コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
じゃぱぱ
気がついたら朝。
いつだってそう。 本当にうんざりするよ。
無理矢理引き戻された朝。 俺は起きてからすぐにそこら辺の 服を適当に着て全速力で 真夏の空の下を走っている。
その朝はゆあんくんの家に 向かっていた。
最近の俺はおかしいんだ。 1人でベッドに座って電気もつけず 状況を整理したり考え事をしようと 思っても同じことがぐるぐる頭を回ってはまともに考え事ができない。
1人で考え事ができないのだ。
この世界のことおさらい しようとしても全くだめ。 紙に書いてみても 口に出してみてもだめ。
何の整理もつかない。 ゴールに向かっていない。
ゆあんくんと離れてからの 俺はおかしい。
ゆあんくんは俺にとって呪縛だった。
今この世界にいる俺の中心にあるのは いつだってゆあんくんだ。 俺の思考は全てゆあんくんへと繋がる。
でもこれを俺は受け入れている。 認めている。
そのこと自体が「俺」になっている。
この呪いの本質は そこじゃないんだよ。
こんなにも俺の中心となっている はずのものが何なのか俺は知らない。 何も知らない。
無知、無知なんだよ。
自分の大事な部分を知らないのは 自分を知らないことと同等だった。
これが呪いだ。
この呪いのせいで俺はゆあんくんに 対する慈愛が生まれた。
これもさらなる呪いだと考える。
俺たち2人しかいない世界での 慈愛なんて最低だ。
それが俺たち2人の中に 歪みをうむことを俺は知ってる。
でも理解はしていなかった。
それがどういうことなのか。
ゆあんくんは理解していた。
先に解決すべきことが 俺にはあったんだ。
だからこそ彼は俺を避けていた。
既に歪みは起きていた。
じゃぱぱ
ゆあんくんの家のチャイムを押す。
しばらく沈黙が続く。
おそらく母親はすでに仕事に 出かけているんだ。
となるとゆあんくんが 俺を無視しているという事。
俺はもう一度チャイムを押した。
しかしやはり彼の声が 聞こえてくる事は無い。
じゃぱぱ
大きな声で呼びかける。
頼む出てくれ。 そうじゃないと困るんだ。
もう一度チャイム押そうとしたその時。
玄関が静かに開いて 無造作な前髪で目が隠れた ゆあんくんが出てきた。
首元がよれよれのTシャツは ゆあんくんの部屋着だ。
ゆあん
じゃぱぱ
ゆあん
じゃぱぱ
じゃぱぱ
そうするとゆあんくんは 黙って扉を開いた。
すぐに踵を返して 家に戻って行ってしまう。
これは入っていいという意味なのか…? と思いその場に立ちすくんでいると…
ゆあん
じゃぱぱ
入ってよかったらしい。
ゆあん
じゃぱぱ
ゆあん
じゃぱぱ
ゆあん
じゃぱぱ
ゆあん
じゃぱぱ
ゆあん
じゃぱぱ
ゆあん
ゆあん
じゃぱぱ
俺はようやく緊張が解け 全身の力が抜ける。
安心したようにあぐらをかいて 俺は本題に入ることにした。
じゃぱぱ
ゆあん
じゃぱぱ
ゆあん
じゃぱぱ
ゆあん
ゆあんくんはこっちに来てから すぐに黒猫が現れたらしい。
すぐそこの窓の縁に。
猫に聞いた内容は 大まか俺と一緒だったが 1つ違う点があった。
じゃぱぱ
ゆあん
じゃぱぱ
本来なら協力してここから 出ようとするのに俺たちは協力どころか関係はどんどんと拗れていった。
見かねた黒猫が助け舟を出してくれた ということだろう。
どうりで呆れた様子の登場だった訳だ。
ゆあん
ゆあんくんの言葉に続いて 「どうしてこんな世界に…」 と口走りそうになりすぐに俺は 唇をきゅっと閉めた。
ここに来たのは何を隠そう ゆあんくんの自殺が原因だったのだ。
ゆあんくんに自殺の理由だが 俺は見当もついていない。
あんなに一緒にいたのに 知らなすぎる。
聞いていいものなのか…。 なんて頭を悩ませる。
聞けるわけない。 聞けない。
だって 「お前のせいだよ」 なんて言われたら。 怖いから。
心のどこかじゃ俺のせいかもって 思ってるから。
聞けない。
やっとゆあんくんが 俺と話してくれるようになったんだ。 このチャンスは逃したくなかった。
じゃぱぱ
ゆあん
じゃぱぱ
ゆあん
ゆあん
「じゃぱぱが俺のこと嫌いになる 理由は山ほどあるな、」
なんてすっごく悲しそうな顔で 無理やり口角を上げて 視線を落としてしまうから 泣きたくなる。
なにそれ、なんだよそれ。
俺がお前のこと嫌いになるわけない。
じゃぱぱ
ずっと聞きたかったこと。 聞いてみたかったこと。 昨日の夜ずっと俺の頭を支配していた 言葉の意味。
俺は「逆って…どういう意味なの?」 と言った。
確実に言った。
でもその声に重なって 大きな衝突音が俺達の耳を劈いた。
重い重い金属の塊がぶつかった音。
ガラスが割れる音。
俺達は目を見開いて顔を合わせる。
じゃぱぱ
ゆあん
慌てて部屋の窓に駆け寄ってみると 目下にフロントバンパーが 潰れた車と横転するバイク。
驚きが隠せない俺達は そこから目を離せない。
じゃぱぱ
ゆあん
じゃぱぱ
8回目のループにして 初めての出来事であった。