とある夏の夕暮れ時
私はお爺ちゃんの家へ夏休みを使って帰省していた。 しかしお爺ちゃんの家は田舎ということもあり ほとんど物が置いていなかった。
あるものと言ったら農具や布団ぐらいだ
簡単に言うと暇である
私はこの時間を有意義なものにしようとして 紅い夕陽がこぼれ落ちた町の郊外へ遊びに行った。
しかしすぐに引き返した
お爺ちゃんから絶対に町から出るなと注意されたことを思い出したのだ。 それが何故なのかは詳しく教えては貰えなかったが。
しかしそれにしてもやることがない なら狭い町だがブラブラと歩いてみようなにか発見があるかもしれない
石を蹴りながら街を歩いていると、急に肌寒い空気を感じる 日が落ち始めたのだろうか。 空を見上げてみると、先ほどと変わらない透き通った空気から映る美しい 夕焼け空が見える。
赤と緑が混じった木々で生い茂った一本道を見つけた ここを見たらもう家に帰ろう。
道を進むとトンネルがあった吊り下げられた看板があったが、さびれていた上に苔が生えておりよく字が読めなかった。
私はここで引き返すべきだったのだろうか
それにしても変だ 何故辺りは木々ばかりで日の光など入ってこないはずなのに、 虫が寄ってくる明るい街灯ではなく
トンネルには紅い日が当たっている
気のせいだろうか、先ほどより更に空気が冷たく感じた トンネルの入り口や壁は血のような赤色と 茶色いレンガで覆い尽くされている。
私は好奇心からそのトンネルの中へ入っていった
中に入ってみると意外と明かりがあり、 壁も手入れされているように綺麗だった 私は奥へ進んでいく
すると前方に赤黒い人影があった。 こんな所に人は私以外にきているのか?
その人が私に気付く
途端にこちらに向かって走ってきた 私の好奇心は吹き飛び、全速力でトンネルの入り口まで戻った。
しかし入り口は消えていた
全速力でトンネルの入り口まで戻ったつもりだったのだが いつまで走っても入り口から差し込まれる光が見えなかった
それどころか
辺りの電気が落ちてきている どうして もうすぐここは深夜のように真っ暗になるだろう
私はもうどれだけの距離を走ったのか分からなくなっても走った
背後から私を追いかける足音が聞こえているからだ
しばらくして足音はピタリと止んだ 一体何だったのだろうか
落ち着いてくると、だんだんと今の状態を理解してきた
もう明かりがとっくに消えていてなにも見えない 暗闇と入り口が無いことで私の精神はもうおかしくなりそうだった
まただ
また、足音がする
私はまた逃げ出した
そうしないと狂ってしまいそうだ
私はどれだけ逃げたのだろうか どれだけ入り口、出口を求めて走ったのだろうか どれだけこの真っ暗闇の中にいるのだろうか
怖い
誰かに会いたい
お爺ちゃん 助けて
するとそこになんということだろうか 人の声が聞こえたのだ 聞き覚えのある そうだ、これは町の子ども達の声だ!
私は遂に入り口まで戻ってきたのだ!
助けて!
と言えない、声がでない
だからなんだ、声がでなくとも二人で引き返すことは 手やら文字やらで何とか伝えられるであろう
暗く顔が見えないその子に近づいた ら、 その子は走ってもひきかえしていった
どうして逃げるんだ 私は恐怖で人が恋しくなっていた
人の声を聴きたい 外に帰りたい思いでその子を追いかけた
何だろうかこの違和感は
そうか あの子は
私?
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