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こんにちはっ!

…え?

病院の屋上

笑顔で挨拶してきた君に、僕は

…暇

なんで病院はこうも暇なんだろうか

薬品の匂いが漂う病室

テレビも大してなにもやっていない

お見舞いに来る人もいない

屋上…いこっかな

俺のお気に入りの場所

屋上

…ここから落ちたら即タヒできるかなぁ

俺はタヒにたい

全ての元凶は、自分の病気

病名は、吐石病(とせきびょう)

宝石を吐くという意味で

vomit jewelry(ヴォミットジュエリー)とも言う

いわゆる奇病というやつだ

タイミングはバラバラで

綺麗な宝石を吐く病気

だけどその宝石は触れると血になってしまう

ヴッ…

コロコロッ

袋…持っててよかった…

看護師さんに後で渡さないと…

吐くときに痛みはないし、特に苦しいことはない

この病気の難点は、血を利用して宝石を体内で作っているということ

しかもかなりの血の量を使い、大量に作る

宝石を吐くということは言わば吐血と同じ

血がどんどん減っていくから、退院することはできない

はぁ…

初めて宝石を吐いたのは中学2年生の頃

(…なんか、吐きそう…)

お母さ…

コロッ

綺麗な赤色の宝石だった

お母さん

何…これ…

お母さん

石…?

お母さん

…っ!

お母さん

きゃぁぁぁ!

お母さんが持った途端、綺麗な宝石はドロッと溶け始めた

お母さん

血…!?

お母さ…フラフラする…

お母さん

嫌っ、近づかないで!

お母さん

石を吐き出すなんて…

お母さん

気持ち悪い!

気持ち悪い、そう言われた

気持ち悪い、かぁ

そうだよね…

このまま消えちゃいたいなぁ…

こんにちはっ!

…え?

誰…?この子…

今まで見たことない子だな

それに…筆談?

こんにちはっ!

こ、こんにちは…?

パァァッ✨

耳が良くないわけではないっぽい…

お名前なんて言うんですか?

あ、赤…

僕は黄!よろしくね

えぇと…

僕、今日からここで入院することになったんです

そ、そうなんだ…

じゃあ俺…行くね

うん!またね!

ま、またね…?

もう会うことあんまりないと思うけど…

病院内で会ったらってことかな

ニコニコ

………

そういうことか

病室、同じだったんですね

…絶対知ってたでしょ

そんなことないです!

まぁ、「赤」って名前聞いてもしかしたらとは思ったけど…

俺の病室はもともと相部屋だった

俺が入院した頃から隣はずっと空席

「人が石を吐いてるとこなんか見たくない」って患者の理由

………

嬉しいなぁ

…?嬉しい?

僕、入院なんて初めてだから、緊張します…

そうだ、なんで入院することになったの?

あれ、俺なんでそんなこと聞いて…

なんていうんだろ

奇病?にかかったみたいで…

ピクッ

奇病…?

病名は…?

相手はスラスラと自分のノートに書き始める

人魚姫病です

人魚姫病…?

人魚姫病は、お話の人魚姫のように声が出なくなります

そして、足から徐々に鱗が出てきて

最終的には足が勝手に動いて海に身を投げてタヒにます

……ごめん、変なこと聞いて

ハッ!

そんなことないです!

代わりに、赤の病気も聞いていいですか?

ぁ…

ここで俺の奇病を話したら、気持ち悪がられるかも…

………

…嫌われたくない

無理して話さなくてもいいですよ?

さっきのは僕が勝手に話したんで

でも、俺聞いちゃったし…

俺は、吐石病

宝石を吐く病気

ただ、それだけ

話すと、君はぱっと顔が明るくなった

僕ね、まだ症状があって

涙が真珠なんです!

似てますね!

宝石かぁ…綺麗なんでしょうね

綺麗

初めて言われた、そんなこと

でも、実際に吐いてるとこを見たわけじゃないから…

それに、奇病持ちの人が他にもいるなんて

治療法はあるんですか?

治療法

何故か唯一教えてもらえないこと

教えて貰えないんだ…

はやく…治って欲しいのに

そっか

僕はね、「真実の愛の口付け」だって

どこまでも人魚姫みたい

静かに笑う君

この人は俺の病気に「気持ち悪い」なんて言わない気がする

…どこからこんな確信が湧いてくるのかはわからない

看護師

赤さ〜ん

看護師

今大丈夫ですか?

えっ?あ、はい

看護師

午前中の石の回収に来ました

すみません…

はい、これです

看護師

ありがとうございます

看護師

それと、担当医からお話があるそうなので診察室へ来てください

わかりました…

いってらっしゃい

…うん

担当医

ここ最近、変わったことは?

…一回一回の量が、増えた

担当医

そうですか…

担当医

目眩や頭痛などは?

…ありません

担当医

うーん…

担当医

量が増えたのはどうにかしないと…

先生、このまま症状が進んだらどうなるんですか?

担当医

…極端に言うと、失血タヒになりますね

担当医

少し薬の量を増やすのと、

担当医

鉄剤を飲んでみるのもいいかもしれないです

担当医

奇病はまだ治療法が見つかっていないのも多く、措置も難しいですから…

担当医

「絶対安静」これだけは守ってください

でも、俺の奇病は治療法ありますよね?

担当医

……

なんで、教えてくれないんですか?

担当医

治療法として不適切だからです

…そうですか

………

病室に戻ると、君は携帯の画面を険しい顔で見つめていた

…君、険しい顔してどうしたの?

ビクゥッ

あ…びっくりさせちゃった?

ううん!大丈夫!

それよりも

僕、黄って名前なんですけど

え?

名前で呼んでください!

いっつも「君」って

ご…ごめん…

そういえば、お話ってなんだったんですか?

目眩がないか〜とか…?

へぇ〜

なにその興味なさそうな感じ

そんなことないですよ?

治療法については?

教えてもらってない

そっか

そう書いて君…黄くんは申し訳無さそうに笑った

こんな顔を見たかったわけじゃないのに

黄くんの手には真珠が握られていた

スー…スー…

深夜2時

当たり前だけど隣からは寝息が聞こえる

治療法としては不適切、かぁ…ボソッ

タヒにたいとは思っているけど

病気が治るのなら話は別

だって、この病気がなかったら

親に、クラスメートに、先生に

親友に

突き放されることはなかったのに

きっと治ったら戻ってきてくれる

ポロポロ

あ…れ?

おかしいな…

グスッ

…え?

宝…石…?

ズキンッ

いっ……

痛い…目が…

ポロポロ

コロコロッ

誰…か…

看護師

赤さん!?大丈夫ですか!?

看護…師さん…?

看護師

……!?

看護師

目が…

看護師

早く担当医を呼んで!!

んんっ…

ここは…

担当医

大丈夫か!?

は、はい…

せ、先生!

俺、涙も宝石に…

担当医

うん、わかってる

担当医

赤くん、良く聞いてね

担当医

君は今、3つの奇病を患っている

3つ…?

担当医

一つは吐石病

担当医

二つ目は涙石病(るいせきびょう)

担当医

三つ目は瞳石症候群(とうせきしょうこうぐん)

なんですか…それ…

担当医

涙石病は名前の通りです

担当医

瞳石症候群は…瞳が宝石になり、

担当医

数日後には…瞳だけ残して灰となって朽ちてしまいます…

え…?

担当医

しかも赤くんの場合はかなり症状が進行しているので

担当医

動くことは出来ないでしょう

担当医

骨が非常に脆くなっています

担当医

絶対に動かないでください

…はい

それから俺は、数日間集中治療室に入れられた

会いたい

黄くんに

会いたい

顔が見たい

声が聞きたい

数日間会えないだけなのに

心細い

離れてから数時間しか経ってないのに

黄くんがそばにいないのがこんなに寂しいなんて

苦しいなんて

この気持ちには…心当たりがある

親友に抱いた気持ちと同じ気持ち

入院したばっかりの頃

「親友」が来てくれた

おーおー大丈夫か〜?

あ…来てくれたんだ

もちろん

俺ら「親友」だろ?

そう…だね…!

そういえば、病気ってなんだったんだ?

えと…

あ…うぷ…

大丈夫か!?

袋…

コロコロッ

…え?

石…?

やばい…血が…バタッ

………

目が覚めたときには、看護師さんしかいなかった

あ…

看護師

大丈夫?

看護師

お友達は用事があるって帰ったわ

そうですか

また来てくれる、そう思ってたけど

桃くんが来てくれることはなかった

数日間、苦しさに耐えて、戻ってきた

でも、症状が良くなったわけじゃない

いつ、終わりが来てもおかしくなくなったから

最期は君と…

赤!大丈夫ですか!?

心配したんですよ!

うん…なんとか

赤…目が…

黄くん

俺、もう動けないし

すぐタヒんじゃうんだって

…え?

別に、タヒぬのはいいんだけどね

もともとタヒにたかった…し…

ポロポロ

コロコロッ

黄くん!?

そんなこと…嘘でも言わないで

…ごめん

……ほんとは…タヒにたくなんてない…

前は、ずっと治らないんだったらタヒにたいって思ってた

みんなから突き放されるより

タヒんだほうがマシだって

でも…

俺、大切な人って言える人ができたんだ

初めて話しかけてきたときの笑顔が、とっても綺麗で

それにその人が気持ち悪がらずに俺に話しかけてくれるから

どんどん惹かれていってた

だから…タヒにたくなんてなかった

でも…気付くのが遅かったみたい

………

その大切な人には…伝えなくていいの?

俺、黄くんのことが、好きだよ

チュ

!?!?

黄くんの体温、温かいな

生きてる…

黄くんにとってはわからないけど

俺にとってこの気持ちは真実の愛だよ

黄くんの鱗が…なくなっていく

黄くんも…そうなのかな

『鱗が…』

『えっ?』

そんな声をしてたんだね

綺麗だよ

俺さ、黄くんが俺の病気の治療法調べてたの、知ってるんだ

だから…

俺、調べたんだ

え…?

『大切な人を○すこと』でしょ?

っ…

俺にとっての大切な人は黄くんだから

そんなこと、できるわけない

せめて、俺の分まで生きて

そんな…

突然そんなこと言われても

ほんとだよねw

だから、俺が、治してあげたかったんだ

黄くんの病気を

僕も…

僕も、赤の病気を治してあげたかったし、

好きだよ

ずっと

ねぇお願い、逝かないで

俺だって…逝きたくないよ…

でも…もう…手遅れだよ

…最期に見たいのは、黄くんの笑顔なんだけどなぁw

見せてくれる?

ポロポロ

笑うから、逝かないで

ニコッ

ほら…!

ありがとうニコッ

そして赤は僕の目の前で灰となって朽ちていった

その灰は、なぜだかキラキラとしていて

綺麗だった

灰を持ち上げるとその中に赤の宝石の瞳だけが残っていた

赤…ポロポロ

涙が…温かい

僕を病気にしたのも、治したのも

好きになったのも

赤で、良かった…

END

逝きたくて生きたかった

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これをさところで、できます? 青くんが赤くん役 桃くんが黄くん役頼めますか?

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