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雪の降るクリスマスに冷たいキスを

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雪の降るクリスマスに冷たいキスを

1 - 雪の降るクリスマスに冷たいキスを

2021年11月05日

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トモユキ

クリスマスに雪が降るとさ

トモユキ

奇跡が起きるって言われてるんだよね

彼はそう言って、 クリスマスの夜空を見上げた。

残念ながらその時は、 雪が降ることはなかった。

アオイ

ここら辺は、雪見ること自体が珍しいしね

トモユキ

だから、なんだよ

アオイ

だからって……?

トモユキ

雪が珍しくて

トモユキ

それがクリスマスと重なるなんてことが奇跡なんだよ

アオイ

そうなると

アオイ

寒い地方の人とか毎年奇跡ってことじゃん?

トモユキ

あーもう、アオイはなんでそうも現実的なんだよ!

アオイ

だって、トモユキが怒ってるの見ると楽しいから

アオイ

つい……ね

トモユキ

そーですかーへー

ふてくされたほっぺたを指でつつくと、 トモユキは苦笑いをした。

トモユキ

行こうか

アオイ

そうだね

この後 私はトモユキとどこに行ったのか 覚えていない。

でも、トモユキの腕の中で 幸せを感じたことは覚えている。

そして

私達は永遠に会えなくなった

2年前の12月25日

雪の舞う

奇跡のクリスマスだった

彼の手の温もりと

雪の舞う夜空

その映像が忘れられない。

そして、クリスマスの今日。

私は雪の降る夜空の下

彼と永遠に別れることになった場所へと 足を運んだ

遠くに見える風力発電の羽が ゆっくりと回っている。

私は2年前に 彼と過ごしていた時間を 思い出していた。

あの時トモユキは、 無理を言ってクリスマスに会いたがる 私のお願いを しぶしぶ受け入れた。

平日…… しかも明日は仕事だという日 それに彼には妻子がいて……

そんな時に 夜に会いたがるのは ワガママだったと思う。

だけど、会いたかったのだ。

特別な日だし渡したい物があったから、 どうしても私と過ごしてほしかった。

そして彼は、 この場所を指定した。

人気がないけど、 夜景がキレイな場所だ。

星を観察するのが趣味の彼は、 山にある 人のいない場所を多く知っていた。

トモユキ

あまり遠くに行くなよ

トモユキ

柵がない場所もあるんだから

そう言って、 私の手を取ってくれた。

雪の降る夜だったから、 星は見えなかったけれど、 代わりに地上に広がる街の明かりを指さして

トモユキ

星みたいだろ

と、言って笑った。

本当に楽しい時間だった。

だけどその後

別れることになるなんて思いもしなかった。

今、目の前にある景色を見ながら祈る。

アオイ

奇跡の夜というのなら

アオイ

トモユキに会わせてください……

目を閉じて祈った瞬間。

トモユキ

……アオイ?

トモユキの声が聞こえた。

振り返ると、確かに彼がいた。

2年前と変わらない格好で 私の後ろに。

私は何も言わず、 彼の胸に飛び込んだ。

彼の顔を見上げ、微笑む。

恐る恐る彼の指が私の顔を触り、 感触があるのを確かめてから、 私を抱きしめた。

トモユキ

アオイだ……本当にアオイだ!

アオイ

そうだよ……トモユキ……

アオイ

会えたんだよ、私達

トモユキ

なんで会えたんだ……

アオイ

だって……

アオイ

今日は奇跡のクリスマスだから

トモユキ

なんで……なんで……

アオイ

ねえ……もっと強く抱きしめてよ

トモユキに会えたことが うれしかった。

だって、死んでしまったのだから。

だからもう、 永遠に会えないと思っていた。

アオイ

あの時、私が……

そう言いかけた私の体を引き離して、 トモユキは私を見つめる。

彼の瞳から涙がこぼれる。

トモユキ

もう2度と会えないと思ってた……

アオイ

私もそう思ってたんだ

トモユキ

奇跡って……起きるんだな

アオイ

うん……それに、願ったんだ

トモユキ

……サンタクロースにか?

少し笑う彼を強く抱きしめる。

アオイ

うん、サンタに願ったから叶ったのかも

トモユキ

そっか……

トモユキ

どんなことを願ったんだ?

アオイ

会いたいって願った

トモユキ

それだけ?

アオイ

うん、私は別の願いだったけどね

アオイ

それを願ったのは、多分……

アオイ

この子じゃないかな

私はポケットにある1枚の写真を渡した。

2年前の日付のエコー写真。

2年前のあの日 これを渡した後

トモユキは 私を ここから突き落とした。

私は彼を強く抱きしめる。

トモユキ

痛い……離してくれ……

骨の折れる音が 辺りに響く。

アオイ

ずるいよ、トモユキ

アオイ

逃げないでよ

トモユキ

ごめん……ごめんなさい……

トモユキ

でも俺はお前を愛して……

アオイ

……

アオイ

うそつき

彼を抱きしめたまま、 私は柵の向こう側へと身を投げた。

2年前 トモユキに 突き落とされたこの場所。

トモユキ

許してくれ!許してくれ!

叫び声をあげる彼の口を、 私の唇でふさいだ。

そして、地面に激突する瞬間

こう、つぶやいた。

アオイ

愛してる……

彼の頭が地面の岩に激突した瞬間 笑みがこぼれた。

あの世で ずっとトモユキと一緒にいられる。

それがうれしくて、たまらない。

動かなくなったトモユキに話しかけた。

アオイ

私の願ったこと、教えてあげるね

アオイ

トモユキを私の手で殺せますように……だよ

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