残り制限時間、9分56秒。
55、54……とカウントダウンが進んでいる。
ユウゴ
ガイド妖精
ガイド妖精
ガイド妖精が飛んで来て説明する。
ユウゴ
ガイド妖精
振り返ると、入学試験で何度も見た、ガイド妖精が変形した扉があった。
ユウゴ
ぼくが気絶していたせいで、みんなまで失格になったらと思うと気が気じゃなかった。
ガイド妖精
ガイド妖精
魔法学校は卒業まで最短でも2年かかると言っていた。
つまり、この扉を通ったが最後、2年間は家に帰れないということだ。
もっと早くにこれを言われていれば時間をかけて考える事もできたのに、ぼくが気絶していたせいで、その時間を奪ってしまった。
ナミスケ
アルク
最初にナミスケがこともなげに扉に入り、それにアルクも続いて行った。
ユウゴ
でもないか。
ナミスケはぼく達を妨害するほど本気でいたし、 アルクは魔法使いの家系で前々からアミキティア魔法学校の存在を知っていた。
昨日今日、魔法使いの存在を知ったぼくとは、最初から覚悟が違うんだ。
ユトリ
ユトリの意外にも力強い声。
ユウゴ
ユトリ
まっすぐに言われるのは恥ずかしいけど、悪い気はしない。
ぼくだって成り行きだけでここまで来たんじゃない。
覚悟なら、アルクのおばあさんからの質問で、決めたはずじゃないか。
最後にぼくとユトリで一緒に扉に入った。
扉を通ると、景色が砂浜から一転して、中世ヨーロッパのような建物が並んだ場所に変化した。
日差しもやわらかく、空気の肌触りすら、今までとは違って感じる。
ここがアミキティア魔法学校。
ガイド妖精
ガイド妖精が最後の道案内をしてくれる。
通ってきた扉が閉じて消滅していき、退路が完全に絶たれた。
残り制限時間、5分18秒。
アルク
アルクの号令で、みんなで走り出した。
入場行進のクリア条件は、入学式の会場に到着すること。
あと5分以内に講堂に入れなければ、失格になってしまう。
ナミスケ
ユウゴ
水の蛇に足をすくわれて、体が前につんのめった。
なんとか転ばずにすんだけど、右足がビチャビチャに濡れている。
ナミスケ
犯人はナミスケ。
背中にしょった水が満タンに入った水タンクを使って、邪魔してきたんだ。
ユウゴ
ナミスケ
ナミスケ
ナミスケの水タンクから、水の弾丸が飛んで来た。
アルク
アルクが風を起こして水の弾丸を弾き返すと、水しぶきになって霧散した。
ナミスケ
ナミスケがふたたび、水の弾丸を発射する。
ユトリ
ユトリがハンマーで水の弾丸を叩き落とすと、ガラス玉のように粉々に砕け散った。
ユウゴ
ナミスケの狙いは、ぼくだけ。
ぼくのせいで、アルクやユトリまで失格にしてしまう訳にはいかない。
アルク
ユトリ
2人がぼくと並んで立つ。
ナミスケ
ナミスケ
ナミスケ
ナミスケが残った水すべてを使って、巨大な水の蛇を生み出した。
これを止められさえすれば、ナミスケの武器はなくなる。
ナミスケ
ナミスケが前のめりに倒れて、水の蛇が地面に落っこちた。
一瞬何が起こったのかわからなかったけど、背後から声が聞こえた。
ショウリ
振り返ると、スケボーを2人乗りしている背の高い男の子と背の低い女の子が猛スピードで去っていくのが見えた。
ぼく達に声をかけたのは男の子で、スケボーを操作しているのは女の子のようだ。
よく見ると、ナミスケの背後に扉があった。
2人は、あの扉から飛び出してきたみたいだ。
メイカ
女の子が地面をけって、スケボーをさらに加速させる。
目的地は、入学式の会場の講堂か。
アルク
アルクが走り出す。
ぼくとユトリも付いていこうとしたが、ぼくの足が動かない。
倒れているナミスケが、ぼくの足首をつかんでいた。
ナミスケ
ユウゴ
状況が差し迫って、目的と手段が入れ替わってる。
アルク
ユトリ
ユトリ
ユトリが、ハンマーのやわらかくする魔法の面で、地面をガンガンとたたき始めた。
アルク
飛ぶ?
アルク
聞き返す暇もなく、アルクの起こした風で、ぼく達の体が持ち上げられた。
ユウゴ
アルク
風で持ち上げられたぼく達の体は、ユトリがハンマーでやわらかくした地面に叩きつけられた。
やわらかくなった地面がグイーンと深く凹んだあと、トランポリンのようにぼく達を空高くに投げ出した。
ナミスケ
アルク
ユウゴ
案の定飛距離が足りず、道の途中に落ちそうになる。
アルク
ユトリ
ユトリ
ユトリ
ユトリ
ユトリがハンマーをかまえながら落っこちて、地面をやわらかくする。
そこにぼく達が遅れて落っこち、地面の弾力で投げ出される。
さらに投げ出される時に、アルクが突風を起こして、飛距離とスピードをアップさせる。
この一連の流れを何度か繰り返して、講堂の目の前まで迫った。
さっきのスケボーカップルが、講堂の入口から入って行くのが見えた。
アルク
風と弾力での加速の勢いがよすぎて、このままだと講堂の入口前に降りれずに、壁に激突しそうだ。
ユトリ
アルク
アルクがユトリを制すると、さらに強い風を起こした。
ぼく達の体が高く吹き上げられる。
ユウゴ
アルク
ぼく達4人が向かう先には、講堂の天井近くにあるステンドグラス。
まさか、アルクの狙いは。
アルク
そのまさかだった。
ぼく達4人はステンドグラスをぶち破って、講堂に突入した。
中では数百人の生徒の他、教師や関係者だろう大人の人が厳かな空気の中で、入学式の始まりを待っていた。
勢いよく飛び込んだぼく達は、講堂前方のステージに墜落した。
シシロウ
ステージの上に立っていた、シシロウから声をかけられた。
アルク
アルクがフレンドリーに手をふって声をかけるが、シシロウはガン無視。
かわりに、シシロウのとなりに立っていた、まんまるに太った男の人が話しはじめた。
ストリクト先生
シシロウ
シシロウがゴミを見るような視線を向けてくる。
気持ちはわからなくもないけども、この仕打ちはきつい。
ストリクト先生
太った男の人は、ぼく達を蹴飛ばすように足で払って、ステージから降りるようにうながしてきた。
ぼく達だって、いつまでもステージの上で注目を浴び続けているつもりはない。
講堂の数百人の冷たい視線に迎えられながら、ぼく達4人はステージから降りた。
その後、すぐに入学式ははじまった。
ぼく達を冷たくあしらった男の人は、多分先生だろう。
入学初日から、かなり良くない印象を抱かせてしまった。
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