祭りの日はすぐにきた。
佐野さん
佐野さん
さくら
さくらは内心怯えながら料理を運んだ
さくら
結衣ちゃん
さくら
結衣ちゃん
言いながら結衣はそそくさと厨房へ歩いて行った
さくら
さくら
さくら
さくら
さくら
さくら
さくら
さくら
少しするとやることがなくなり、何かしようかと尋ねてみるも大丈夫、と返されるようになった
さくら
と、端っこで制服を整えている佐野に気がついて声をかける
さくら
佐野さん
さくら
佐野さん
さくら
さくら
佐野さん
結衣ちゃん
結衣がこちらに駆けてきて、さくらたちの背中を押した
さくら
3人が窓の近くまで歩いていくのを、店に残っているお客さんに目線で追われる
ドォン!
目の前の日常の風景に、パッと花が咲いた。
夜空に輝く、明るい明るい光。
それはその日だけの、月より明るい大きな花だ。
さくら
結衣ちゃん
さくら
結衣ちゃん
店長
結衣ちゃん
店長
さくら
花火の規模は、そこまで大きくない。
めちゃくちゃ有名なわけでもない、それなりの地元の神社
さくらたちが初詣に行った、あの神社のお祭りである。
さくら
さくら
先ほどから何も言わない佐野の方を向くと、その視線はこちらへ向く
佐野さん
瞬間、さくらの言葉は、表情は───そこで止まった。
ゆったりと目を細めて笑った先輩の横顔を、花火の明るい光が照らしている。
窓の外から、パパパパッと、何発かの花火が連続で放たれている。
─────そして、
緩やかで余裕があって、優しくて
さくらより背も歳も上の、でも、ふつうの、その男が口にしたその一言が
佐野さん
──その、表情が。
なによりさくらを釘付けにした。
このとき、さくらが抱いた感情は
決して──花火のように華やかなものではない。
花火の大きな音と人々の騒ぎ声に混じって溶けていくような、蕩けていくような
そんな、ゆったりとした恋に
最後の花火から舞う光の欠片のごとく、落ちていった。
チリンチリン。
その聞き慣れた鈴の音で、さくらは気を取り直して声を上げた。
さくら
のあちん
さかも
湊
ゆうめん
空太
さくら
さくらは声を潜めて駆け寄る
のあちん
さくら
さかも
さくら
のあちん
さかも
さくら
店長いわく、友人と少しくらい話してもいいとのことで、食事の提供も任せてくれるらしい。
この日にまでそれが適応するかは分からないが、花火が終わって帰るお客さんたちもいたので許されそうだな、とさくらは思った。
さくら
湊
さくら
さくら
のあちん
空太
さかも
ゆうめん
のあちん
さかも
湊
さかも
空太
さかも
湊
さくら
さくら
ゆうめん
みんなに料理を運んだあと、キッチンに戻ると結衣に聞かれた。
結衣ちゃん
さくら
結衣ちゃん
結衣ちゃん
結衣ちゃん
さくら
佐野とも目があったが、他には誰も特に何も言わなかった。
だからさくらも特になにか言うわけでもなく、逃げるようにキッチンからまた飛び出した。
空太
さくら
のあちん
ゆうめん
のあちん
湊
さかも
空太
さくら
チリンチリン、と鈴の音が鳴り、さくらは顔を上げた。
さくら
湊
さくら
さくらが小走りで入り口に近づくと、入ってきたのは3人のお客様。
お父さん、お母さん、そして────
さくら
さくら
さくらがまだ話していると思ったのか結衣が表に出てきたので、助太刀をお願いする。
結衣ちゃん
結衣ちゃん
結衣ちゃん
さくら
どうぞ、と誘導している最中、5人から痛いほど視線を浴びた
さくら
さくらはそのままレジへ向かう。
さくら
レジ打ちをしているとさっきのベビーカーのお客さんがやってきた
ベビーカーの中にいるのは小さくて白くてほわほわした赤ちゃんだった。
さくら
会計中、よそ見をしながら佐野が現れたが、ベビーカーで通路が塞がれてしまい、あ、という顔をしていた。
たぶんさくらも、あ、という顔していた。
佐野はお客さんにベビーカーで道を塞いでしまわないように誘導しつつ、
目が合ったのか赤ちゃんに笑いかけ、可愛いですね〜と感じ良く言う
そして佐野が裏へ戻っていくまでを横目で気になりながら、さくらはレジを終わらせた。
さくら
赤ちゃんへなのか、佐野へなのか、それとも両方なのか
すべてが初めてのさくらにはもう、分からないことだらけだった。