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賭け

1 - 賭け

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2019年07月07日

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若宮俊太郎

湯浅幸一

俺は左

前を走る車はウィンカーを出し、右折した。

若宮俊太郎

よっしゃ、俺の勝ち(笑)

木下ひとみ

木下ひとみ

ねえ

木下ひとみ

さっきから遊んでるのは何?

楽しげにはしゃぐ二人の様子を後部座席から見ていた木下ひとみが尋ねた。

湯浅幸一

何って賭けだよ

木下ひとみ

賭け?

若宮俊太郎

俺たちの前を走る車が前か右か左の何処を走るかを

若宮俊太郎

お互い予想して賭けてるんだよ

木下ひとみ

…なんかショボい遊びな気もするけど

木下ひとみ

何を賭けるの?

湯浅幸一

二千円か三千円

木下ひとみ

やっぱりショボい…

若宮俊太郎

ショボくても楽しいからいいんだよ

木下ひとみ

楽しいんだ…(笑)

木下ひとみ

誰が考案したの?

湯浅幸一

俺だよ

湯浅幸一

仕事帰りに何気なしに独りで予想してたら意外とハマって

湯浅幸一

若宮に話したらこいつも結構ノリノリになってさ(笑)

少し進むと脇道から赤い車が現れ、湯浅たちの車の前を走り始めた。

湯浅幸一

次はあの赤い車でやろうか

若宮俊太郎

よし、いいぞ

その時、車内に音楽が流れた。

湯浅幸一

電話らしいからちょっと中断

湯浅が通話ボタンを押すと、唐突に男の不適な笑い声が聞こえた。

やあ、湯浅くん

湯浅幸一

誰ですか?

名乗る必要はない

今はまだ、な

それより君の考えたゲームは中々面白いと思うよ

そこで是非とも君たちに俺のゲームに付き添ってほしいんだ

若宮俊太郎

あんた何言ってんだ?

湯浅のスマホはBluetoothに接続されている為、男の声は車内の若宮とひとみにも聞こえた。

ルールを説明しよう

男は若宮の言葉を無視するように一方的に口を開いた。

今、君たちの前を赤い車が走っているだろう?

その車が向かう先を、先ほど君たちがやっていたみたいに

何処に向かうのか終点まで予想してもらおうか

湯浅幸一

あんたはそれに乗ってるのか?

そんなことを知る必要はない

黙って俺のゲームに付き合えばいいんだ

若宮俊太郎

無理矢理割り込んできたくせに随分偉そうなこと言うじゃんか

若宮俊太郎

もし付き合わないって言ったらどうするつもりなんだい?

絶対言わないね

湯浅幸一

何故?

もし従わなければ

その車に仕掛けた爆弾を容赦なく爆発させる

木下ひとみ

ば、爆弾ですって?!

若宮俊太郎

冗談抜かすな!

哀れな焼けた肉の塊になりたくなければ言うことを聞くんだな

このゲームは強制参加だ

湯浅幸一

湯浅幸一

一応聞くけど

湯浅幸一

もし前の赤い車が進む道が予想と外れた場合はどうなる?

その場合も爆発させる

若宮俊太郎

ふざけるなっ!

おいおい、そう怒りなさんな

これはれっきとしたゲームなんだ

勝てば命は助かり、俺が負ければ警察に自首する形式の賭けだよ

若宮俊太郎

何が賭けだ!

木下ひとみ

そうよ!

木下ひとみ

人の命をおもちゃみたいにして何がそんなに面白いのよ!

若宮とひとみが交々に非難の声を上げると、男はまた不適に笑い出した。

「賭け」って言葉を辞書で一度調べてみるんだな

金以外の大切な物を一変に失ってしまうという意味もある

つまりは命を「賭けた」わけさ

湯浅幸一

………

納得したなら四の五の言わず赤い車の行き先を言い当てるんだ

電話は繋げたままにしておけ

赤い車はウィンカーを灯さないから電話口で慌てずに行き先を言うんだ

通話が切れた場合も爆破する

湯浅は額から汗が流れるのを感じながらも、前を走る赤い車の動きに集中した。

赤い車はまるで狼狽する湯浅たちを嘲笑うかのように、ぐねぐねと走っていた。

そうそう、忘れていた

事前に目的地に関係するヒントを与えておこう

赤い車のナンバーを見てみろ

湯浅はライトに照らされた視界から、ナンバープレートの数字に目を向けた。

08-06

若宮俊太郎

この数字が終点に関係あるのか?

その通り

それを頼りに湯浅くん、君はゲームクリアを目指すんだ

若宮俊太郎

頼むぞ、湯浅

若宮は無遠慮に肩をバシッと叩くが、当の湯浅は微動だにしない。

この時から湯浅は嫌な予感に襲われていた。

「右」「右」「左」「直進」「右」

湯浅が声に出すと、赤い車はその進路通りに車を進めて行く。

湯浅の予想はどんどん的中していた。

命懸けなだけに湯浅も真剣なのだと若宮は思っていたが、木下ひとみだけは違った。

ひとみは声だと気付かれると危惧し、スマホを取り出し若宮にメールを送った。

木下ひとみ

湯浅くんだけど、ちょっとおかしくない?

若宮俊太郎

そりゃ状況が状況だからやつのゲームに必死なんだよ

木下ひとみ

そうじゃなくて

木下ひとみ

なんかさ…

木下ひとみ

いくら予想だけで相手の車の行き先を当てるにしても

木下ひとみ

まともに当てすぎてるような気がして仕方がないの

若宮俊太郎

若宮俊太郎

それじゃあ木下は

若宮俊太郎

湯浅自身も何処に向かってるか見当が付いてるって言いたいのか?

木下ひとみ

そんな気がして仕方がないの

若宮俊太郎

とにかく今はこのまま見守ってよう

二人がメールのやり取りをしている間も、湯浅は無言のまま車を走らせていた。

車内には男の「当たり」とか「正解」などの言葉が聞こえる時点では、

湯浅は賭けに勝ち続けているらしい。

それから30分が経過。

長い時間が経てば経つほど、ひとみは自身の読みが確かだという確信を得ていた。

ただ、どうしても男の目的が分からない。

湯浅が勝てば男は自首すると発言したが、現時点で勝算は湯浅にある。

勿論、最後の最後で間違えてしまえば形勢逆転となるが、確率的に湯浅が勝つだろう。

それを裏付けるかのように男は徐々に軽かった口を閉ざし始めた。

湯浅幸一

俄然、赤い車が停車した。

そこは墓地だった。

木下ひとみ

何よここ…

今にも泣き出しそうなひとみを若宮は気に掛けながら湯浅を見た。

湯浅はハンドルに額を押し当てながら、ぶつぶつと呟いていた。

湯浅幸一

ごめんなさい…

湯浅幸一

すみません…

ようやく理解したみたいだな

全員降りて墓地に進め

車内に響く男の声に押されるように三人は車を降り、墓地へ足を進めた。

湯浅を先頭に若宮とひとみは続くが、やがて一つの墓石の前で立ち止まった。

若宮俊太郎

木下ひとみ

仁科…晴美…?

若宮俊太郎

知ってる人なのか湯浅?

湯浅幸一

………

知ってると言え

聞き覚えのある声がした方向を見ると、30代らしき男が立っていた。

湯浅は膝からくずおれた。

湯浅幸一

仁科さん…

仁科周平

そうだ、俺だよ

仁科周平

声を聞いても思い出せなかった辺り

仁科周平

本当に罪悪感の欠片も感じてなかったんだな

若宮俊太郎

おい、どういうことだよ

状況が全く呑み込めない若宮は二人の顔を交互に見ながら声を荒げた。

仁科周平

君たち二人には無関係なことだが巻き込んで悪かったな

仁科周平

俺はどうしてもそいつに用があるんだ

湯浅幸一

仁科さん、あれは本当に軽い気持ちでーー

仁科周平

黙れっ!

仁科周平

その軽い気持ちのせいで妹は死んだのにお前ときたら

仁科周平

まだあんな賭けをしてたのか

木下ひとみ

賭けって…?

仁科周平

君たちに教えておこう

仁科周平

俺には晴美という妹がいた

仁科周平

晴美はその男と付き合っていたんだ

仁科周平

妹はお前との交流が楽しそうで兄の俺も嬉しかったが

仁科周平

ある時、この男が考え付いた下らない遊びのせいで妹は死んだ

仁科周平

何をしたと思う?

仁科の気迫に若宮とひとみは口を開くことが出来なくなっていた。

仁科周平

仁科周平

妹を使った賭けを他の連中と楽しみやがったんだ

仁科周平

覚えてるだろう?

湯浅幸一

………

仁科周平

妹はロッククライミングに凝ってた

仁科周平

それを知ったお前は地元の海岸にある岩崖に妹と仲間を連れ

仁科周平

晴美が岩崖を登り切れるかどうかを賭けたんだ

仁科周平

妹は彼氏のお前の期待に添えるよう努力はしたんだろうが

仁科周平

プレッシャーのあまり足を滑らせて死んだ

湯浅幸一

彼女は自信に溢れてたから僕はーー

仁科周平

お前が妹を殺したんだ

仁科周平

なのにお前は知ってるはずの俺の声を聞いても誰かも分からず

仁科周平

車のナンバーでようやく思い出した

若宮俊太郎

じゃああのナンバーは…?

仁科周平

0806、8月6日

仁科周平

晴美が滑落死した日でもあり

仁科周平

誕生日だ

湯浅幸一

仁科さん、僕はどうすれば…

仁科周平

仁科周平

賭け事が好きなんだろ?

仁科周平

ここで新しいゲームをしよう

仁科はそう言うと、背中にしょっていたガンケースから猟銃を取り出した。

湯浅たちが驚いて後退りするのをよそに、仁科は落ち着いた様子で弾を込めた。

装填し終わった猟銃を誇らしそうに眺めた後、仁科は湯浅に目を向けた。

仁科周平

ゲームの名前は「デッド・オア・アライブ」

仁科周平

「生死を問わず」だ

仁科周平

お前はとにかく暗闇の中を逃げ

仁科周平

俺は限られた弾が無くなるまで撃ちながらお前を追い回す

仁科周平

それでお前が逃げ切り警察に駆け込んでも構わん

仁科周平

その代わりお前は一生自分の犯した罪の意識と戦いながら

仁科周平

生き続けることになる

仁科周平

それがどれだけ苦しい人生の幕開けになるか思い知ればいい

仁科周平

ただし、俺がお前に勝つときはお前は地獄の業火で

仁科周平

永遠に悶え苦しむことになる

仁科周平

生きようが死のうがお前の将来は深い闇の底しかない

仁科は、今度は湯浅の横で震えている若宮とひとみに目を向けた。

仁科周平

賭けの勝敗は俺たちだけで見極める

仁科周平

君たちまで振り回してしまったことを心から詫びる

仁科周平

だから今すぐここから離れろ

木下ひとみ

で、でも、湯浅くんは…?

仁科周平

聞こえないのか?

仁科が冷徹な目を浮かべ、銃口をひとみに向けた。

若宮は咄嗟にひとみの腕を引っ張り、その場から急いで立ち去った。

エンジンが掛かったままの車も忘れ、若宮とひとみは死に物狂いでその場から離れた。

やがて、墓地から銃声が二発、三発と間隔を開けて闇夜に響いた。

無我夢中で走る若宮とひとみには、

どちらが賭けに勝ったかなど知る由も無かった。

2019.07.07 作

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俺の勝ち。なんで負けたか、、、

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