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あまり物を置いていない部屋

乱雑に鞄を置いて椅子を引き座るとまだ熱い身体を抱きしめるようにギュッと自分に腕を回した

エマ

(運命の番…運命の……)

もし、私が抑制剤を飲んでいなかったら、もし、あの子がもっと長く近くにいたら、もし、あの子がα‬用の抑制剤または理性が無かったら

きっと、沢山の観客が見ている中で私はヒートを起こしていただろう

エマ

っ……

やっと見つけた私がここから逃げられる「理由」

だからこそ、自分の傍に置いておかなければならない

どんな手を使ってでも

エマ

……そうだ…

エマ

あの子…地球から来たって言ってたわよね…

とある事を思いつき、私は端末を取り出してその相手にメッセージを送った

翌日

授業が終わり昨日の夜突然送られてきたメッセージと、学園マップのルートを辿って私はエマさんの寝泊まりしている建物へと向かっていた

ケイト

…こっち…?

流石あの大企業が経営している学園 とても広く、マップをしっかり見ていないと直ぐに迷ってしまいそうになる

エマ

ケイト・キンバリー

ケイト

ケイト

は…はい!

名前を呼ばれた所に目をやると昨日の美しいあの彼女が立っていた

エマ

こっち

ケイト

あ…はい…

彼女は直ぐに背を向けて歩き出した 私はそれを見失わないように急いで後ろを辿っていく

とある隠れた建物に着き、エマさんが指紋認証で扉を開いて中に入ると、特に物がある訳でもなく 1階のフロアにはパソコンと椅子 恐らくここから見える2階には彼女が寝泊まりしているスペースが見えた

エマ

………

彼女は椅子に座って足を組み、私はどこに座っていいか分からず何となく机の近くに正座して座った

ケイト

………

ケイト

(え…どうすればいいんだ…?)

呼び出された意味も分からずに彼女をジッと見つめていると彼女は椅子に少し体重を掛けて頬杖をつきながら口を開いた

エマ

昨日の事だけど

エマ

私がΩって事、黙っててよね

ケイト

あ…はい、それは…分かってます

Ωは社会的地位が最も低いとされている、それはお兄ちゃんに教えられ、Ωだという事が分かったとしても誰かに口外するのはタブーである

エマ

……あのまま、死んでしまえば良かったのに

エマ

アンタ、余計な事してくれたわね

ケイト

え?

彼女の言葉に目を見開くと彼女は溜息をついた

エマ

はぁ…

エマ

…だから、アンタさ

エマ

地球生まれなんでしょ?

ケイト

あ、はい…そうですけど…

エマ

私を地球に連れてって

ケイト

……えっ?

突然何を言っているんだ、宇宙生まれの人から初めて聞いたワードに唖然としていると彼女は面倒くさそうに説明をし始めた

エマ

私はね、もうこんな生活嫌なの

エマ

行きたくもないパーティーに行って作り笑顔をするのも

エマ

したくもない結婚の相手を勧めてくる大人達も

エマ

…あの…父親の言いなりになるのも…

エマ

ヒートも、全部

エマ

あそこで死んでたら楽になれたのに!!

エマ

アンタが

エマ

私を助けたりするから!!

ケイト

………

昨日はお礼を言われたはずなのに、突然の言い分に驚いた反面、彼女は彼女なりに大変なんだなと少し、安心した

少しやりすぎかなと思いつつも彼女の反応を伺っていると彼女は意を決したように口を開いた

ケイト

分かりました

エマ

ケイト

でも

エマ

ケイト

卒業まで待ってください

ケイト

私、学校初めてなので…

ケイト

ここでやりたいこと、全部やりたいです!

キラキラとした目を私に向ける彼女にダメと言える訳なくて、私は頷くしか無かった

エマ

……分かった

エマ

…じゃあアンタ

ケイト

?はい

椅子から立ち上がり彼女のリボンを掴んだ

エマ

私の事守りなさい

ケイト

え?

エマ

Ωって知っちゃったんなら

エマ

α‬の匂いつけて

エマ

私を他のα‬から守って

ケイト

えぇぇ?!わ…私ですか…?!

エマ

他に誰がいんのよ?

ケイト

う…

ケイト

わ…分かりました

ケイト

でも匂いってどうやって…?

エマ

は?

ケイト

わ…私周りにΩ…いた事なかった…から

ケイト

匂いとかも最初分からなくて…

納得がいった

彼女と私の反応が違うことが 確かに初めてのΩの匂いなら不思議な感じがするだけなんだろう

エマ

……はぁ…

エマ

簡単よ

エマ

アンタ抑制剤は飲んでる?

ケイト

はい…飲んでます…一応…

エマ

そう

掴んだリボンを離して彼女の太ももに乗って肩に手を置いた

エマ

(……っ…)

ケイト

え…ええエマさんっ?!

エマ

うっさいっ…

エマ

これが一番手っ取り早いの

エマ

こうやってハグしたり、アンタの服を私に着せたりね

ケイト

あ…そ…そうなんですね…

ケイト

わかりました…っ…

彼女は私の腰に手を回すとぎこちなさそうに軽く抱き寄せた

エマ

………

エマ

(安心する……)

自分より一回りも大きい身体に抱きしめられホッとすると同時に下腹部の奥がキュンとする感覚がした

数日後

タッ、タッ、タッ、タッ

ケイト

ほっ…ほっ…

ケイト

お待たせしました!

エマ

ちょっとずつ学園にも慣れてきて、私とエマさんは自然と一緒に居ることが増えた

男子生徒

おい、また地球人と一緒にいるぜ?

女子生徒

どうゆう関係…?

男子生徒

アレかな?お嬢様の気まぐれみたいな

女子生徒

あははっ!なにそれ!

ケイト

……

エマ

気にしない、堂々とする

ケイト

は…はい…

ヒソヒソ話をしている生徒に見向きもせずに歩いていく彼女の後をついていく

ケイト

地球生まれってやっぱり…あまり扱いが良くないんですね…

エマ

……まぁ、地球生まれを差別する人は沢山いるわね

ケイト

………

エマ

でも、何か残せばいい

ケイト

エマ

トーナメントで上位に入る、何か功績を残す

エマ

チャンスはいくらでもあるわ

ケイト

……はい

ケイト

(…MS……)

ケイト

(お兄ちゃん……)

ケイト

……よしっ…

地球寮

アンナ

えっ?MSを?

ケイト

はい、作りませんか?

アンナ

それはいいけど…

アンナ

部品が足りないし…

ケイト

それは、コネを使いましょう

アンナ

コネ…?

ケイト

はいっ

タブレットを接続してスクリーンに計画書を映し出した

アンナ

キャンバリー株式会社…

アンナ

って…ケイトのお兄さんの…?

ケイト

はい

ケイト

お兄ちゃんに余ってる部品を譲ってもらうんです

アンナ

!そ…それは嬉しいけど…いいの?

ケイト

はいっ!

ケイト

お兄ちゃんにも許可、貰ってます

アンナ

ありがとう…

ケイト

いえ

ケイト

……エマさんに迷惑、掛けたくない…し

アンナ

エマさん…?

ケイト

なんだかんだあって一緒に居させてもらってるんですけど…

ケイト

私のせいで、エマさんが悪く言われるのは、嫌、です

ソフィア

エマさんは地球生まれへの偏見、無いんですか?

ケイト

!ソフィアさん…

テレビを見ていたソフィアさんがいつの間にかこちらに来ていて少し怪訝な顔をしながら計画書を見つめていた

ケイト

無い、と思います

ソフィア

………

アンナ

ソフィア…

ケイト

…?

ニック

やろう

ずっと黙って聞いていたニックさんが一言、そう言った

ニック

これはチャンスだ

ニック

ケイトが来てくれたおかげで俺達の出来ることが増えた

ニック

直ぐにやろう

ネイト

よっしゃ!!腕が鳴るぜ〜

ネイト

最っ高のMS作ろうぜ!

アンナ

…ええ、作りましょう

アンナ

私達のMSを

ケイト

皆さん…っ…!!

キラキラと皆、目を輝かせて声を上げた。 1人を除いて

ダニエル

どうだ?学校は

ケイト

とっても楽しいよ

端末の画面に映る兄を見て心がふっと軽くなる

ケイト

皆優しくて…

ダニエル

そっか、それなら良かった

ダニエル

そうだ、送る部品なんだけど

ダニエル

一応使えるやつを選んだ

ダニエル

プログラムもウチの会社のやつ使っていいからね

ケイト

え?いいの?

ダニエル

はははっ、当たり前だよ

ダニエル

我が社のMSのプログラムを考えたのは

ダニエル

俺と

ダニエル

「ケイト」だろ?

ケイト

……へへっ

ケイト

うん!

ダニエル

それに、我が社の宣伝にもなる

ダニエル

よろしく頼むよ

ケイト

はは…流石社長…

ケイト

抜け目ないなぁ

ダニエル

はははっ

ダニエル

完成したら一度見に行ってもいいか?

ケイト

もちろん!

ケイト

あっ、そろそろ門限だ

ダニエル

ん、

ダニエル

体調には気をつけるんだよ

ケイト

うん!お兄ちゃんもね!

ケイト

お仕事頑張って!

ダニエル

ああ、ありがとう

ピッ

ケイト

………

パチンッと頬を叩いて改めて気合を入れる

ケイト

頑張ろう

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