テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
紫煙
すち
LAN
すち
紫煙
紫煙
紫煙
はい、と。 軽い声で差し出されたのは、大きな花束……?
状況がわからなくて、一瞬だけ混乱する。 えーと、これは……? 花を差し出してきた恋人ーーらんらんを見るも、少し照れたようにはにかむのみだ。
ええと、確か今日はらんらんは、シクフォニの仕事で外での打ち合わせと言っていたような。 それから深夜に帰ってきたと思ったら、花束……?
んん? ますます状況がわからないんですけども。 この花束はいったい……何かシクフォニ宛にもらったものとか? お祝いでもあった?
不思議に思って、大きな薔薇の花束を眺めてみる。 うむ、綺麗だ。普通に綺麗な花束だよね……? あ、よく見ると、花束にカードが挟まっているようだ。
すち
『俺たちの記念日に』 それだけが書かれたカードだったが、俺にはそれだけで十分。 ばっと時計を見やると、予想通り日付を越えていた。だから、紛れもなく『今日』は。
すち
そのことに気がついてしまえば、すべて納得がいった。 こんな深夜なのは、日付を越えたタイミングで渡すため。 この花束は、シクフォニではなく、プライベートのお祝いで。 つまり、宛先は……俺?
すち
まさか自分宛てのものだとは思っていなくて、驚いてしまった。 いや、急だったことにも驚いたし、花束が大きいのにも驚いたけど。うぅん驚いてばっかりだな俺。
とにかく、自分のためだけにお花をもらうなんて、久々だ。 だから驚いたのもそうだけど、……うん、とても嬉しい。 なんだか急に、このバラがとても美しく見えてくる。 描きたいな、なんて思うくらいに。
思わずその抱えるほどの花束に手を伸ばすと、らんらんも俺にそれを手渡しつつ微笑んでくれる。
LAN
と、後半はへにょりと眉を下げてしまったけれど。 でも、そんなしおらしい姿も、なんだか子犬のようにかわいらしく見えてくる。
すち
自分で発した声の明るさ、甘さに、自分でも驚いた。 こんなに喜びにあふれたすちの声、あんまり聞くことないんじゃないだろうか。
でも、そんな声にもなるくらい、本心で思っていることだ。 お花が嬉しいことも、寂しく思ってないことも。
確かに、らんらんはいつも仕事熱心だ。何時間もパソコンとにらめっこしていることなんてざらにある。 その後に会議、打ち合わせと続くこだって多い。 だから、恋人としての2人だけの時間は、正直少ない。
でも、俺はそこに不満を抱いたことなんて一度もなかった。 なぜなら、俺がらんらんと付き合うって決めた理由は、その仕事熱心な姿が好きだったからだ。
いつもいつもシクフォニのために動いて、ずっとずっとリスナーさんのために考えて。 その、真剣な顔が好きだから。それを俺が支えたくて。 まぁ、家でご飯を作ったりとか、それくらいしかできないけど。
だから、らんらんの時間の多くが仕事に向かっていることに、不満なんてないのだ。 リーダーとメンバーとして一緒にいる時間もあるし、俺が作った料理もとても美味しそうに食べてくれるし、なにより、俺の大好きならんらんの真剣な顔を、一番近くで見られるから。 それだけで、十分すぎるほどの幸せ。
でも、どうやららんらんは、恋人としての時間が少ないことを、少しばかり気にしてくれていたらしい。 だからこうして、記念日を大切にしてくれるし、俺への気持ちを形で示してくれるのだろう。
気にしなくていいのに、と思う。 ……でも正直、それ以上に、とても嬉しい。 グループだけじゃなく、恋人としての俺の気持ちも考えて、俺とのことも大切にしてくれているってわかるから。 思わず笑みがこぼれる。
すち
多分、日付を超えたばかりなのは、本当に遅くまで、今の今まで仕事をしていたからなのだろう。 らんらんの意外とロマンチストな恋愛観なら、一緒にお酒でも飲みながらこの日を迎えたりだとか、したがりそうだから。 それをしないのは、忙しかった証拠だ。
だから、第一に優先されるのは、やっぱり仕事。グループのためになることは何でもやってくれるし、遅くまで動いてくれる。 でも同時に、俺のことも大切にしたいと、思ってくれていた。 その気持ちも叶えたくて、この花束という形に落ち着いたのだろう。
うん、それでこそらんらんだ。 俺たちのリーダーにして、俺だけの恋人。 俺が大好きになった理由が、この花にぜんぶ詰まっている。
……あぁ、だからこのバラは、こんなに綺麗なんだ。 同じ植物でも、他のバラとは全然違うように感じる。たくさんのバラの中でも、この花束だけを見つけることだってできそうだ。
嬉しすぎて、口角が上がったまま下りてこない。 今日の晩ご飯は、らんらんの好きなものをたくさん作ろう。 それで、この気持ちも、嬉しさも、全部伝えるんだ。
それほどの愛しさを腕に抱えて、俺たちは笑いあった。 本当に、とても幸せな記念日だ。
紫煙
紫煙
紫煙
紫煙