『君と僕の忌避進路』

翔太視点　星合高校

僕が帰る準備をしていると、クラスメイトの男の子に突然そう言われる

そこには、見慣れた白髪の男の子が 顔を突っ伏してうずくまっていた

まふくんのその言葉に、僕は目を見開いて動揺した

それからまふくんは色んなことを話してくれた

まだ驚きが残っているのか、必死に言葉を紡ぎながら

校門前で彼方さんを待っていたら、知らない男の人が彼方さんについて聞いてきたこと

その人と彼方さんが、一緒に行ってしまったことも全部

まふくんが言っている知らない男の人というのは、きっと『あの人』のことだ

数年前

僕が初めて彼方さんに会ったのは、僕が中2、彼方さんが中3の時

僕は、校則にある帰宅時間をしっかり守ったうえで、よく近くのライブハウスに行っていた

彼方さんと知り合ったのは、僕が頻繁に通ってるものだから、あっちもこっちも自然と覚えたみたいな形

あの時は、まだ彼方さんとあの人は 知り合ってなかった

でも、全部おかしくなりはじめたのは 出会って一年が経った頃だった

彼方さんが高校生に進学したすぐの頃

彼方さんは、夜中に1人で街を歩いていたらしい

あの時はまだオーナーさんとあんまり親密じゃなかったらしく、寝場所とかもなかったから

そんな時に声をかけてきたのが、まふくんの言ってた男の人

暁って書いて『アキさん』っていう人

最初はただ、彼方さんも暁さんのこと信用してたし、今みたいに怯えたりはしてなくって

でも、ちょっと前に暁さんが彼方さんを無理やり犯しちゃってから、全部変わってしまった

暁さんは彼方さんに異常なほどの束縛をし始めた

そして彼方さんは、それから逃げては捕まって、またしばらく逃げての繰り返し

彼方さんが学校に行けなくなったのは、それが一つの原因でもあるから

真冬視点

天ちゃんから全てを聞いた

今までずっとわからなかった、彼方さんの内側が垣間見えたような気がした

天ちゃんは僕の目を見つめて、真剣な眼差しでこう言った

僕は彼方さんのことも、その暁さんって人のことも深くまで知らないのに

必死に頼んでくる天ちゃんの視線は一生懸命で、彼方さんのことをどれだけ大切に思っているかがわかった

僕は、彼方さんに会いに行くのを 心に誓って、目に溜まった涙を拭った