していく
大輝
そこは僕のクラスだった
女子生徒が1人、やはり黒板に何かを書いている様だった
女子だと分かり少し躊躇うも、僕は教室の扉をガラガラッと開ける
りお
女子生徒は余程驚いたのか、チョークを床に落としながら勢い良く僕の方を振り返った
大輝
大輝
何となく教室の中に入ったらダメな気がして、僕は入り口に立ったまま慌ててそれっぽい理由を口にした
女子生徒は何も答えず、ただ驚いた顔を崩さない
そして、パタパタと彼女の方から近寄ってきた
りお
大輝
大輝
大輝
大輝
大輝
リボンの色を見ると、どうやら彼女は1つ上の先輩のようだ
だけど、女子のリボンってあんなデザインだったかな...?
あまり異性の胸元を見る事も無いし、ハッキリとした違いは分からなかった
すると彼女は、手で口元を押さえて大声で笑い出す
りお
りお
りお
りお
僕には何が違って、何がそんなに面白いのか全然分からない
爆笑する彼女にたじろぎながら、僕は次の彼女の言葉を待った
りお
りお
りお
これが彼女...りおとの出会いだった
その日から、彼女の提案で僕達は付き合う事になったんだ
彼女には色々と制限があって、会えるのは同じ空間に誰も居ない学校の中だけ
つまり、僕が学校に来なければ彼女には会えない事になる
だから、初めから2人で決めていた
この関係は僕が卒業する日まで
りお
りお
大輝
大輝
情けなく声が震えているのが丸わかりだ
彼女もそれに気付いたのか、ゆっくりと僕の傍まで歩み寄る
りお
大輝
りお
大輝
りお
ハッとして顔を上げる
目に映った彼女の瞳から、ポロリと大粒の涙が零れ落ちた
あっと思った時には、その涙は後から後から零れ出してしまっていた
どうしたら良いのか分からず、僕は制服の袖を掴んでそのまま彼女の頬を包む
大輝
大輝
りお
りお
制服の袖から伝わる涙は温かくて、彼女の本当の姿を忘れてしまいそうになる
彼女の涙を見ていたら、僕まで涙腺が緩んでしまった
大輝
大輝
りお
りお
頬を包む僕の手に、彼女の冷たい手が重なる
流れるものは温かいのに、触れる場所はいつも冷たい
僕はりおに近付き、そっと額に口付けをする
大輝
大輝
りお
泣きじゃくる彼女に、僕はある事を言おうとして躊躇う
それを言えば、きっと彼女を苦しめてしまう
この先、辛い思いをし続けるのは彼女なのだから
次に何て言葉を掛けたら良いのか悩んでいると、彼女の方から言われてしまった
りお
りお
りお
りお
不安そうに僕を見上げる彼女は、もう何年も僕の年上なのに...歳の変わらない、ただの女の子にしか見えなかった
目の奥が更に熱くなる
声を出して泣きたい衝動を必死に抑え、僕は笑って言葉を返した
大輝
大輝
大輝
りお
りお
りお
大輝
少しずつ人の声が増える校庭
僕と彼女は熱い涙の味がする
冷たい誓いのキスをした
ーENDー
コメント
2件
幽霊との恋…めっちゃ良きです!!