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20件
白のクシャミ、ハックシャミってね 珠様のしっぽ全力で触りたい ツッコミ役がボケるのほんと好き。藍だからこそおもろい あと効果音つかうの上手いね
戦闘メイド可愛い。悪魔執事も可愛い(? 白も可愛い。橙も可愛い。ノアもいつも通り可愛い。 マキナちゃんも知らんけど可愛い。
雪遊びだぁぁ!!!!!メイド服だ!!!!!!!!可愛いねヨシヨシヨシヨシ…… コタツでぬくぬくしてるの可愛い 撮りたい マキナさん直立睡眠してる…おもろいな…( ᐛ )
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雪みかん@4月病なう
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⚠ATTENTION⚠ 前回言った通り、これはChatGPTと一緒にシリアスとSAN値を吹き飛ばして書いてる頭のおかしいコメディです。 終始何やってんだこいつらってなりますが生暖かい目で覗いてください。
──人外にとっての「翌日」は、だいたい前日の延長である。
昨晩。ニャルラトホテプと豆まきという名の節分型全面戦争が行われた現場は、もはや原型を留めていなかった。
地面は抉れ、空間は歪み、 「ここ、元は庭だったよね」 と人間が見たら真顔になるタイプの焦土。
だが。
ノア
その直後。
空間が縫い合わされるように修復され、世界が“元通り”になる。
地面は平坦に、木々は元気に、空は澄み渡り、 昨晩まで神を豆で追い回していた痕跡は、綺麗さっぱり消え失せた。
この時点で既におかしいが、 この家の住人にとっては朝のルーティンみたいなものなので、誰もツッコまない。
……そして。
白(ハク)
外に出た白が、くしゃみをした。
ノアは、 キッチンで料理を作る役になっていた。
泡立て器を持ちながら、ぽつり。
ノア
ただ、珠が以前好きだと言ったことを提案して、宇宙で暴れ回る未来を回避しようとしただけなのに。
気付けば、 戦闘メイドと悪魔執事が爆誕していた。
そのままキッチンへ向かう藍。 スタンバイしていたノアを素通りして、 一人でオムライスを作り始める。
ノア
またしても本気の困惑。
おそろしく速い調理。 ノアでなきゃ見逃しちゃうね。
大胆で、繊細で、たぶんノアより上手い。
ぽすっ。
まるで荷物を置くように、二人が落ちる。 抗議の声が上がるより早く、
バン。
その瞬間、世界が白く塗り替えられた。
視界一面、銀世界。
空からはしんしんと雪が降り、さっきまで見えていた地面は、跡形もなく消えている。
白(ハク)
白が、短く声を漏らす。……が、時すでに遅し。現象は確定してしまった。
突然の豪雪。
結果。 雪かき?するわけがない。
現在、彼らは全力で雪遊びをしている。
まず藍。 ぶかぶかの上着の内側から、どこからどう見ても本来は雪遊びに使わない工具を取り出す。
金属音。削る音。整える音。
大胆なのに、異様なほど繊細な手つき。
小さな身体、ガキな見た目、 しかしその動きは熟練の職人そのものだった。
そして完成した雪像は、 これ以上ないほど美化された初音ミク。
公式より盛られている。造形は完璧。流れるツインテール。無駄に神々しい佇まい。
そして、胸。
明らかに、原作の倫理を超えている。
藍(アイ)
短く息を吐く。 やり切った者だけが出せる音だった。
満足そうに、 うさぎのしっぽがふりふりと揺れる。
珠(タマ)
それを見た珠。呆れたように言いながら、何もない雪の塊に手を伸ばす。
数秒後。 そこには、いつも通りの初音ミクが立っていた。
バランスの取れたプロポーション。安定した造形。過不足のない再現度。
そして── ネギが添えられている。
技術力、完成度、安定感。 あらゆる面で藍を上回っている。
珠(タマ)
珠のしっぽが、 嬉しそうにぶんぶんと振られる。
二体の初音ミク雪像。 並び立つ、ロマン派と正統派。
両者、ドヤ顔。
一方その頃。 白は、屋根の上にいた。
助走。踏み切り。
白(ハク)
そのまま、積もった雪の中へ垂直落下。
ドスン、という音と共に雪が舞い上がる。
普通なら病院案件。だが白は人外。 氷龍と天使の混血児にとって、 雪はふかふかで気持ちいいだけだった。
白(ハク)
雪の中から顔を出し、 満足そうにしっぽをぶんぶん。
そして、また屋根に登ろうとする。 誰も止めない。止める理由もない。
ノアはというと、 ひとりだけ教科書通りの雪遊びをしていた。
雪玉を転がす。 ころころ、ころころ。
大きくして、もう一つ作って、 慎重に乗せる。
拾った石で目と口を作り、 マフラーをぐるぐると巻く。
完成。
ノア
親指を立てて、満足そうにグッドサイン。 誰よりも平和な雪だるまだった。
橙はというと、まだ寝ている。 布団の中。ぬくぬく。
ゆっくりしたい派である。
そして、モス。リビングの窓際。 外の光景を、ぼんやりと眺めていた。
モス
特に感想はない。
寒い。ただただ寒い。
厚着しても寒い。カイロ貼っても寒い。
寒いものは寒い。
今すぐにでも、コタツに潜りたい。
……待てよ。
珠だ。昨日の大荷物。あの中に、コタツの一つや二つあってもおかしくない。
モス
そう思って、リビングを出た──瞬間。
藍(アイ)
天井から、藍がぶら下がっていた。
腕はだらん。うさ耳もだらん。上着もだらん。
そして、上着の中から。 銃、爆弾、御札がいくつか床に落ちる。
完全にホラー。
モス
モス、一切動じない。
いや、内心は混乱している。ついさっきまで、外で盛られたミクを作っていたはずだ。
だが──
……そうだった。 絡繰でもあり、怪異でもある。
たまに、気分で仲間を驚かす。
前例がある。 だから、納得できてしまう。
モス
モス、ため息。
モス
藍(アイ)
モス
藍(アイ)
藍(アイ)
モス
諦めの境地。
モス
モス
理由は単純だった。 探す人手は、多ければ多いほどいい。
頭の蛾の触角で匂いを辿る、という手段もあるにはある。だが、今回は使いたくなかった。
あちこちから漂ってくる、 レモン。ミント。ハーブ系。
蛾が苦手とする匂い。 それが無差別に、容赦なく、空間に満ちている。
蛾神であるモスにとって、 それはもう不快以外の何物でもない。
嗅覚に頼れば、確実に思考が死ぬ。 触角も、精神も。 だから頼まざるを得なかった。
……が。
藍(アイ)
藍、即答。
顔にははっきり書いてある。 それどころじゃねぇと。
今この瞬間、 藍の脳内を占めているのは、
ラーメン。
辛いやつ。
今すぐ。
食いたい。
以上。
モス
モス、諦める。(2回目)
嗅覚は使わない。触角でも嗅がない。そう固く決めて、黙々と大荷物の山を漁り始める。
段ボール。 段ボール。 意味不明な段ボール。
藍(アイ)
その様子を、藍はぼんやりと見ていた。
手には、出来たての辛いカップラーメン。湯気が立ち、匂いが立ち、温かさが立ち上っている。
──美味い。
……その時。
本当に珍しく。本当に、気まぐれレベルで。
善意が湧いた。
藍(アイ)
と言って、そこら辺にあった適当な上着をモスに向かってぶん投げる。
雑。無愛想。狙いも適当。
だが、寒がっていることくらいは、なんとなく察している。
モス
モス、硬直。
藍(アイ)
それだけ言って、藍は何事もなかったようにリビングへ戻っていく。
カップラーメンを啜りながら。
モス
モスは、上着を手にしたまま動かない。
善意に慣れていない。しかも藍から。 思考が一瞬、追いつかない。
──その時。
バン!!!
玄関の扉が吹っ飛び、勢いよく外へ消え、 同時に冷気が室内へ雪崩れ込む。
白(ハク)
白だ。楽しかったと全身で主張しながら、雪をまとったまま入ってくる。
扉?直さない。
冷気。雪。ついでにテンション。 全部そのまま。
その後ろからノアが自然に現れ、扉を何事もなかったように修復。壊れた形跡すら残さない。
そして、モスの方を見て、
ノア
声をかけながら、モスにかかった雪を丁寧に払っていく。
さらに。説明もされていないのに、頼まれてもいないのに、しれっとコタツ探しに合流。
コタツの入った箱を一発で当て、中のコタツを軽々と持ち上げる。
ノア
モス、硬直。(2回目)
言葉が出ない。理解も追いつかない。
……というわけで、少し時間を置いて、内心をどうにか落ち着かせてから。
モスは、コタツに入った。
ぬくもり。じんわり。包み込むような熱。
頭の触角はだらんと垂れ。
翅はぺたんと力なく床に落ち。
身体は自然と丸まり。
完全にオフモード。
その横で、寝起き特有の、思考がまだ現実に追いついていない橙が「ん〜……」と欠伸混じりに歩いてくる。
目は半分閉じたまま。方向感覚は勘。 目的地は──コタツ。
そのまま、ためらいもなく潜る。
橙(トウ)
モス
言葉はない。完全にオフモードの人外二匹が、コタツにすっぽり。
橙は、頭にある左右に飛び出たぴょこ毛のような植物──いや、植物そのものを、ぴこぴこと無意識に動かしながら。
腰に生えた、蝙蝠のような形状の黒い翼も、力なくぺたんと落ちる。
そのまま、すやすや。
一方、モス。 鱗粉が橙に付着しないよう、本能的に、ほんの少しだけ距離を保ちつつ。
それでも床にぺたん。コタツの魔力に完全敗北。
たまに、触角がぴくっと動く。
夢でも見ているのか、単に温度に反応しているのか。どちらにせよ、それすらも愛嬌。
もちもち。もふもふ。 コタツの中で、ぬくぬくが完成している。
そして、その上。 コタツの天板にカップラーメンを置きたい衝動を、理性で必死に抑えながら。
置いた瞬間二人に同時に蹴られる未来がはっきり見えるため、藍は少し離れて黙々と食っていた。
藍(アイ)
ズルズル。ズルズルズル。
咀嚼スピード:超爆速。
元は月兎。普段は意識して抑えているが、気が抜けると、どうしても速くなる。
普通は逆だが、人外に常識は通じない。
……残る三人はというと。
ノア
ノアが、リビングの一角で何やら作業をしている珠に、さり気なく声をかける。
珠(タマ)
珠、笑顔で、何一つおかしなことを言っていない風を装う。
耳を疑うどころか、 夢かどうか疑うレベルの発言だが。
ノアは呆れもせず、驚きもせず。 ただ、きょとんとする。
珠(タマ)
珠(タマ)
珠(タマ)
珠は笑っている。 ちゃんと、口角も上がっている。
──だが、目が、 完全にSAN値が逝っている者のそれだった。
笑っているのに、笑っていない。 発狂している。
珠(タマ)
珠は、工具を手に取りながら言う。
珠(タマ)
ノア、一瞬言葉を失う。
これは全力で止めなければいけないやつだ。
ノア
否定しない。頭ごなしに否定しない。
ノア
だが、止める意思は、はっきり示す。
そして、珠が気に入っている“逃げ道”を差し出す。
ノア
その瞬間。 珠の動きが、ぴくっと止まる。
珠(タマ)
好物には、抗えない。
ひとまず宇宙戦争はケーキで回避された。
白? 白は外。もっかい外。
<できたのだ!!!
雪を盛り、無駄にでかい、 自己主張の激しい自分の雪像を作っている。
キッチンに立ち、二人で並んでケーキを作る。
二人とも、動きに一切の無駄がない。ノアは手順をきちんと理解しているタイプの上手さ。珠に至っては完全にプロの手つきだった。
ボウルを持つ角度、泡立て器の回し方、 焼き加減を見る視線の鋭さ。 趣味の域を軽々と超えている。
……が。盛り付けに入った、その時。
珠が、ふと動きを止めた。
隈はない。 だが、いろんな意味で疲れていると一瞬でわかる笑顔を浮かべて、ぽつりと口を開く。
珠(タマ)
生クリームを絞る手が止まったまま。
珠(タマ)
ノア
ノア、人生で初めてレベルの素の困惑。
珠(タマ)
藍(アイ)
ちょうどそのタイミングで、カップラーメンを食べ終えた藍が片付けに来ていた。
藍のうさ耳が、キレてピンと立つ。
対して、珠のしっぽは微動だにしない。 逃げる気がない。
珠(タマ)
藍(アイ)
珠(タマ)
藍(アイ)
珠(タマ)
藍(アイ)
珠(タマ)
珠(タマ)
珠(タマ)
藍(アイ)
一瞬、藍が沈黙する。
諦めたか。キレるか。殴るか。
そのどれでもなく。
藍(アイ)
珠(タマ)
即答。
次の瞬間、藍がどこからともなくメイド服を取り出し始める。ヤケクソである。
更に、珠もノリノリで別の箱を開ける。
中身は、完璧に仕立てられた執事服。 サイズもぴったり。
ノアは、この時点で思考を放棄した。 何も言わない。言えない。
──数分後。コタツから、ぬくぬくを名残惜しそうに抜け出したモスと橙。
そして、屋外で自己主張の激しい像を作っていた白が、もう一度帰ってきた時。
モス
橙(トウ)
モスの触角が、ぴくりと動く。 橙が、くんくんと鼻を鳴らす。
甘い。ケーキの匂い。
それに混じって、 化粧品のような、明らかに場違いな香り。
白(ハク)
白は、何も気付いていない。
そして。
バンッ!!
勢いよくリビングの扉が開く。
カツカツ、と。 ヒールの音を鳴らしながら、藍が入ってくる。
フリルのついたスカートが揺れる。 だがよく見れば、それは完全に戦闘メイド服。
背中には、堂々と銃。
動きは雑。姿勢は雑。品もない。
だが、殺意と実戦経験だけは一級品。
……その後ろから。
珠が、究極にエレガントな動きで現れる。
一切の無駄がない。隙もない。油断もない。
まるで、 アニメや漫画に出てくる悪魔執事そのもの。
底が知れない。得体が知れない。人間から一線を越えた違和感が完璧に再現されている。
内ポケットには、さり気なくナイフ。
……二人とも。
治安がよろしくない。
白(ハク)
白、完全に混乱。
橙(トウ)
橙、末期。
モス
モス、遠い目。
そして、ふと気付けば。
藍は、ヒールで鳴ってはいけない種類の音を鳴らしながら、雑に頭を下げる。
藍(アイ)
藍(アイ)
……声は低い。敬意?微塵もない。 何故かやる気だけはある。
よく聞けば、スカートの裏側から「カチャ、ゴト、ガン」と、銃や爆弾同士が互いに主張し合う音がしている。
どう見ても、生粋の戦闘メイドだ。 違うそうじゃない。
珠(タマ)
珠が、一歩前に出る。
その動きが、あまりにも──優雅。
背筋、指先、視線の運び。 すべてが計算され尽くしたような所作。 実際、計算されている。
いつもなら「きらーん☆」とか星が飛び交うはずなのに、今ここにいるのは、完全に得体の知れない悪魔執事だった。
しかも身内相手。 それでも、隙が一切ない。なんで。
白(ハク)
白、完全に混乱。(2回目)
一方、気にしたら負けだと本能で悟っている橙とモスは、何も言わずにテーブルにつく。
……橙は内心、
橙(トウ)
と、メイド喫茶に来たオタクの顔をしていた。 末期である。
そして、運ばれてくる見事なケーキ。 ふわりと甘い香りが広がる。
藍(アイ)
藍(アイ)
字が違う。しかも棒読み。
珠は無言でケーキを三等分。 寸分の狂いもない。
珠(タマ)
完璧な笑顔で問いかける。
白はもうフリーズしている。
モス
モスは一瞬だけ考え、これは無理難題を言って流れを止めるべきだと判断する。
モス
だが。
珠(タマ)
珠、即答。
指をパチン。無駄に美しい音。
次の瞬間、モスの目の前にグラスが出現する。
そして、どこから持ってきたのか一切不明な本物の人間の血を、無駄に優雅な動作で注ぐ。
モス、硬直。(3回目)
考えるな。考えたら負けだ。
次に、橙。 少し考えるふりをしてから、顔を上げる。
橙(トウ)
橙(トウ)
……こいつ。
藍(アイ)
それはメイドの返事ではない。
そして、ヒールを雑に鳴らしながら戻ってくる。手には見るからに美味しそうなオムライス。
品はない。 だが零さない。最低限の理性は残っている。
橙(トウ)
橙(トウ)
橙、慣れてるな。
……いや、末期だな。
藍(アイ)
藍、すんっとした顔でケチャップを持つ。
文字は雑。 途中で誤魔化した跡もある。
……が。
橙(トウ)
頭の植物をぴこぴこ揺らして大喜び。
橙(トウ)
橙(トウ)
橙、お前も疲れてたか。
藍は露骨に嫌そうな顔をしながらも、渋々スプーンを持つ。
藍(アイ)
横で見ていたモスは、 完全にドン引きしていた。
白に至っては、本当に、本当に珍しく、 一言も発さなかった。
……が。
橙が、藍に「あーん」されながら三口ほど食べた、その直後。
動きが、ぴたりと止まる。
──嫌な予感。
ほんの一瞬。 だが、その“間”を、モスは見逃さなかった。
触角が、わずかに震える。 この手の空気は、経験上、碌な方向に転ばない。
橙(トウ)
橙が、何かを思いついたように首を傾げる。 目は真剣。真剣すぎて、なお悪い。
橙(トウ)
空気が凍った。
ああ、これはだめだ。 疲労が理性を溶かし、判断力が死んでいる。
珠を見ると、完璧な姿勢のまま、深く、力強く頷いていた。肯定。全肯定。なんで。
藍(アイ)
藍の声は低く、短い。 うさ耳がぴん、と逆立つ。床を震わせる勢いの足だん。うさぎのそれとは思えない殺意。
もっとも、冷静に要素を並べてしまえば、橙と珠が“そういう発想”に至った理由も、わからなくはない。
少し長めの、水色の跳ねっ毛。 主張の強いアホ毛一本。 オタクには刺さる。
白いうさ耳と、丸いしっぽ。 オタクには致命傷。
常に半眼、殺意を含んだジト目。 オタクにはご褒美。
男の子とは思えない、妙に整った顔立ち。 オタクは死ぬ。
もちもちのほっぺ。 オタクじゃなくても死ぬ。
見た目と年齢の乖離。 オタクは墓に入る。
それが、戦闘用メイド服を着て、 完全にヤケクソで奉仕ごっこをしてくれる。
末期であり、疲労困憊であり、 現実と妄想の境目が溶けている橙と珠にとって。
藍=最高に可愛い。
本人にとっては、ただの地獄である。
モス
モスの触角が、ぴくりと反応した。
……こういう厄介なのは、早めに排除しておくに限る。実際のメイド喫茶でも、距離感を間違えた迷惑客は粛清される。たぶん。 アニメではそうだった気がする。
本来なら、関わる理由はない。 むしろ、藍には日頃から殺虫剤を向けられ、昨日は風呂に連行されかけている。
──だが。
今日は。本当に一応だが。上着を投げてもらったという、善意を受け取っている。
ならば返そう。 人外なりの、等価交換で。
……鶴の恩返し?違う。
モスの恩返し。
モス
短い声と同時に、 二人の体が、ふわりと宙に浮いた。
橙(トウ)
珠(タマ)
触れていない。触れれば即座に呪いが回るため、モスは“服だけ”を掴んでいる。指先は肌に触れないまま、正確に、雑に。
そのまま、廊下へ。
風圧だけで扉が閉まった。
モスは何事もなかったかのようにテーブルへ戻り、足を組み、グラスを手に取る。
中身は、人間の血。ワインを嗜むかのように、ゆっくりと口をつける。
モス
淡々とした注文。
それを見ていた白は、少しだけ首を傾げ、藍が珍しく何も言い返さないのを確認すると、満足そうに頷いた。
白(ハク)
白(ハク)
藍(アイ)
藍は一瞬、理解が追いつかない顔をしたが、迷惑な“わかった気になっている視線”が消えたことで、何かが吹っ切れた。
藍(アイ)
明らかにメイドの返事ではないが、キッチンへ向かう背中は、どこか軽い。
白いうさぎのしっぽが、本人の意思とは無関係に、ほんの少しだけ、ふりふりと揺れていた。
そして、戻ってくる。 品?そんなものは最初から存在しない。
だが両手に乗っている料理は、暴力的に美味そうだった。湯気。香り。盛り付けの雑さすら「食え」と主張してくる。
スカートの裏では、相変わらず銃と爆弾が軽くぶつかり合う音がしているが、それはもう日常音として処理されている。
藍(アイ)
一応、棒読みではない。 感情は薄いが、仕事としての最低限はこなす声。
テーブルに置く手つきも、零さない。 丁寧ではないが、確実。
萌え萌えきゅん?しない。
その様子を見て、もういいかなと判断したノアがキッチンから戻ってくる。 仕事はない。平和だ。たぶん。
白(ハク)
白は、ブルーハワイ味のかき氷を豪快に頬張り、 しっぽをぶんぶん振っている。
食べる速度は爆速。 藍ほどではないが、十分に早い。
そもそも、氷龍と天使の混血児に“頭がキーンとする”という概念は存在しない。
冷たい=美味い。
以上。
モス
一方、モス。 藍が珍しく気を遣い、蛾が苦手なハーブを一切使わずに作ったパスタ。
……それ自体は、いい。 問題は。
なぜ、明太子。
モス
モス
至極真っ当な疑問。
藍(アイ)
即答。正直。一切の迷いなし。
藍は、あまり甘くない抹茶かき氷を食べながら、めちゃくちゃ欲しそうな目で言う。
自分で作り、 自分で出し、 自分で食いたくなる。
欲に忠実。ただそれだけ。
モス
そうなるくらいなら最初から二人分作ればいいのにという顔をしながら、モスは溜息を一つ。
そして、テーブル越しに、パスタを分ける。
動作は自然。洗練されている。 フォークの扱い、姿勢、距離感。 完全にヨーロッパ在住の人のそれ。
出身は中世ドイツ。育ちはヨーロッパと日本。 食事作法は、無駄に完璧。
モス
そう言って、藍に一口。
藍(アイ)
藍は一瞬、何か言いたげに口を開きかけるが、結局抗えない。
ぱくっ。
しっぽ、ふりふり。 めっちゃ美味い、という顔。
白(ハク)
それを見ていた白が、動きを止める。
少し考え、そして何かを思いついたように、ぱっと表情を明るくした。
白(ハク)
藍(アイ)
白(ハク)
藍(アイ)
モス
白に悪意はゼロ。
単純に、こういう話。 子分(※違います)が腹を空かせているなら、主(※違います)である自分のものを分けるのは当然。
ということで。
なぜか藍は、白とモスに挟まれる形で座ることになり、左右から美味いものを分けてもらう羽目になった。
藍(アイ)
ジト目は健在。だが、
ほっぺは、完全にリス。 うさ耳は、完全にリラックス。 しっぽは、無意識にふりふり。
明太子パスタ。 絡繰であり、怪異であり、元・月兎である藍ですら虜にする危険物。
それを見たノアは、 何も言わず、そっとグッドサイン。
仲良しなのは、いいことだ。
廊下から覗くように見ていたオタクの珠は、目を輝かせながら、ひそひそと。
珠(タマ)
珠(タマ)
脳内で物語が完成し、勝手に爆発している。
橙(トウ)
橙、認めるな。
……尚、藍はうさ耳のおかげで珠と橙の会話は全部聞こえている。
だが、今は飯の方が大事。
美味い。それだけ。明太子パスタに勝るものは、辛味噌ラーメンしかない。
だが、幾ら藍でも抗えなくなる瞬間は存在する。
藍と珠が、同時に動きを止めた。
視線の先。窓の外。
そこに、何やら面白そうな事をしてるなと見に来たニャルラトホテプが覗いている。
ああ!窓に!窓に!
藍(アイ)
珠(タマ)
言葉はない。必要もない。
元からSAN値なんて概念を持ち合わせていなかった二人が、さらに一段階狂う。
理性?常識? そんなものは、とっくに砕け散っている。
明太子パスタとかき氷を、リスみたいに口いっぱいに頬張ったまま、椅子を足場に──
ダンッと、跳ぶ。
ガシャァン!!
窓ガラスが、派手にぶち破られた。
破片が舞う。冷気が入る。雪も入る。 しかし誰一人、気にしない。
藍はそのまま空中で姿勢を切り替え、戦闘メイドとしての“本能”に完全に切り替わる。
そして、遅れることなく。 珠も無駄にエレガントな動きで追う。
ニャルラトホテプは一瞬「これは面倒だな」とでも言いたげに、窓の創造で逃げようとする。
──が。
パチン。
珠の指が鳴る。
次の瞬間、その窓は何故か消える。 理屈?知らない。
そこにあるのは、SAN値を削られ続けた末に到達する、SAN0の領域。
さっきまで「ごっこ」だったものは、 完全に「本物」に変わった。
藍は銃を撃ち、爆弾を投げる。 メイド服のまま。一切の躊躇なし。
珠は内ポケットのナイフだけでなく、指先から鋼のような蜘蛛糸を伸ばし、自在に操る。
動きは静か。だが、確実。
もはや漫画。
庭?家庭菜園?白の雪像?そこら辺の地形? 主に藍のおかげで、木っ端微塵。
白は一瞬、本当に一瞬だけフリーズした。
だが次の瞬間には、
白(ハク)
と、即座に応援役に回る。 子分(※違います)への声援は全力。
ノアはというと、 少し混ざりたそうにしている。
拳を鳴らす音が、ポキリではなくゴキリ。
ノア
割と本気。
モス
モスは、もう諦めたような声色で言い、さっきまで藍に食べさせていた明太子パスタをぱくり。
モス
少し考え、
モス
ちなみに橙は、 二人の戦闘を真剣な目で見つめていた。
何かに目覚めた顔。
機械怨痴ではあるが、珠に色々見せてもらっているため、オタク化はとっくに完了している。
橙(トウ)
ぽつり。
何か、ロクでもないことを思いついた顔。
モス
即座に止める。パスタを食べながら。
……が。
暴れ回っていたその最中、空気が変わる。
──否。支配された。
藍と珠の周囲に突如として現れたそれは、神々しいとしか言いようのない、巨大な黄金の絡繰。
幾重にも重なる歯車。 回転する機構。 噛み合う金属の音。
それらは本来、騒音であるはずなのに── 何故か、耳に心地良い。
まるで子守唄のように、 思考を撫で、削り、溶かしていく。
藍の指が止まる。 引き金にかかっていた力が、ふっと抜ける。
珠の蜘蛛糸も、 ぴたりと動きを止めた。
そして、二人の中にあった 「ニャルは絶殺」 という純度100%の意思が、
ゆっくりと、静かに、溶かされていく。
絡繰の中心。 そこに、一人の女性。
──否。やはり人外。
金属のように輝く、黄金の長髪。 眠たげに細められた、藤色の瞳。 微動だにしない、人形のような表情。
薄い茶色のワイシャツに、 濃い同色のジャケット。
襟元には、禍々しい紫の宝石が取り付けられた、藤色のアスコットタイ。
藤色のスカートに、黒タイツ。 足元には、静かに地を踏む黒いヒール。
そして頭には、藤色のリボンが取り付けられた、黄金の歯車の髪飾り。
完成されすぎた存在。 美しさだけで言えば、モスすら上回る。
藍も、珠も。 そして少し離れた場所にいた彼らも。 全員が、その姿に見覚えがあった。
──機械仕掛けの神。
遥か昔、技術者達によって造られた存在。
モスやノアと同じく、邪神の“従者”。
その名は、マキナ。
マキナ
ゆっくりと唇が動く。 その声は、命令でも脅しでもない。
ただ──絶対の停止。
マキナ
何かを言いかけた、その瞬間。
マキナ
寝た。
藍(アイ)
珠(タマ)
沈黙。
あまりにも完璧に、 あまりにも美しく現れて、 あまりにも雑に寝た。
周囲の黄金の絡繰も 「本体が寝たので我々も寝ます」 と言わんばかりに、
その場で停止したり。 そのまま重力に従って落下したり。 フェードアウトするように消えたり。 統一感ゼロで機能停止。
さっきまでの神々しさ、全滅。
藍(アイ)
藍、ぽつり。
銃を構えたまま、 完全に置いていかれている。
珠も、 蜘蛛糸を出したまま固まっている。
数秒の静寂の後。 二人は、同時に周囲を見回す。
珠(タマ)
ニャルラトホテプはいない。逃げた。
どう考えても、やべぇの来たから押し付けて帰ったやつだ。
藍(アイ)
藍のこめかみに、青筋。
だがその怒りも、 目の前の状況で強制停止する。
マキナ
直立。 そのまま、完全に爆睡。
倒れない。揺れない。 ただ、眠っている。
藍が近付き、じーっと見る。
そして、デコピン。
……反応なし。
珠が横から背伸びをして、
珠(タマ)
と言いながら、ほっぺをぷにぷにする。
やわらかい。が、起きない。
藍(アイ)
珠(タマ)
二人、無言。 さっきまでの戦闘の熱はどこへやら。
完全にどうしていいかわからなくなっている。
様子を見ていたモスが、 深く、深くため息をつく。
神々しく現れ、世界を止めかけた存在は。
ただの爆睡オブジェと化した。
こうして、 窓ガラス二度目の破壊と、 神の押し付け逃亡と、 新たな問題児(爆睡中)を迎えながら、
シェアハウス二日目は、 混沌そのもののまま幕を閉じたのだった。
明日もきっと、ろくでもない。