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バキャッ!!
ドサッ……
ドアノブを一息で破壊すると、右手の拘束が解けた堀野の胴体は、首から血をこぼしながら倒れ込んだ。
自分の足元に少しかかり、苛ついた光利は軽く蹴飛ばす。
楡木
楡木はまだ息がある──生者としてはとうに事切れているが──ようで、上半身だけでもなお、ビクビクと床で悶えている。
光利は奴を無視して、貫かれた教員たちのそばに向かった。
服を脱がせて、ぽっかりと開いた穴を塞ぐようにお札を貼り付ける。
ジュクジュクジュク……
耳障りな音を立てて、再生が始まった。これで良い。
堀野満
堀野のうめき声が漏れ出てくる。
視線を向けると、斬り殺した死体のそばで、霊体となった彼が意識を取り戻し初めていた。
光利は無視して、今度は楡木のもとに向かう。
楡木
ガシッ!
楡木
苦しみ悶えつつも、上半身をよじらせて必死に逃げ出そうとする奴の胴体を、光利は足で押さえつけた。
ぶよぶよとした感触が伝わり、不快なことこの上ない。
──まあ、こうしたのは自分だが。
京極光利
京極光利
楡木
楡木
楡木はこの期に及んで白を切り続ける。
京極光利
京極光利
ザクッ!!
光利は大鎌を持ち上げ、先端を躊躇いなく楡木の上半身に突き刺した。
楡木
堀野満
汚らしい絶叫と、満の短い悲鳴が聞こえる。
ザンッ!! ザンッ!! ザンッ!!
光利はその後も、楡木の身体を大鎌で弄ぶ。
突き刺し、切り裂くたびに、自分が取り付けた肉片が周囲に飛び散る。
だが、悲鳴は2回目か3回目で、すぐに聞こえなくなってしまった。
京極光利
興味を無くした光利は、抑えていた足を離す。
バラバラになった楡木の身体は、急速に薄らいでいき……やがて消滅した。
成仏した……いや、地獄に落ちたと信じたい。こればかりは自分にも分からないが。
京極光利
光利は堀野の方へと向き直る。
堀野満
堀野は完全に意識が戻ったのか、自分の死体も構わず、へたりこんだまま光利から逃げるように後ずさっていた。
京極光利
堀野満
京極光利
京極光利
堀野満
堀野は身体全体が震える中で、指を自分に向ける。その往生際の悪さは楡木と同じだ。
光利はそれを見て、心底反吐が出るような胸糞の悪さを感じる。
京極光利
京極光利
京極光利
堀野満
光利が蔑むように言い放つと、堀野は目を見開かせ、一瞬身体を震わせた。
それから少し経って、観念したように堀野が絞り出す。
堀野満
堀野満
堀野満
堀野満
だが……彼が吐いた言葉は、光利が思っていたような謝罪や懺悔ではない。
聞こえのいい言葉を並び立てる彼に向けて、光利は高々と鎌を掲げる。
堀野満
堀野満
ザンッ!!
鎌の先端を堀野の左腕に突き刺した。血こそ噴き出さないものの、皮膚や内部が醜くえぐれて、簡単に千切れる。
堀野満
痛みに耐え切れず、堀野は凄まじい絶叫を上げてのたうち回る。
彼を見下ろしながら、光利は淡々とした口調で、堀野への追及を初めた。
京極光利
京極光利
京極光利
京極光利
京極光利
京極光利
京極光利
堀野満
京極光利
京極光利
京極光利
京極光利
京極光利
京極光利
京極光利
堀野満
ズタズタになった左腕を抑えて、堀野は変わらずのたうち回る。
聞いているのかいないのか分からないが、それでも光利は追及を続ける。
京極光利
京極光利
京極光利
そこまで言ってから、光利は堀野の死体の方に戻る。
ザンッ!
霊体と同じように、一息で左腕を切り落として拾い上げる。
京極光利
私服の袖を取り払い、霊体の堀野の元に戻った光利は、彼の顔面に突きつけた。
自らが盗撮動画で目にした……左手の根性焼きの痕を。
堀野満
堀野は反射的に、左腕の切断面を押さえる。その反応こそが、既に物言わぬ証拠であった。
左腕を後ろ手に放り投げ、光利は話を続ける。
京極光利
京極光利
京極光利
堀野満
堀野満
楡木
楡木
楡木
堀野満
堀野満
堀野満
堀野はもはや正気ではなかった。焦点の定まらない目で、うわ言のように同じ言葉を繰り返すばかりとなる。
京極光利
京極光利
京極光利
空虚な否定を吐き続ける堀野に、光利は怒りと蔑みを込めて吐き捨てる。
京極光利
京極光利
京極光利
京極光利
京極光利
京極光利
京極光利
京極光利
あらかた話し終えて、光利はふぅと息をついた。
軽蔑感は残るものの、口に出したことで、怒りは大分収まった気がする。
堀野満
一方堀野は、今度は謝罪の言葉を繰り返すようになった。
言い訳、誤魔化し、否定、謝罪……。
ひたすら自己保身のことしか頭にない彼に対して、もう大した感情は湧いてこない。
……ただ、ひとつだけ。
京極光利
京極光利
京極光利
堀野満
無様な謝罪を続ける堀野に向けて、光利は再び大鎌を振りかぶる。
京極光利
胸の内から高揚感が高まる。光利は既に己の劣情をこらえるつもりも、彼に配慮するつもりもなかった。
京極光利
まずは足先から──光利は鎌を、容赦なく振り下ろした。
京極光利
ひび割れと血で汚れた携帯を、明日咲に見せつける。
更衣室で制服を脱ぎ、体操着へと着替える彼女の姿が、鮮明な画質で映っていた。
すぐに再生を止めて、光利は本物の明日咲に視線を向ける。
パァン!!
その途端、彼女は携帯を殴りつけた。
携帯は素通りするものの、持っていた光利の手とぶつかって、はたき落とされる。
明日咲美以奈
あらん限りの声量で、底なしの怒りを込めて、明日咲は絶叫した。
下を向いて、怒りを剥き出しにして怒鳴り散らす。
明日咲美以奈
明日咲美以奈
雄叫びを上げ続けながら、明日咲は闇雲に足を振り上げ、地面に叩きつけられた携帯を踏みつける。
……しかし、それも虚しく、貫通する。
滑稽なまでに空振りする彼女を、光利はただ見守ることしかできない。
明日咲美以奈
明日咲美以奈
不意に足の動きを止める。全身の震えが小さく、細かくなっていく。
いからせていた肩が、少しずつしぼんでいく。
明日咲美以奈
こらえ切れずに、美以奈はしゃがみ込む。
光利は何も言わず、彼女の隣にしゃがみ、ただひたすらに寄り添った。
明日咲が冷静さを取り戻したのは、夜明けが近付いてきた頃だった。
京極光利
京極光利
怒りも悲しみもなくなり、ただ立ち尽くす彼女に、光利はそっと声をかける。
明日咲美以奈
京極光利
かすれ声でそう告げた彼女に、光利は小さく首を振った。
京極光利
明日咲美以奈
差し込んできた朝日を拒絶するように、明日咲は体育座りで座り込んでしまう。
明日咲美以奈
明日咲美以奈
京極光利
光利は背中に収めた大鎌を取り出す。
そのまま、顔を埋める彼女に向けて、高く振り上げ──
ガキィッ!!
彼女を──彼女を縛り付けていた鎖の内の1本を、一息で切断した。
明日咲美以奈
予想外の音に、明日咲が顔を上げる。
ガキィッ!! ガキィッ!!
呆気に取られていた彼女を他所に、他の鎖も次々と破壊していく。
全て断ち切った後に鎌を仕舞い、明日咲に手を伸ばして、光利は微笑んだ。
京極光利
明日咲美以奈
少しの間、ポカンとしていた彼女だったが……やがて、今までのような、少し冷たい雰囲気に戻る。
明日咲美以奈
京極光利
悪態をつきつつも自分の手を取る美以奈に、光利はそんなことを考えた。
ウー──ウー── ピーポー──ピーポー──
どこか遠くの方で、パトカーと救急車の音が聞こえてきた。
2つはやがて、2人が歩いてきた方へと向かっていく。
京極光利
京極光利
京極光利
明日咲美以奈
光利が安心させるように話す。それでも美以奈の顔は晴れない。
明日咲美以奈
京極光利
京極光利
京極光利
京極光利
光利がそう説明すると、横の美以奈はまた表情を曇らせてしまう。
明日咲美以奈
京極光利
いたずらっぽくとぼけてみせると、美以奈の不安の色は、ますます濃くなった。
明日咲美以奈
また涙をにじませて、彼女はこちらに尋ねてくる。
そんな彼女を安心させるように、光利は顔を寄せて、
チュッ──
口から口へと、彼女へ霊気を注いだ。要はキスをした。
明日咲美以奈
美以奈は瞬時に、口元を抑えて飛び退く。
指の隙間から注いだ霊気が漏れ……半透明だった彼女の身体は、大分色濃くなっている。もう普通の人にも見えるだろう。
京極光利
唇の感触を思い出しながら、光利は満足げに笑う。
京極光利
明日咲美以奈
不安から一転、美以奈は怒気をあげてガムシャラに右腕を振るう。光利はなんなくかわす。
京極光利
明日咲美以奈
ブン! ブン!
スカスカの美以奈の攻撃を、光利は笑いながら避け続けながら、早足で逃げ続ける。
そうして歩きながら、脇道に差し掛かった時、
???
聞き覚えのある声が聞こえた。2人はふっと立ち止まる。
明日咲美以奈
京極光利
おののく美以奈を他所に、光利は脇道に入る。
少し歩いて、簡単に見付けた。ゴミ箱と電柱の間に、打ち捨てられるように、
桐生紅音
桐生とかいう女が転がっていた。
彼女の身体は既に、ほとんどが巨大なサバイバルナイフに浸食されていた。
まるでファンタジー漫画の大剣と化したナイフに、胴体は全て飲み込まれ、一体化してしまっている。
ジュクジュクジュク……
こうして見ている内にも、あの耳障りな音を立てて、ナイフと桐生の同化が進む。
あと10分もすれば、彼女と同じ体重のナイフに成り果てるだろう。
桐生紅音
桐生紅音
意外と可愛らしい泣き顔で懇願する彼女に、光利しゃがみこんで優しく微笑む。
京極光利
桐生紅音
京極光利
桐生紅音
京極光利
光利はナイフの柄を掴んで持ち上げる。くしゃくしゃになった彼女の顔に、
チュッ──
本日2度目のキスをした。美以奈の時より多めに、霊気を注ぎ込む。
ズズズズズ……!
唇を離すと、飲み込まれかけていた桐生が、ナイフの刀身から浮き出てきた。
巨大な刃物に人間の生首が生えているという、大分グロテスクな状態で、変化は止まる。
京極光利
腰を入れてナイフ……いや、紅音を持ち上げる。
大鎌を取り出し、ドン引きしている美以奈に手渡して、光利は妖しく笑った。
京極光利
京極光利
桐生紅音
紅音は顔をくしゃくしゃにして泣き叫ぶ。
泣き腫らした顔が思っていた以上に可愛くて、助けて良かったと胸が高鳴った。
光利はナイフと化した桐生を背負う。ずっしりとした重みが伝わるが、これくらいなんともない。
京極光利
桐生紅音
ぐずぐずと泣き続ける紅音に構わず、光利は再び歩き出す。
京極光利
明日咲美以奈
渡された大鎌を左手に提げ、諦めたような口調で、美以奈がその後を追った。