これからも、君と

一月の終わりあたり

あと1週間で

マラソン大会が行われる

うちの高校では

学校をスタート地点に

町内を約21km走ることになっている

まぁそれは男子は、の話で。

時計を見ると

部活が始まっていそうな時間

机のサイドに掛けてあった

スポーツバックを持って

急ぎ足で

教室をあとにした

…っしゃあ！

どんまい！次々！

ナイス！ナイス！

グラウンド

一月の寒い中

白い息を吐きながら

コートを走る

ドンッ

チームメイトとハイタッチを交わす

今日は部活の日

etさんも今日は部活って言ってたけど

あいにく、終わる時間が合わなくて

待ってもらうのも悪いし

寂しい気持ちを抱えつつ

コートを転がるボールを追いかけた

すっかり辺りは暗くなって

いつも通る道なのに

夜になると不気味さを感じさせる

タッタッタッ

もうとっくのとうに

帰ってるはず…なのに

etさんは相変わらずの笑顔を見せる

かと思えば

次はきょとん、とした顔

etさんの手をぐいっと引っ張る

こんな暗い中

etさんを1人で帰らせるなんて

絶対できない

本当は家まで送ってあげたいけど

そこまで行くと

帰るのに倍の時間がかかる

だから

etさんが通う駅まで

手を繋いだまま

ふと、etさんが立ち止まる

これじゃ、手を繋いでいるというより

一方的に手首を掴んでいる状態だ

パッと手を離す

etさんの顔を見て

なんとなく、分かった

どちらともなく

お互い、手を

指を、絡ませる

冷たい体温を感じる

でも、着実に

熱を帯びてきている

etさんの柔らかい手

その感触に

小さな満足感を覚えた

バスに揺られて

あっという間に駅に着く

改札に向かって

etさんが歩いていく

次のバスは何分だろう

とりあえず、スマホを取り出し

バス停まで歩き出す

ギュッ

間抜けな声が出てしまった

なんの前触れもなく

後ろから

強い衝動を加えて

抱きしめられる

おそるおそる後ろを見ると

オレンジ色の髪がなびく

…好き

スルッと抱きしめられた手が離れて

足音が遠ざかっていった

小さくではあったが

はっきりと聞こえた

照れた声で発せられた言葉

真っ赤になった頬を

冷たい風が心地よく撫でた