○○
無一郎
○○
私が自販機と見つめ合っていると 背後に女子生徒が現れた。
無一郎の千円札に釣られたか 千円札の持ち主に釣られたか。
女子生徒
後者だったようだ。
無一郎
最っっっ低だなお前。
女子生徒
慌てて戻っていく女子生徒を 無表情で見届ける彼。
その顔にさっきのような 有一郎の面影はなかった。
○○
無一郎
裏声を出してそう言えば 無一郎は自販機に千円札を入れ 先に買っていいよと促した。
レディーファースト万歳。
○○
まあダメなことはないか、と 言い直して二択で迷っていると 後ろから手が伸びてきた。
もちろん腕が自販機についてるくらいには顔が近くて。
無一郎
なんて、私を挟むようにして 自販機に手をつく無一郎。
何この新しい壁ドン。
○○
遠慮しとく、とミルクティーのボタンを押した。
無一郎
○○
無一郎も特に悩む素振りなく コーヒーを買って踵を返して 横に並んだ。
○○
たまたま人が居なかったから良かったものの、誤解されるわ。
無一郎
私の顔なんて見ないで ぼーっとしながら呟く無一郎。
コーヒーを飲んでも目が覚めないなんて、重篤な疲れかもしれない。
○○
第一印象とは正反対の方向へ成長していく友人に、困惑が止まらない。
無一郎
○○
草食男子の模範って感じ。
無一郎
○○
無一郎
まぁ、そんな彼でも人前では キャベツを被っているわけで。
○○
無一郎
○○
私は横向きに椅子に腰掛け、 背もたれに肘を着いてスマホをいじり出す。
○○
カレンダーを見て、週末は 何をしようかと頭を悩ませる。
一日中寝てるっていうのも 悪くないかな。
無一郎
○○
無一郎
○○
ボケを上回って返される。 私の負けだよ。
何この普段感じることない 敗北感は???
無一郎
○○
無一郎
後ろの席の無一郎は、ため息を吐いて私にスマホの画面を見せてきた。
無一郎
○○
画面に映し出されているのは 有名な遊園地の写真。
私の友人に、ここで恋が 成就した子がいる。
……が、ここでデートして 別れる人も少なくないという。
言うなれば魔のスポット。
○○
私は振り返って頭を振った。
○○
無一郎
そりゃ声も小さくなるわ。
あの”時透無一郎さん”と遊園地に 行きましたなんて知られたら 私に明日はないよ。
無一郎
○○
うーんと渋る私に無一郎は 「どうするの?」と首を傾げる。
そもそも遊園地って あんまり興味が湧かない。
何より女子生徒から 恨みを買いそうで嫌だ。
○○
無一郎
○○
○○
無一郎
○○
○○
それにしても最近の無一郎は 一体なんなんだ。
元々変な奴とは思ってたけど、最近はそれに拍車がかかった気がする。
○○
無一郎
○○
薄々そんな気はしてたけど やっぱり来たよ。
無一郎
○○
無一郎
まあこれで妥協されても 店長を呼ぶ度胸は無いけどさ。
お客様が店長のスマイルを ご所望です、なんて言える訳ない
髪の長い顔面国宝が ブラックリストに載るわ。
無一郎
ビシッと出された 千円札とチケット。
○○
無一郎
○○
ニコーっと笑って 千円札でお会計を進めた。
無一郎
○○
営業スマイルが売りの接客業に そんなこと言われましても。
○○
無一郎
○○
スマイルは在庫無いから、と 仏頂面で小銭を渡す。
その後でムスッとした無一郎に シェイクとポテトを渡した。
無一郎
○○
返却された商品を受け取り 袋に入れて改めて渡す。
渡したらスタスタと 出口に向かっていった。
自動ドアを潜るその姿を見ると なんだかため息がでてきた。
○○
対応としては 最低だった気がする。
分かってる。 私素直じゃなさすぎ。
○○
どうして無一郎は 私を遊園地に誘ったのか。
ただの暇潰しか、それ以外か。 まぁそんなことは知らないし どうでもいいれけど。
だけど。
○○
誘われた時は、 確かに嬉かった……気がする。
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