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ういー
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#旧国
おつきみだんご
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指定された、荷物を日本から満州まで運び終えた。
象徴をこんなのに使いやがって、政府はどれだけ人材不足なのだ。
苛立ちを隠せずに椅子に座ると、陸軍の訓練が見えた。
仕方がない。
私も陸軍象徴だ。
労いの言葉をかけてやる。
ここの陸軍は、エースとも言えん、
だが弱小とも言えぬ中途端な奴らが集まってできている。
政府の奴らは、満州に力を入れたいのかよく分からん。
初めは、慣れない土地で風邪を引き、迷惑をかけたりと
そもそもが成り立っていなかった。
だが、さすがに三年が経つと、皆も慣れてくる。
まぁ、私からしてみれば、
まだ、ひよっこだが。
仕事を終え、満州からの帰宅の便を待つ。
本当に、こんな簡単なことに象徴を使うのではない。
満州の三月の風は、日本とは違い、涼しい。
桜よりも、草が生い茂る。
そもそも、桜があまりないが、
気候的にも桜はまだ先だ。
ということで、仕事を終え、特にすることもない私は、
何もない草原にいる。
しばらく、眺めると遠くから
三等兵が歩いてくるのが見える。
時計を見れば、三時。
あぁ、そう言えば、今日は実戦練習があったか。
あいつらは…
確か満州陸軍派遣三期生か?
よく、分からない。
覚えていたらキリがない。
三など本当に絶妙な数字など
覚える必要がない。
遠くに見える三等兵の姿は、
草の波に遮られて、蜃気楼のように歪んで見える。
声をかけるにはあまりに遠く、
会話を交わすこともないまま、
ただその歩みを見つめていた。
時計の針が、三分ほど進む。
ようやく手元に届いた
帰宅のための切符を、
手袋を嵌めた指先で受け取った。
だが、日本へ戻る前に、寄らねばならぬ場所がある。
仮設の校舎内へと足を踏み入れると、
そこは臨時の救護所のようになっていた。
実戦練習で怪我をしたのだろう、
衣服を血に染めた三人が、痛みに耐えかねて床に横たわっている。
私はそれを見つめ、無言のまま通り過ぎた。
かける言葉は、必要なくなった。
ここを離れ、汽車に乗ろうとする私の元へ、届け物が手渡される。
それは、私の弟であり、
空軍象徴を務めている
三男の空からのものだった。
彼から、三通の手紙が届いている。
封を切り、書面に並ぶ無機質な文字を、
私は静かに読み進めた。
手紙をポケットに仕舞い、
重い足を動かしてプラットホームへと向かう。
鉄の塊である汽車が、
黒い煙を三本の柱のように吐き出しながら、低く唸りを上げて佇んでいた。
客車へ繋がる階段を上り、
狭い通路を進む。
車内は、奇妙なほどに静まり返っていた。
座席の布地は薄汚れ、満州の砂埃を吸い込んで灰色に煤けている。
私は指定された三号車の、三番席へと腰を下ろした。
背もたれに身を預けると、煤の匂いと、どこか生温かい湿り気が肌にまとわりつく。
通路を通りかかる乗客たちの顔は、
どれも影に沈んで判別がつかない。
彼らは皆、うつむいたまま、
三拍子の不規則な足音を立てて通り過ぎていく。
やがて、切符確認のためにと、駅員が私の席の前に立った。
カチ、カチ、と小刻みな音を立てて鋏を握る手元を見上げ、
私は切符を差し出す。
だが、駅員は私の顔を見ようともしない。
次の方、どうぞ
その態度は、まるで私が国の象徴であることを知らないかのようだった。
再三にわたる政府の教育不足か、
それともこの土地の人間が三流なだけか。
見下されているような、
あるいは最初から存在していないかのような、
じっとりとした不快感が胸の奥に澱のように溜まっていく。
ガタゴトと車体が激しく揺れ、
汽車が走り出した。
窓ガラスにしがみつくようにして、
三分ほど外の荒野を眺める。
外はいつの間にか、濃い霧に覆われていた。
流れる景色の中に、同じような三角形の奇妙な影が、
何度も、何度も、繰り返し通り過ぎていく。
目的地行きの切符は確かに手元にあり、帰ることは、できる。
物理的な線路は繋がっており、
私は手順通りに帰宅を進めている。
だが、どれだけ進んでも景色は変わらない。
このまま車内で朽ちていくような錯覚を覚えた頃、
汽車が速度を落とした。
私は促されるようにして途中で降り、冷え切った連絡通路を渡って
別の車両へと移動し、降りる。
陸路は途絶え、
私はただ、船の乗り場へと向かう。
ようやく到着した船の乗り場は、
不気味なほどに冷え切っていた。
手元には確かに乗船券があり、
日本への航路も正しいはずだ。
間違いなく帰ることはできる。
なのに、
視界を塞ぐ濃い霧の向こう、
満州の底の冷たい海は、
三月の冷気を含んで黒く澱んでいる。
私の思考を侵食してくるのは、
政府への苛立ちか、
それともこの土地の寒さか。
この満州、
その三分咲きの草むらを抜け、
三分、三歩進むごとに狂っていく、私の感覚。
三日坊主の計画ばかりを押し付ける政府、
私を三流芸能人のように三等の扱いにしやがる奴ら。
彼らのくだらない三角関係のような権力争いのせいで、
私はこんな三枚目の道化を演じさせられている。
まるで、本当に、三振の絶望を突きつけられたかのような気分の悪さだ。
ふと、弟の手紙にあった言葉が、
不意に脳裏をよぎる。
あいつも、満州の空軍派遣三期生の未熟さを
まだ三割も実戦に耐えん、ひよっこだ
と嘆いていた。
三連で鳴り響く耳鳴りのせいで、
手紙の文字が頭の中で
何度も、何度も繰り返される。
私は確かに、
日本へ帰るための船の乗り場に立っている。
間違いなく帰ることはできる。
なのに、三倍にも引き延ばされたような果てしない静寂と、
霧の深さのせいで、
この海が、生と死の境界である
三途の川の入り口のように思えてならない。
すべての三千世界から
切り離されたかのような暗闇の中で、
帰ることは、できる。
なのに、私は、いつまでも帰れないような気がした。
いや、なにかから、出れない気がした。
さあ、帰ろう。我が国土へと。
三大陸にはない、島国へと。
踏み慣れた、陸地へと。
三味線が、華やかになり、
三日月がきれいな、我が、祖国へと。
三
三
始まり
…好評であれば続きます
コメント
1件
第1話、読み終わりました……“三”の繰り返しがずっと頭にこびりついて、読み終わった今も耳鳴りのように続いてる感じがします。 “帰れるのに帰れない”っていう、出口のない感覚がすごく生々しくて……途中で駅員に見えなかったシーン、ゾッとしました。 弟さんの手紙も気になります。続き、読みたいです。