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あけおめです!私このお話大好きで続き出るの楽しみにしてました♡今年どんな新しい作品が出るのか楽しみです♪
明けましておめでとうございます! ストーリーも文章も綺麗だし面白いし尊敬してます! 続きも楽しみです😽💗
あけましておめでとうございます! 今年も作品楽しみにしてます💖
あの日から1週間が経っていた
特別なことは
何も起きていない
夜の巡回も
書類仕事も
全ていつも通りだった
それなのに○○はどこか落ち着かずにいた
仙台駅の前
休日の昼下がり
人の流れを避けるように立ちながら
スマホを確認する
八雲┊︎仙台にちゃくりーく!
表示されたメッセージに○○は息を吐いた
次の瞬間
聞き覚えのある声
振り向くよりも先に肩を掴まれる
八雲
八雲
間髪要らず
八雲
○○は無表情のまま答える
〇〇
〇〇
八雲千奈
東京から来た友人
ラフな服装に
変わらない距離感
ふわふわの見た目に反して
八雲
言葉はふわふわじゃない
〇〇
八雲
八雲は○○の顔を覗いた
八雲
と言ってケタケタ笑った
〇〇
即答
八雲
八雲
八雲は納得したように頷く
八雲
○○は視線を逸らす
〇〇
八雲
八雲も呆れたように笑う
八雲
八雲
と言って鬱陶しく目の前にハートのポーズをする
〇〇
○○は首を傾げ歩き始めた
人混みの中
肩が軽くぶつかる距離
八雲
八雲は唐突に言う
八雲
〇〇
八雲
即断
八雲
○○は苦笑する
こんなふうに遠慮なく踏み込んでくるのは
久しぶりだった
〇〇
八雲
八雲
にっと笑って続ける
八雲
○○は返さない
ただ胸の奥が少しだけ緩んだ
警察でもなく
誰かを指導する立場でもなく
こうして並んでいる時だけ
○○は
何者でもない自分に戻れた気がした
八雲
八雲
〇〇
そう言って八雲は○○の腕を引く
夏の町をふたりで歩き出す
○○は少しだけ
息がしやすくなった
○○達は駅から少し離れた
カフェに足を踏み入れた
昼の光が差し込んで
店内は静かだった
千奈はメニューを閉じると
真正面から○○を見る
八雲
単刀直入
八雲
○○は視線を落とす
〇〇
○○は一瞬、視線を落とす
カップに注がれた水を見つめてから
ゆっくり口を開いた
〇〇
名前は出さない
八雲
〇〇
それだけで八雲は少しだけ察していた
八雲
○○は僅かに頷く
〇〇
八雲
間。
八雲
〇〇
八雲
○○は少しだけ間を置いて答える
〇〇
その瞬間八雲の指はピクリと震える
八雲
八雲は声を潜めた
八雲
○○は静かに頷く
八雲は分かりやすく頭を抱えた
八雲
八雲
正論だった
○○はすぐに答える
〇〇
キッパリと
〇〇
八雲を見る目は真剣だった
〇〇
〇〇
〇〇
八雲は○○の顔を見てからため息を着く
八雲
八雲
少しだけ声を落とす
八雲
八雲
○○の指がカップの取っ手を掴む
一瞬
考える間があった
それから静かに答える
〇〇
〇〇
断言に近い声
八雲は言葉を失う
八雲
〇〇
○○は視線を外す
〇〇
〇〇
少し笑う
〇〇
八雲は何も言わなくなった
カフェのスプーンが
遠くでカップにあたる声がする
八雲
八雲
八雲は困ったように笑った
○○は答えない
八雲
八雲
八雲
そうって八雲はカフェラテを飲んだ
○○はその言葉を聞いて目を閉じた
カップの中のコーヒーは
既に冷めきっていた
家に帰ると
部屋は静まり返っていた
靴を脱ぎ
灯りをつける
○○はソファに腰を下ろし
しばらくそのまま動かなかった
考えないようにしても
考えてしまう
二口の顔が
ふと浮かぶ
「その子昔の○○に似てるね」
八雲の言葉だった
〇〇
○○は昔の自分を思い出した
いわゆる一軍
派手で
無茶で
夜を面白がっていた頃
補導されたこともある
名前を書いたことも、何度も
でもそれは“未成年の過ち”として
成人になればさっぱり消える
記録も
履歴も
だから警察になることは簡単だった
〇〇
〇〇
小さく、呟く
親は真面目だった
規則正しく
常識を重んじて
間違いを許さない人達
結果
私は勘当された
話し合いも
和解もない
ただ距離が生まれただけ
兄だけは違った
14も離れた兄は
同じく真面目で
不器用な人だった
今でも関わりがある
金銭的な援助も
生活の後ろ盾も
全て兄が支えてくれていた
それが無ければ
今の私はいない
だから○○は一人で生きてきた
誰かに甘えることも
頼ることも
自然と減っていった
だから目が離せない
彼は、自分に似ているから
不遜で、言葉が荒くて
助けを拒むところも
だから強くは言えない
正論を振りかざせば簡単に突き放せる
でも
見捨てることも出来ない
〇〇
○○は天井を見つめる
あの時
自分を広いあげてくれたのは誰だったのか
誰かが
“大人になるまでの時間”を待っててくれたから
今の私がいる
その事実を忘れることはできない
だから二口をただの対象として切り捨てられない
それは優しさなのか
それとも
甘えなのか
答えは出ない
○○は目を閉じる
静かな部屋で
過去と現在がゆっくり重なっていく
この感情が仕事以上のものなのか
それだけはまだ認めないまま
夜は静かに更けていった
夏休みが終わろうとしていた
夜の署内は静かで
蛍光灯の白い光だけが
机の上の書類を照らしている
○○は黙々と書類を整理していた
指先だけが動き
頭は半分別のところにある
この夏は長かった
何気なく終わってくれればいい
そんな淡い期待が
胸の奥に残っていた
ーーその時
電話がなる
静かな空間に
やけに大きな音
〇〇
○○は一瞬手を止めてから
受話器を取った
〇〇
と言ったところで声が入ってきた
嫌な予感が
はっきりと形になる
伊達工
生徒
複数名が潰れているという情報だった
〇〇
淡々と聞き返す声は
既に仕事のそれだった
電話を切ると
○○は深くため息を着く
そして、頭を抱える
〇〇
最悪の組み合わせだった
現場は
夜の公園だった
騒然とした現場
吐瀉物の匂い
泣き出す生徒
救急隊のサイレンが
遠くで鳴っている
伊達工の生徒たちが
地面に座り込んでいた
○○の視線が
1人の影を捉える
二口堅治
立っている
酔ってはない
けれど、その場にいた
〇〇
○○は何も言わずに歩み寄る
二口
二口
早口で
二口
二口
〇〇
○○はキッパリと遮った
二口の言葉に耳を貸さない
今はそれどころじゃない
倒れている生徒
状況確認
救急への引き継ぎ
やることが多すぎた
それでも頭の奥では
二口の存在がチラつく
ーーいた。という事実
○○は歯を食いしばる
この夏何も起きなかったはずなのに
また
伊達工
また、彼の名前が重なる
〇〇
○○は表情を変えずに淡々と指示をする
私情は持ち込まない
持ち込めない
そう決めたはずなのに
胸の奥で嫌な音がした。