コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
あれから俺はバイト初日ですら使わなかったメモ帳を 制服であるエプロンをポケットに入れた。 耳の聞こえない彼とどうにかコミュニケーションが 取りたかった。
三日後、心待ちにしていた彼が来た。 浮ついた気持ちを隠し接客モードに切り替える。
今日の彼は俯いておらず、不意に目が合うと会釈をされた。 どうやらこの前のことを覚えていてくれたみたい。
前回同様メニューを指差して注文していき、 何も出来ないままお会計まで進んでしまって結局用意した メモ帳の出番はなかった。
でもそれから彼は週に何度かお店に足を運んでくれるように なり、俺のレジに来たら毎回ペコッと頭を下げ、 会釈をしてくれるようになった。
前回なにも出来ずに後悔していたが、ついに彼が来店して 五回目を過ぎた頃、
やっとの思いで自分の名前を書いた紙を渡した。
彼は「僕に?」とでも言いたげな表情で困惑していたので 頷くと紙を受け取ってくれた。
次の日彼は紙を渡して来た。
流 星 .
と書かれた紙を。
それから流星くんと手紙というには短すぎるメールのような 手紙のやり取りが始まった。
大 吾 .
流 星 .
大 吾 .
流 星 .
最初は自己紹介みたいで、ぎこちなさが残ってた。
けど最近はこんなのも混ざってて、
流 星 .
いつもだったら指差しで注文する彼はこの紙を渡して 俺の反応にニヤニヤしてた。
こんなの書かなくても頼むものはいつも同じだったから もう覚えてるよ。
それから俺はついに連絡先を書いた紙を渡した。 流星くんともっと仲良くなりたいと思ったから。