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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

…………

窓の向こうが青い。

それは自分の髪色と同じ色だった。

その空の中に、雲はまんべんなく広がっている。

(雲…雲ってあんなに綺麗なものだったっけ)

(まるで)

(雪入先輩みたいだなぁ……)

(…て、何考えてんの僕は……)

(…あ)

(雪入…先輩…)

校庭で3年の先輩が体育を行っているようだ。

その中に、雲によく似たその人は居た。

(サッカーか…)

(雪入先輩、おどおどしてる…可愛いんですけど……)

そんな彼でも、サッカーをしている集団の中で1番輝いて見えた。 そう、泉には見えた。

白く輝く髪と清く色白な肌は、 もはや雲というより、雪だ。

(相変わらず名前にぴったりな見た目をしていらっしゃる…)

(………今日、)

(放課後……会えるかな……)

少年のような顔をする彼は、空に向かって期待の目を向けた。

1か月前~

_あ、この花綺麗だな…

パシャッ

持参のカメラで撮った写真を眺め、ほっと一息つく。

写真部の僕は、綺麗な植物を見つけてはシャッターを切っている。

(足疲れたな……)

1度立ち上がり、ふと窓の方を見た。

そこには美術室。 がらりとした教室。

…だが、奥の方の席に誰か居る。

(美術部員は皆校庭にスケッチしに行ってるみたいだけど…)

(あの人は1人で何やってるんだろ?)

(3年の……先輩?)

…………ッ

白い髪が揺れている。

青い瞳は太陽の光を映す。

灯りはなく薄暗い教室の中で 彼は輝いて見えた。

__パシャッ

………

………!?

美術室に居る彼から身を隠すように 急いでしゃがみこむ。

(えっ…えちょ………え!?!?)

(ぼぼぼぼ僕何やってんの!?無意識に何やってんの!?こんなの盗撮じゃん……!!)

(は、はやく削除削除……削除しなきゃ……)

………ッ

「写真を削除」という項目に触れる直前で指が止まる。

消すのもためらうくらいそれは美しく撮れていた。

…………もう……どうしちゃったの僕…

もう一度、おそるおそる窓を除く。

彼と目が合う。

(ひょえぇぇ~~!!!)

急いで隠れる。

(なんでこっち向いてたの!?たまたま!?やっぱ撮ったのバレてる!?)

(……そろそろ部活終了の時間だ)

(はぁ……やばいよこれ……)

…………

(あの先輩……なんて名前なのかな…)

地面にしゃがみこむ彼には、背徳感と原因不明の喜びが混ざり合ったような気持ちが残った。

その日も、その次の日も、彼を忘れることはなかった。

部活時間。

……………

カメラを持ちながら美術室前でウロチョロする青年が1人。

(……て、何あの先輩のこと探してんの僕!?)

(今日1日、どっかに居たりしないかな…ってあの先輩のことばかり気づいたら考えてるし……)

(…………)

カメラに残った、この前の先輩の写真をこっそり眺める。

(……まつ毛長くて、肌は白くて、髪は透き通るように輝いてて………)

(全体的に透明感があって……女の子と言われれば納得しちゃうような綺麗な顔で………)

(……やっぱり、違和感だよなぁ)

(全然知らない先輩なのに、僕なんでこんなこの人のこと気になってんだろ……)

(まあ……いつ盗撮をバラされるかわからないみたいな恐怖感があるから気になるのはわかるけど……)

(……そうなっちゃうのかな、やっぱり……)

(昔からある……自分の……恋愛対象の違和感………)

(恋はしたことない。ないけど……確かにある違和感。)

(普通男である僕が感じるであろう「女の子への意識」がない。)

(男女問わず友達と呼びたい人なんて居ないけど、女の子はなんだか「友達」って感覚。)

(一方、意識してしまうのは男子の方。)

(…自分でもおかしいと思う)

(いわゆる……ゲイ……ってやつ?)

(だけど、ネットには意外と僕と同じ人がいっぱい居たし)

(……でもどうなんだろうか……)

(……それを証明してくれる人がいつか現れると思ってたけど)

(…………)

(あぁもう………)

雪入先輩

あ、その写真…やっぱり君だったね!

ッわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!????

雪入先輩

あ、ごめん…驚かせちゃって…笑

エッ………エ???(困惑)

雪入先輩

僕の写真撮ってたよね!写真部の……ね、名前教えて!

あっ……あ、えと…ッ

やばい……盗撮バレてた……!?

雪入先輩

ん、どうしたの?ね、名前!

い……いずみ……つばさ……で……

雪入先輩

”泉 天翼”くん?

雪入先輩

へぇ、泉くんかぁ……
僕は雪入 真尋(マヒロ)だよ〜!3年の!美術部!

雪入先輩

他の写真は?どんなの撮ってんの?

雪入先輩

おおー!綺麗!この花そこに生えてるやつだよね!この角度……センスあるね~!

!?

(ち……ちか……近……///)

……一旦整理しよう。今僕の目の前にいるのはあの雪入先輩。

急に話しかけてきて、僕が盗撮していたことを知っていて、そしてとても距離が近い。

うん。ただそれだけ。

アッ………アッ………()

いや、全然それだけじゃない。

雪入先輩

……?

雪入先輩

……ッあ、

雪入先輩はどこか気まずそうな顔をして僕から離れる。

雪入先輩

……ご、ごめん…ベタベタ触って……

……え?あ、え?ぜ、全然ッッッ!です!!

唐突に申し訳なさそうになる先輩に僕は咄嗟のフォローを入れる。

未だにこの展開を理解出来ていない…

ど、どういう状況だこれは…?()

雪入先輩

……いきなり邪魔だったかな?部活の……
本当にごめんね!困らせちゃって……

え、いや……

そう言うと、先輩は悲しそうな目でその場を去ろうと立ち上がる。

……理由はわからない。その時僕は、何故か先輩のシャツの裾を掴んでいた。

先輩を引き止めるような自分の行動に僕は少しの間思考停止していた。

雪入先輩

……つばさ、くん

ハ、ハイッ……!?

雪入先輩

もしかして…僕に興味ある?

……はい?

頭に「図星」という言葉がよぎる。

雪入先輩

ね、ね、じゃあ僕の話聞いてくれる?

先輩は咄嗟に僕の隣に座り直す。 なんならさっきよりも距離が近い。腰と腰がくっついている。

雪入先輩

……あ、手繋いでいい?

……ハイ……

何が起きているのか分からず、僕は先輩にされるがままに手を繋ぐ。

先輩……こんないい匂いするんだ。 手、すべすべしてるし…爪も綺麗。綺麗すぎる。 思考停止する僕の頭の中でも、しっかりと下心は働いていた。

雪入先輩

あのね、僕…あ~好きだな、とか、仲良くしたいな~とか思った相手についつい触れたくなっちゃう性格でさぁ~

雪入先輩

あ、もちろん女の子にはそんなことできないけどね?男友達とかにだよ!
でも、僕友達ほとんどいなくてさ……せっかくできても、僕がついついベタベタしちゃうせいでどんどん離れてくんだよね…

雪入先輩

僕のせいなんだけど……よく言われるの!「友達とは一定の距離を保ちましょう」って……

雪入先輩

僕はくっついてると安心するからどうしてもベタベタ止められなくて!!迷惑だってわかってるんだけどさ………

雪入先輩

でも泉くんは僕がこうしてベタベタしても全然拒否しないし!!でもなんか凄い固まってたから嫌だったのかな?って思ったけど、僕の写真を撮ってくれたのも君が初めてだし!!いかにも「行かないで」というような顔で僕を引き止めてくれたのも君が初めてだし!!

雪入先輩

なんかさ、初めて僕を必要としてくれたなと思ったんだ!!

雪入先輩

学年違うけど、僕の唯一の理解者として泉くんが友達になってくれたら……僕もう他の友達なんて要らないよぉ……

………

あ、今ので僕の脳みそぶっ飛んだ。

雪入先輩

…あ、ごめん……こうやって一方的に話しちゃうのも僕の悪い癖で……引いたかな?
てかこっちが勝手にどんどん決めつけてるみたいになってる……けど、もし泉くんが嫌だったら全部離れていいんだよ!?僕から………全然……………

雪入先輩

…………

「本当は離れて言って欲しくない」…… というようなことを言いたげな顔で、先輩は僕の手を握った自分の手元を見て俯く。

なんて素直で可愛い先輩なんだろう。 僕の本心のまず第一声はそれだった。

雪入先輩

……僕の、友達になってくれるかな?泉くんは……

………

ぼッ……僕で、よければ……///

雪入先輩

……ほんと!?

ギュッ

!?!?///

先輩のひんやりとしたシャツが僕の頬に触れる。

先輩は細い身体をしているが、それはどこかしっかりとしていて、 僕より一回り大きい感じがした。

まあ、つまりは、 そろそろギャップで萌え死にそう。

雪入先輩

ふふ…これからよろしくね!
あ、LINE交換しよ!!

……ら、LINE……!?!?

それはつまり………四六時中先輩と話すことが可能ということ……!?((

は……はい……///

僕は震える手でLINEのQRコード画面を差し出した。 ちなみにそこまでにたどり着く操作は今までで1番早かったと思う。

ピコンッ

雪入先輩

ありがとー!

雪入先輩

……わわ、泉くんのLINEアイコン可愛いね~!ス○ーピー好きなの?

は……はい……

雪入先輩

そうなんだ~!僕リ○ックマが好きなんだ!

かわいいかよ………

雪入先輩

そういえば!泉くん帰り道どっち方面?

……東方面です……

雪入先輩

一緒だー!やったぁぁ!ねね、今日一緒に帰らない?

え…!はい……

一緒に帰れる…!? 先輩と!?

そんなことがあっていいのか……!?

雪入先輩

ふふ、わぁい!久しぶりの友達だなぁ……!

雪入先輩

あ、そろそろ下校時間!部活終わりだ!じゃ、東門で集合ね!またね!

僕は先輩に向かって小さく手を振る。 心の中では肩が外れる勢いで振っていた。

(……ほんとうに………風のような人だな………)

…………

部活後、先輩と合流し、他愛もない会話をしながらいつもの通学路を進む。 つっても、僕は緊張しちゃって先輩が一方的に話しかけてくれてる感じだけど……

雪入先輩

ねね、泉くんは普段家で何してるの~?

……べ、勉強したり……読書したり……

先輩の前では少し猫を被る。

女でもないのに。 ”手芸”が趣味とか事実はさすがに言えん。

雪入先輩

へぇ~!偉い!!すごいな……
僕は手芸が趣味だから、なんかの小物ばっか作ってるよ~!

……!!?ぼ、僕も手芸やります!!

趣味が一緒と知った瞬間、僕は先程の弱気を吹き飛ばして興奮の声を上げる。 もうこれ運命でいいだろ。 僕と先輩。

雪入先輩

え!?ほんと!?僕らって気合うね~!

先輩が手を繋いでくる。

それで気づく。先輩の指には絆創膏。

やはり手芸をマジでしているといことだろうか。 僕も趣味ではあるが得意ということではないので、指に絆創膏をよく貼る。

……いや待てよ。その前にだ。 僕、今先輩と恋人繋ぎしてるじゃないか。

僕は言葉にならない声を必死に押し殺し、心の中で手汗が出ないようにと必死で念じる。 多分無意味。

雪入先輩

泉くんと一緒に話してると楽しいなぁ…!こんなに楽しい放課後は久しぶりだよ!

雪入先輩

……ねぇ、僕のこと好き?

………ゑ”!?

すっ………ススススススス………スキ……デシュ………

雪入先輩

えへへ、僕も!ニコッ

先輩は、天然というか、幼いというか………

尊いとはこのことか……

(……僕も、久しぶりだ…)

(こんなに楽しいのは___)

雪入先輩

……あ、僕こっちだから!

雪入先輩

じゃあ、また明日!明日も絶対一緒に帰ろうね~!

は……はい!

………

時が一瞬にして流れたようだ。

……”明日も”……か。

僕はまだ16歳。 まだまだ知らないことなんて山ほどある。

でも今日僕は、 人生におけるとても大事なことを知ってしまったようだ。

………

雪入、先輩……((ボソッ

初めての、恋。

続く

君を想い、想い出す ~泉の過去~

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コメント

2

ユーザー

ウワァァァ尊いの極み!!! もしやこれが今の泉さんになるまでのお話だったり…?(俺氏大興奮) 先輩も泉くんもかっこかわいい💕

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