甘味処《びゃくだ》には、いろんな客(まろうど)がやってくる
毎年、この時期になると──
ぱたぱた
10歳ぐらいの少女たちが縁台に駆け寄り、腰を下ろす。双子のように似ていた
桜の精・甲
すみませーん
桜の精・乙
桜餅くださーい
はーい、少々お待ちを
しばらくして、桜餅と緑茶が運ばれてきた
お待たせいたしました
ごゆっくりどうぞ
桜の精・甲&乙
いただきまーす♪
ぱくっ
もぐもぐ
桜の精・甲
桜の精・甲
美味しい☆
桜の精・乙
ねー☆
桜の精・乙
今年も桜の花をいっぱい咲かせようね
桜の精・甲
うん
桜の精・甲
ごちそうさまでしたー
桜の精・乙
お代お願いしまーす
はーい
ありがとうございました
桜の精は《びゃくだ》をあとにした
3月下旬、桜の花がじょじょに開花し始めた
am 11:56
絢斗
すっかり桜狩りの季節だな
そうですね
桜餅と緑茶を運び、絢斗のそばに置いた
桜餅をほおばる
もぐもぐ
絢斗
相変わらず美味い
ありがとうございます
緑茶を一口すする
絢斗
絢斗
あとでみやげ用に桜餅20個頼む
かしこまりました
大量の桜の花びらがひらひらと舞い散る
絢斗
(──見事な桜吹雪だ)
その光景に目を細めた