その夜遅く優子はずっと何かを引きずるような音で目が覚めた
その音は廊下から聞こえてくるようだ 部屋から覗くとサヨが歩いて行く 旅館の子供用の浴衣を着ているけれど大きすぎて裾を引きずっているその日はぐっちょり濡れていた
ゆうこ
さよちゃんどうしたの
さよ
お母さんがいないの
と小夜は泣いた
ゆうこ
きっとお風呂に入ってるのよまだ開いているはずだからそれよりさやちゃんびしょ濡れだよお部屋に戻って着替えようね風邪をひくから
裕子は小夜の手を取ったがあまり冷たいので思わず話してしまった小夜は玄関の方を指差した
ゆうこ
お母さんあっちに行ったの
ゆうこ
なんだ知ってるんじゃないの 一緒に行ってあげるからねその前に着替えないとこんなに冷えて
小夜は裕子の言うことを無視して優子の手をぎゅっと掴んだ小さな女の子にしてはすごい力だ玄関を出て裏山の方に向かって歩いて行く
ゆうこ
どこに行くのよ
優子が引っ張られながら聴いても作用答えない明かりもほとんど無い暗闇をぐんぐん歩いて行って崖のところで立ち止まった
ゆうこ
ほらここで行き止まりお寒いからお部屋に戻ろうね今頃お母さんがさよちゃんがいないって心配してるよ
さよ
お母さんはこっちなの
佐用川目の前の草をかき分けると崖の斜面に土を削っただけの急な階段が現れた水音がするから滝の近くらしい 生まれてからずっとこの土地に住んでいる裕子でさえここに道があることは知らなかった 優子は急に 怖くなった
ゆうこ
こんな道どうして知ってたの
小夜は返事もしないで階段を上っていくゆうこも仕方なく後をついて行った崖を登ると細い川があったこの水が滝になって流れ落ちているらしい 川べりに誰かがうずくまっているジャックジャックとお米を研いでいるのだ
さよ
お母さん







