環境に優しい作品〜四天王の創造〜

昼休み。 俺が唐突に放った言葉に、昼食を共にしていた仲間が一斉に顔を上げた。

俺はパックのジュースを握り潰すと、そのまま机上に拳を打ちつけた。

机の上でエア高速タイピングしていたエンターがまず賛成してくれた。

エンターは幼稚園の時からパソコンとお友達で、「はい、エンター」が口癖の変わった奴だけど、機器の扱いはめちゃくちゃ強い。 (カタカタカタッターン！がうるさいけど)

ゲーマーが両手の親指と人差し指でスマホ画面を連打しながら続ける。 ゲーマーはジャンル問わずゲームが物凄く上手い。

ゴボーがほっそい足を組み替えて頷いた。

かくして俺達の四天王大作戦は幕を開けた。

ｷ ｰ ﾀ ｯ ﾁ 【ス●バとかにいる奴】 ☝︎エンター ﾁｮｯﾌﾟｽﾃｨｯｸｽ 【風吹けば吹き飛ぶ】 ☝︎ゴボー ｹﾞｰﾐﾝｸﾞﾁｪｱ 【二十四時間三角座り】 ☝︎ゲーマー ﾌﾞﾙｰﾊﾞｰﾄﾞ 【平和を運ぶ青い鳥】 ☝︎智琴

午後の授業を使って考えた渾身の異名は

しかし放課後すぐにゴミ箱にシューーーーーーッされた。

＿俺達の四天王大作戦は終わった。

残ったのは、四天王になり損ねた残骸が書き殴られた、親と陽キャには見せられない大学ノートとゲーマーの屍だけだ。

それでも俺達は今 セーシュンしている。

そして陽はまた昇り、体育の真っ只中。

俺達は4人仲良く持久走の最後尾を走っていた。

他の生徒達は既に完走し、女子は木陰でお喋りに、男子は走った後だと言うのに鬼ごっこなどしている。

体育教師の松岡だけがテニスラケットを振り回しながら「気合いだ気合いだ」と俺達に声援を送る。

「気合いだお前ら諦めるな立てぇーーーっ！ボールを追いかけろぉーー」

…松岡ウゼェ

振り乱した髪から汗の雫が飛ぶ。

それは陽光を受けてキラキラと輝き、 あぁこんな俺達でもセーシュンしてるんだなと＿＿

　　　　　キ 　　　　ャ 　　　ア 　　ア 　ア ア

！？

突如黄色い歓声がグラウンドを切り裂き

首を巡らせると木陰に何やら人だかりが。 断片的な指笛と単語。

「カップル成立ぅー」 「両想いだってぇー」 「お幸せにぃー」

煌めく汗はグラウンドに墜落した。 ウザイ松岡も「何事も気合いだー」とか叫びながら木陰に走る。

おい俺達まだ走ってる。おい。

超頑張った持久走＜公開告白

何だこれ。

昼休みの教室はいつもより人が少ない。きっとヒーローインタビューに出向いているのだ。

俺達の汗と涙の持久走。の待ち時間さえ陽キャはセーシュンイベントに変えてしまう。スポットライトを持って行ってしまう。

一生に一度しかない高校生活。

俺は。 俺達は。ずっとリア充に埋もれて生きていくのか？

いや違う。

あの汗のように、俺達だって輝けるはずだ！

自身の膝を叩(はた)いた拍子に、机上のペットボトルが倒れた。

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