ある伝承に、モルテ伝説というものがある
まだこの世界に幽霊や怪物が当たり前のようにいた頃
そういうものを専門に狩る者たちは勿論いた
しかし力を持った怪物や幽霊は
不死身のものもおり、彼らを壊滅させていた
そういう不死身の幽霊や怪物に死の裁きを執行する者もいた
死の使者モルテ
それはそう呼ばれ、人々の伝説となっていた
怪物
あはは……ありがとう
怪物
覚えてる?500年くらい前かな
怪物
不老不死の実験の話
モルテ
知っているさ
怪物
僕さ、それの被検体だったんだ
怪物
それで、不老不死になる事だけは一応成功した
怪物
でもね
モルテ
下半身が海洋生物のバケモノになったわけか
怪物
残念ながら
モルテ
死ねる気持ちはどうだ?
怪物
安らかだ、とてもね
哀れな実験体であった怪物は、バタリとその場に倒れた
人間は二つの概念を持っている
生の概念と死の概念だ
不老不死の怪物には生の概念しかなく、幽霊は死の概念への理解を失っている
そんな者達に死の概念を与え、又は理解させ
世の中の平和のために殺す
その行いを人間のする死刑執行と同じように
死の執行と呼ぶらしい
モルテ
じゃあさ、僕には“死の概念”ってあるのかな
そんな風に思いながら、死の概念を作り続ける
死の使者の伝説は、愚かなことに永遠なのだ