この作品はいかがでしたか?
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秋…と言うには、 少し遅かったかもしれない。
この間までは紅く染まっていた校庭の木の葉も、 少しずつ落ちて姿を消しつつある。
……そんな中でも、まだ色味を失わない人物がいる。
雪入先輩
僕のことを「泉ちゃん」、 そう可愛い声で呼ぶ。
泉
先輩の頬や耳は、寒さのせいか真っ赤に染まっている。
雪入先輩
_あれから僕と先輩は、 いつも一緒に帰るようになった。
前までは部活の時間にも先輩から会いに来てくれていたが、 2ヶ月くらい前から先輩の部活は無くなっていた。
先輩は、もうすぐ受験だから。 3年生にはもう部活がない。
だから帰る時間が合わず、 つい最近まではどの時間にも会えないみたいな状況が続いていた。 めちゃくちゃ辛かった。
でも今日は……全校生徒の部活がお休み。 久しぶりに一緒に帰れる…… 心底。心底嬉しい。
泉
雪入先輩
泉
雪入先輩
泉
雪入先輩
先輩は明るい笑顔でそう言って、 僕の手を取り自分の頬に当てる。
心の奥底で「ウ”ッ」と声が出る。
先輩とはもう3ヶ月くらい一緒に居るが、まだこの触れ合いには慣れる事ができない。
可愛い。とにかく可愛い。 顔が真っ赤なのも、手を握ってくるのも、全てが可愛いのだ。(本心)
顔真っ赤だけど、それ以外真っ白だな。 美肌すぎるし、髪の毛も綺麗すぎる。
てか顔ちっっっちゃ。 林檎より顔ちっちゃいんじゃないのこれ。
そんな感じで僕が先輩に見とれていると、あっという間に時が流れて先輩と道が別れる。
家に着いた。退屈だ。 楽しい時間が終わってしまった。
泉
そう言ってカバンを部屋に投げ捨て、ベッドにボスンと埋まった。
どうしてこんなに先輩に会える時間が短いのだろうか。 部活がなくなった今、下校だけだぞ。会えるの。
泉
ピロンッ♪
泉
泉
僕は光の速さで先輩からの新着メッセージを見た。
「明日から朝も一緒に行かない?」
泉
嬉しきこと限りなし……(?)
僕は速攻で返信をした。 もちろん答えはYESだ。
泉
やばい、めっちゃ幸せ。 朝から一緒に行けるなんて。
楽しみすぎて、この日の夜はあまり眠れなかった。
翌日
雪入先輩
泉
朝からこんな天使を拝めるなんて、僕はなんて幸せ者なんだ。 強く生きよう。
雪入先輩
僕はもう既に死にそうですと 思いながらも、 今日も今日とて距離が近い先輩の可愛さに心の中で悶えた。
雪入先輩
僕は笑って静かに手を振る。
学校に着くと先輩は、 僕にハグをして教室に向かって行ってしまった。
僕の顔はわかりやすく赤くなっていた。
泉
てか、3年生の廊下怖い。 …人が怖いの間違いか。
なんで自分はここまで人見知りなのか……本当嫌になるなぁ……
…さっさと自分の教室に行こう。ここに居たって、放課後になるまでは先輩に会えない。
…あぁ、また幸せな時間が終わってしまった。
僕は自分の教室に早足で向かって、席に着きうずくまる。
…ここに来ると独りだ。 先輩も当然の如く居ない。 寂しいんだ、正直。 クラスに仲良くなりたい人なんて そもそもの話居ないけど。
まわりの人達の声がいつもより鬱陶しく感じる。
次に会えるのは放課後だもんな…… しんどいわ…… 時間がやけに長く感じる……
自分の席の近くに人が通り過ぎるだけでいちいち体がビクッと反応する。
もう…全部死ね。 何もかも無くなってしまえばいい。 先輩以外。
いつからだろう……こんなに教室が嫌いになったのは。
自分が周りから認められていないと感じるようになったのは。
でも…雪入先輩は…… 雪入先輩だけは__
泉
メンタル弱すぎて涙出てくる……
泉
昼休み
雪入先輩
泉
口が開いて塞がらない、とはまさにこのことだと思った。
なんということでしょう。 先輩がお弁当を大事そうに持って、僕の教室の前でオドオドしているではありませんか。
近くに人が通る度ビクビクしていて、すでに涙目だ。 今朝の僕を見ているようだったが、 僕と違ってそんな姿も格別に可愛い。
雪入先輩
唖然として先輩を見つめている僕を見つけると、嬉しそうな顔で教室の中に入ってくる。
すると僕のところに走ってきて、近くの空いている席に座った。
……何が起こっているんだ?
泉
ガタッ
大きな声を出して勢いよく立ち上がると、一気にクラス中の視線が僕らに集まった。
僕は恥ずかしすぎてしばらく固まる。
先輩もさらに縮こまってしまった。 めちゃくちゃ申し訳ない…
僕らに向けられた視線がそっぽを向いたのを確認すると、先輩は僕に抱きついてくる。
僕はさらに固まる。
雪入先輩
先輩の手は震えていた。
泉
雪入先輩
泉
雪入先輩
先輩はそう楽しそうに言って、 ルンルンでお弁当を開ける。
泉
涙が出そうだ。
雪入先輩
雪入先輩
泉
雪入先輩
泉
雪入先輩
さっきから頭が真っ白だ。 一体どうなっているんだ。
……そうだ、僕…僕は、嬉しいんだ。 先輩に会える時間が増えて……。
滲んできた涙を隠すように下を向いた。
雪入先輩
先輩がそう明るく話してくれるから、周りの目線も、うるさい声も気にならなくなった。
ここは、僕と先輩しかいない空間。 そんなふうに思えて、肩の力を抜くことが出来た。
雪入先輩
泉
……ん、ん?僕何言ってんだ??((
雪入先輩
すると先輩は、机に身を乗り出して口を開けた。 ……まま、動かない。 これは完全に「あーん」を求めている。
泉
…え???((
嘘だろ?「あーん」って…… 僕にそんなことできるのか? 心臓破裂しちゃうんじゃないか? てか先輩を不快にさせるようなことしちゃったりしないかな??
………落ち着け、僕。 これは「友達」としての「あーん」だ。 落ち着け。
僕は震えまくる手を必死で抑えて、 先輩の口に卵焼きを運んだ。 すると、少しだけ先輩の唇に僕の箸が触れた。
先輩はそのことに気づかず、嬉しそうな顔で卵焼きを食べる。
雪入先輩
僕はその箸をどこか下心のある目で見つめた。
雪入先輩
泉
僕はロボットのような動きで口を開けて、ミニトマトを受け取った。
先輩の箸に触れてしまわないように全ッッッッッ力で気をつけた。
泉
僕がそう小さく言うと、 先輩はニコッと笑った。
…なんだこれ。今までの人生で食べてきたミニトマトの中で1番おいしいぞ。 死ぬほどおいしいんだが。
魔法のミニトマトか。 そうか。きっとそうなんだな。
雪入先輩
泉
脳内お花畑モードになっていた自分を現実に引き戻したのは、先輩のその一言だった。
雪入先輩
泉
下の…名前で……?
雪入先輩
先輩のシュンとした声に、自分の中の何かが爆発した。
泉
泉
僕がそう言うと、少し雪入先輩の顔が赤く染まった気がした。 気のせいかもしれない、たぶん。
雪入先輩
優しく微笑んでくれた。
泉
…先輩は、ほんとにずるい。 それがまた無自覚なのが怖い。
そして、好き。好きすぎる。
先輩を見るだけで心が掻き乱される。
泉
そんなことばかり頭の中に浮かんできて、正直苦しい。
でも、先輩を好きという事実はいつまで経っても変わらない。
初めて人間をここまで好きになれたんだ。
先輩が、初めてなんだ。
雪入先輩
泉
泉
顔には、まだかすかに残る熱。
僕の顔に滲み出たこの紅い色は、しばらく消えることは無かった。
”真尋”先輩……
泉
泉
心が、いつもより幸せで、 暖かくて、苦しかった。
僕は今日も相変わらず、先輩にぎこちない返しをする。
先輩と居ると、緊張しすぎて頭が真っ白になる。 言葉が出てこなくなる。コミュ障すぎる…。
……てか、雪入先輩だからこそ、言葉が出てこなくなるんだ。すごく緊張してしまうんだ。
面白い話なんてできないけど。 上手く返事なんてできないけど。 そんな僕を、先輩は受け入れてくれる。
僕、先輩以上に輝いてて、かわいくて…優しい人を見たことがない。
僕はそんな素敵な先輩と一緒に居られて、涙が出るほど嬉しいんだ。
幸せすぎてもうどうしようもないんだ。 そうなんだ。
だからこれからもこのまま…ずっと一緒に居られればいいのに。
てか、居られるんだろうなと、当たり前のように思っていたんだ。
僕は。
コメント
7件
ええええいやん……てか泉さんの下の名前分かったじゃないすか……え……幸せになってくれ……カプ名はまひいずかな?☺️()
フォォォォォォォ!!!!(尊みで爆死) 見てる間ずっと神イラストを期待してしまっていた自分がいました…(( そして最後ちょっと不穏…?←(深読みかもしれない)2人とも幸せになって😭 「あーん」と下の名前ののやり取り可愛すぎん…?真尋先輩も泉くんも尊いよう…(合掌)
机 細 く ね ? ? ?