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夜になった。

君は、ぐっすり眠っている。

寝顔には、苦しさから解放された、安心のような表情があった。

莉犬は、虐待されていたんだ。

生活の自由を奪われ、抵抗すれば殴られていた。

僕もそうだった。

るぅと(幼少期)

ねぇ おかあさん! おとうさん!

るぅと(幼少期)

ぼく、おかあさんとおとうさんのえ、かいたんだよぉ!

母親

あら! 上手に描けているじゃない!

父親

ありがとな! るぅと!

母親

この絵は、大事にお母さんとお父さんが持ってるね!

父親

ああ、そうしよう!

るぅと(幼少期)

やったぁ!

るぅと(幼少期)

おかあさん、おとうさん、だいすき!

僕は、小さい頃は、たくさん愛されていた。

幸せだった。

でも、神様はその幸せが永遠に続くことを、許してはくれなかったんだ。

神様が、その幸せを、壊したんだ。

父親

るぅと! 横断歩道を渡るときは、右と左を確認してから渡るんだぞ!

るぅと(幼少期)

うん!

るぅと(幼少期)

みぎと… ひだりをみて…

るぅと(幼少期)

くるま、きてないよ!

るぅと(幼少期)

だから、だいじょうぶだよね!

僕は、あの日、横断歩道を渡ろうとしていた。

横から猛スピードで迫ってくる車には気付かずに————。

父親

るぅと! 危ない!

キキーッ!

ドン!

通行人

きゃあっ! 人が轢かれたわ!

通行人

早く、救急車を!

るぅと(幼少期)

おとう… さん…

るぅと(幼少期)

いた… い… よ…

お父さんは、僕を突き飛ばして、車に轢かれそうだった僕を庇った。

でも、僕は突き飛ばされた後、道路に頭を強打してしまった。

時間が経てば経つほど、意識が薄れていく。

お父さんは、僕にしか聞こえない声で、こう言った。

最後の力を振り絞って、こう言った。

父親

るぅ… と…

父親

いき… ろ…

父親

わたしの… ぶん… まで… い… きて… くれ…

父親

たのん… だ… ぞ…

お父さんがそう言った後、意識が途切れた。

気付いたら、僕は病院のベッドに寝かされていた。

隣では、お母さんが、突っ伏して泣いていた。

るぅと(幼少期)

おかあさん

僕がお母さんを呼ぶと、お母さんは、すぐに僕を抱きしめた。

母親

るぅとっ!

るぅと(幼少期)

おとうさんは?

母親

あの人は…

母親

生きれるか、分からないって…

当時の僕には、その言葉の意味が理解できなかった。

るぅと(幼少期)

その時の僕は、ただ首をかしげるだけだった。

母親

あなたっ!

母親

お願い! 帰ってきて!

母親

あなたぁぁぁぁぁぁぁぁ!

お母さんは、大声で泣きじゃくっていた。

るぅと(幼少期)

ねぇ おばあちゃん

るぅと(幼少期)

なんでおとうさんはいないの?

僕は、お婆ちゃんにそう聞いた。

祖母

…るぅと 落ち着いて聞いてくれるかい?

るぅと(幼少期)

うん

祖母

お父さんは…

もう、死んだんだよ

るぅと(幼少期)

祖母

…やっぱり、まだるぅとには分からないか…

るぅと(幼少期)

おかあさん

母親

るぅと(幼少期)

ねぇねぇ おかあさん

母親

るぅと(幼少期)

おかあさんってば!

バンッ!

母親

うるっさいわね!

るぅと(幼少期)

おかあさん…?

母親

さっきからうるさいのよ!

母親

耳障りよ!

るぅと(幼少期)

…?

母親

大体あんたのせいで…あの人はっ

母親

あんたのせいであの人は死んだのよっ!

母親

お前のせいでっ! お前のせいでっ!

バシン!

ボカッ!

るぅと(幼少期)

いたいっ!

るぅと(幼少期)

おかあさんっ… やめてっ!

母親

うるさい!

その日から、話しかければ、殴られたり、蹴られたり。

虐待が始まったんだ。

成長すると、言葉の意味をよく理解できるようになってくる。

それに合わせて、暴力だけだったのが、暴言まで吐かれるようになってきた。

精神に害するほど、嫌な言葉を言われた。

母親

あんたなんか産まなけりゃよかったわ!

母親

本当にダメな子!

そんなことは、何回も言われてきた。

僕はいつのまにか、笑わなくなった。

正確にいうと、笑い方を忘れたんだ。

もしかしたら、お父さんを殺したのは、僕だったのかもしれない。

でも、僕はちゃんと青信号を渡っていたんだ。

右と左をちゃんと確認して。

でも、渡り始めた頃に、信号無視をした車が突っ込んできた。

それに、まだ小さかったから、視界も今みたいに広くはなかったんだ。

だから、猛スピードで迫ってくる車に気付くことができなかった。

もしかしたら、あの時の僕を、お父さんは恨んでいるかもしれない。

母親

死ね

母親

消えろ

母親

邪魔だ

るぅと

っ!

そんなことは、何度も、飽きるほど言われた。

何度も死にたいなんて思った。

この世界から跡形もなく消えてしまいたい。

でも、そう思うたびに、あの時の言葉が蘇ってくる。

父親

るぅ… と…

父親

いき… ろ…

父親

わたしの… ぶん… まで… い… きて… くれ…

父親

た…のん… だ… ぞ…

お父さんの言葉が、蘇ってくるんだ。

生きなきゃ。

その言葉を思い出すたびに、そう思う。

でも、どうしても耐え切れなくなった。

そんな時があった。

そんな時に、君に出会ったんだ。

教師

今日は転校生が来る

教師

入ってこい

莉犬

…莉犬です

莉犬

…よろしくお願いします

教師

席はるぅとの隣だ

莉犬

…はい

莉犬

…よろしくね

君は、笑って僕にそう言った。

でも、目は笑っていなかったんだ。

るぅと

…よろしく

なぜか、親近感が湧いた。

転校生だから、普通は興味を持って話しかける人が一人は居るはずだ。

それなのに、なぜか君に話しかけようとする人は、一人も居なかった。

昼休みになった。

僕は、自分でなんとか作った弁当箱を開けた。

お母さんは、弁当を作ってはくれない。

だから、自分で作るしか無かった。

僕はふと、隣から視線を感じた。

君の方を見ると、僕の弁当箱をじっと見つめていた。

君は、弁当箱を持っていなかったらしい。

君はただ、僕の弁当箱を見つめるだけだった。

るぅと

…食べる?

僕はそう言った。

君は、驚いたような目で、僕を見た。

莉犬

…いいの?

るぅと

…うん

僕はそういうと、君は、なぜか泣き出した。

莉犬

…ぁりがとっ 俺っ、こんなに優しくしてもらったのっ 初めてでっ…

るぅと

…そっか

その後は、お互いに、無言で弁当を食べた。

弁当の味は、なぜか、いつもとは違う味だった気がした。

僕は、放課後、いつものように屋上に出た。

てっ…

誰かの声が聞こえた。

め… てっ…

やめてっ…

やめてよっ!

抵抗するような声が、屋上に響き渡っていた。

僕は、声が聞こえた方を見た。

————君が、殴られていた。

蹴られていた。

暴言を吐かれていた。

いじめっ子

今日はこれぐらいにしてやる

いじめっ子

次からは手加減しないからな

"アイツ"はそう言って、その場から去っていった。

るぅと

…莉犬っ!

僕はとっさに君に駆け寄った。

莉犬

…るぅ と… くん

莉犬

ゲホッ ゴホッ

君は、苦しそうに咳をした。

僕は、君の背中をさすってやった。

るぅと

落ち着いた?

莉犬

…うん

莉犬

るぅとくん

莉犬

俺さ

虐待されてるんだ

るぅと

君の言葉が、僕の胸に深く刺さった。

るぅと

…僕もだよ

莉犬

…!

るぅと

僕も、莉犬と同じ

るぅと

虐待されてるんだ
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