甘くて、でも“らしい”ゲーム配信ライフのはじまり。 目を開けると、知らない天井じゃない。 でも“ひとりじゃない”ってだけで、 胸の奥がじんわりあたたかくなる。
…いや、正確には「ひとりどころじゃない」。
朝。布団が…重い。明らかに重い。
兄者
すぐ横、低くて落ち着いた声——兄者さん。
その反対側で、肩に顎を乗せてきてるのは
おついち
ゆるい声の——おついちさん。
そして布団の足元では、なぜか…
弟者
と、無駄にテンション高めな弟者さんが揉みくちゃにしてくる。
私
兄者
兄者さんが当然のように言って、髪を指先でそっと撫でる。
おついち
おついちさんが少し笑いながら、背中をぽんぽん。
弟者
弟者さんが胸を張る。
…なんでこんなに甘やかされてるの、私。 でも嫌じゃない。 むしろ、胸がふわっとなる。
朝ごはん…の前に、今日の配信相談会
兄者
兄者さんがコーヒーを飲みながら、横目でこちらを見る。
弟者
弟者さんがケロッと言う。
私
おついちさんがにやっとして、
おついち
その言葉が、胸の奥にすとんと落ちてくる。
“普通にいる”。 それがこんなにあったかいなんて知らなかった。
ふとした瞬間、3人の空気が甘くなる
兄者さんは、ふと視線が合うたびに 小さな笑みを返してくれる。
おついちさんは、気づいたら肩や背中を軽く触れて安心させてくる。
弟者さんは、元気にじゃれてくるけど 寝起きのときだけはなぜか優しい。
そんな3人の中で、 “私の居場所”ができてしまった。 胸がきゅんとする。 でも、苦しくない。
……あの日、先生に会いに行かないって決めた日の痛みが 少しずつ薄くなっていくのを感じる。
兄者
兄者さんに腕を軽く引かれ、 3人の真ん中に座らされる。
兄者
兄者さんがぼそっと言う。
おついち
おついちさんがマグカップを渡してくる。
弟者
弟者さんがにこっと笑う。
——甘くて、うるさくて、 でも…幸せすぎる新生活の朝。 ここから始まる日常はきっと、 あの頃とは全く違う。
でも今なら言える。 “この3人と一緒に生きてみたい”って。
そう思った瞬間、 胸の奥の重さがすっとほどけていく。
昨日までずっと心にこびりついていた不安も、 先生に対する揺れた気持ちも、 全部ゆっくり時間の外側へ落ちていくような感覚。
だって—— 今、目の前にいる3人は 私を苦しませない。 無理に引き戻そうともしない。
ただ自然に、 優しく、 “ここにいればいい”って空気で包んでくれる。
兄者さんがコントローラーをセットしながら、 ふいに私を見る。 その視線は穏やかで、 まるで「もう大丈夫だろ?」って聞いてくるようだった。
おついちさんは私のマグカップの中身を見て、 なにも言わずに温かい飲み物を足してくれる。 その静かな気遣いに、胸がまた甘くなる。
弟者さんは笑って手を振りながら、 「今日も一緒にゲーム見よーぜ! ……隣にいないとなんか変な感じするからさ!」 なんて、照れもせずに言ってくる。
そんな日常が、 いつか当たり前になってしまう気がして。
その“当たり前”が、 私にとっては今までのどんな恋より ずっと優しくて、ずっと甘かった。
そして私は、 ソファの端にそっと腰を下ろしながら 小さく息を吸って、 心の中で、はっきりと呟いた。
——あぁ、ここで生きていきたい。 この3人と一緒に、これからの日々を積み重ねたい。 そう思える朝が来るなんて、 あの頃の自分には想像もできなかった。
でも今は、 やっと言える。 これは禁断なんかじゃない。 “私のこれから”なんだ、って。
3人が配信準備を整え、 部屋には電子音と笑い声が溶け合っていく。 私はその少し外側、 “映らない位置のソファ”にそっと座る。
でも、心はちゃんとこの輪の中に入っていた。 兄者さんがヘッドセットをつけながら、 視線だけで「大丈夫か?」と尋ねてくる。
その何も言わない優しさが、 胸の奥にじんわり広がる。
おついちさんはマイクの音量を調整して、 すれ違う瞬間に小さく 「無理すんなよ」と囁く。
声が低くて、 その空気が甘くて、 思わず息が止まりそうになる。
弟者は画面に向かいながら、 「もも、この前のボスのときさ〜」 と楽しそうに話しかけてくる。
私はただ頷くだけなのに、 弟者さんは嬉しそうに笑う。
そして配信が始まる
弟者
兄者
おついち
兄者
兄者さんの落ち着いた声。
弟者
弟者さんの元気な声。
おついち
おついちさんのゆるい声。
コメント欄が一気に流れ始める。 だけど、 画面の外の私は、 3人のほんの少し後ろで息を潜めて見守るだけ。
それでも、 3人の気配はずっと私に向いていた。 ときどき兄者さんがちらっとこっちを見て、 ほんの一瞬、目が合う。
おついちさんは笑いながら、 配信のノリに紛れて 私の足元にそっとブランケットを押し寄せてくる。
弟者さんは楽しそうに喋ってるのに、 椅子を少しだけ私のほうへ向けてる。
そんな小さな優しさの積み重ねが、 胸を満たしていく。
配信の盛り上がりを横で聞いていると、 ふと気づく。
心の奥の痛みが、 ゆっくりゆっくり癒えていってる。
あの日の涙も、 先生への揺れも、 迷いも不安も、 全部この部屋の温度で溶けていく。
ここには、 私を否定する言葉なんてひとつもない。 ここには、 私を拒まない優しさがある。
そしてなにより—— この3人が作る日常の中で、 私ははじめて、自分の居場所を見つけた。
兄者
弟者
兄者
おついち
おついちさんの締めの声が部屋に響き、 配信画面がスッと暗くなる。
その瞬間、 3人の肩から一気に“配信者の緊張”が抜けていくのがわかった。
おついちさんがヘッドセットを外しながら、 ふうっと深い息をつく。
弟者
弟者さんはストレッチしながら、 無邪気に笑っている。
兄者さんは椅子をくるりと回して、 静かに私の方を見た。
その目が、 さっきまでよりずっと柔らかい。
そして――
兄者
と、軽く手招きした。
配信スペースの真ん中に呼ばれて歩いていくと、 弟者さんが真っ先に寄ってくる。
弟者
と子どもみたいな笑顔で話しながら、 なぜか距離が近い。
兄者さんはその姿を見て苦笑して、
兄者
と言いながら、 さりげなく私の肩にブランケットを直してくれた。
おついちさんは横にきて、
おついち
と小さく言って、 冷たい飲み物をそっと手に渡してくれる。
その手が少し触れる。 一瞬で心臓が跳ねる。 ……こんなに自然で、 こんなに優しく包まれる場所が 私にあるなんて、今でも信じられない。
兄者さんが私を見る。 真っ直ぐな瞳。
弟者
おついち
弟者
弟者さんとおついちさんも次々に問いかけてくる。
3人が“ただの優しさ”を向けてくるだけで、 胸の奥がふわっと甘く揺れる。
私は小さく笑いながら答えた。
私
そう言うと、 兄者さんがほんの少しだけ目を細めた。
おついちさんは口元で笑って
おついち
と低く言い、
弟者さんは嬉しさを隠せない声で
弟者
と喜ぶ。
その反応ひとつひとつが、 胸の奥に温かい灯りみたいに残る。
配信という賑やかな世界の裏で、 こうして静かに私に向けられる優しさの時間。 それが積み重なるたびに思う。 ――ああ、私はもう戻れない。
でも、戻らなくていい。 先生への揺れも、 過去の不安も、 全部ここでゆっくり癒えていく。 だって今、 この瞬間、 私は確かに思っていた。
“私は、ここで生きたい。” “この3人と一緒に、毎日を重ねたい。” そう心がはっきりと答えていた。
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