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残り制限時間、9分56秒。

55、54……とカウントダウンが進んでいる。

ユウゴ

なんでビンゴが埋まったのにカウントが止まっていないの?

ガイド妖精

君達がやっているのは、入場行進だ。

ガイド妖精

入学式の会場に到着して、はじめてクリアになる

ガイド妖精が飛んで来て説明する。

ユウゴ

入学式の会場ってどこ?
今から10分以内で行ける場所なの?

ガイド妖精

それなら心配はいらない。
扉を通れば、すぐに到着する

振り返ると、入学試験で何度も見た、ガイド妖精が変形した扉があった。

ユウゴ

よかった

ぼくが気絶していたせいで、みんなまで失格になったらと思うと気が気じゃなかった。

ガイド妖精

扉を通る前に、最後に問う。

ガイド妖精

扉を通れば引き返すことはできなくなる。
君達に、その覚悟はあるか?

魔法学校は卒業まで最短でも2年かかると言っていた。

つまり、この扉を通ったが最後、2年間は家に帰れないということだ。

もっと早くにこれを言われていれば時間をかけて考える事もできたのに、ぼくが気絶していたせいで、その時間を奪ってしまった。

ナミスケ

時間がないんだ。行くぞ

アルク

言われんでも行くわよ

最初にナミスケがこともなげに扉に入り、それにアルクも続いて行った。

ユウゴ

2人とも、そんな簡単に……

でもないか。

ナミスケはぼく達を妨害するほど本気でいたし、 アルクは魔法使いの家系で前々からアミキティア魔法学校の存在を知っていた。

昨日今日、魔法使いの存在を知ったぼくとは、最初から覚悟が違うんだ。

ユトリ

私達も行きましょう

ユトリの意外にも力強い声。

ユウゴ

いいの?

ユトリ

ユウゴさんと一緒なら

まっすぐに言われるのは恥ずかしいけど、悪い気はしない。

ぼくだって成り行きだけでここまで来たんじゃない。

覚悟なら、アルクのおばあさんからの質問で、決めたはずじゃないか。

最後にぼくとユトリで一緒に扉に入った。

扉を通ると、景色が砂浜から一転して、中世ヨーロッパのような建物が並んだ場所に変化した。

日差しもやわらかく、空気の肌触りすら、今までとは違って感じる。

ここがアミキティア魔法学校。

ガイド妖精

目の前の広い道を真っ直ぐ進めば、入学式の会場の講堂だ

ガイド妖精が最後の道案内をしてくれる。

通ってきた扉が閉じて消滅していき、退路が完全に絶たれた。

残り制限時間、5分18秒。

アルク

結構距離があるから、急ぐよ!

アルクの号令で、みんなで走り出した。

入場行進のクリア条件は、入学式の会場に到着すること。

あと5分以内に講堂に入れなければ、失格になってしまう。

ナミスケ

毒水蛇《サーペントウィップ》!

ユウゴ

うわっ!

水の蛇に足をすくわれて、体が前につんのめった。

なんとか転ばずにすんだけど、右足がビチャビチャに濡れている。

ナミスケ

やっぱり、お前だけは行かすわけにいかないな!

犯人はナミスケ。

背中にしょった水が満タンに入った水タンクを使って、邪魔してきたんだ。

ユウゴ

こんなところまで来て、何を考えてるのさ

ナミスケ

ここまで来たからこそさ。
魔物鮫を倒したお前の闇《ケイオス》はやっぱり脅威だ。

ナミスケ

入学させずに、ここで潰す!

ナミスケの水タンクから、水の弾丸が飛んで来た。

アルク

ちょっとくらい仲間意識ってものはないの?

アルクが風を起こして水の弾丸を弾き返すと、水しぶきになって霧散した。

ナミスケ

無いね!

ナミスケがふたたび、水の弾丸を発射する。

ユトリ

私は仲間だと思ってますけどね!

ユトリがハンマーで水の弾丸を叩き落とすと、ガラス玉のように粉々に砕け散った。

ユウゴ

2人は先に行ってよ!

ナミスケの狙いは、ぼくだけ。

ぼくのせいで、アルクやユトリまで失格にしてしまう訳にはいかない。

アルク

できるわけ無いでしょ

ユトリ

みんなで入学しましょうよ

2人がぼくと並んで立つ。

ナミスケ

それそれ。

ナミスケ

仲間意識って、結局足を引っ張り合うだけじゃんか。

ナミスケ

毒水蛇《サーペントウィップ》!

ナミスケが残った水すべてを使って、巨大な水の蛇を生み出した。

これを止められさえすれば、ナミスケの武器はなくなる。

ナミスケ

いくっ……ずぇっ!

ナミスケが前のめりに倒れて、水の蛇が地面に落っこちた。

一瞬何が起こったのかわからなかったけど、背後から声が聞こえた。

ショウリ

急いでるんだ。
あとで謝る

振り返ると、スケボーを2人乗りしている背の高い男の子と背の低い女の子が猛スピードで去っていくのが見えた。

ぼく達に声をかけたのは男の子で、スケボーを操作しているのは女の子のようだ。

よく見ると、ナミスケの背後に扉があった。

2人は、あの扉から飛び出してきたみたいだ。

メイカ

あと3分もないから飛ばすよー!

女の子が地面をけって、スケボーをさらに加速させる。

目的地は、入学式の会場の講堂か。

アルク

あ、あたし達も急ぐわよ!

アルクが走り出す。

ぼくとユトリも付いていこうとしたが、ぼくの足が動かない。

倒れているナミスケが、ぼくの足首をつかんでいた。

ナミスケ

しつこいよ

ユウゴ

もう今からじゃ間に合わねぇ。
お前だけでも失格にしてやる

状況が差し迫って、目的と手段が入れ替わってる。

アルク

ユトリ、ハンマー裏返して!

ユトリ

は、はいっ!

ユトリ

何か軟化《バウンドスタンプ》

ユトリが、ハンマーのやわらかくする魔法の面で、地面をガンガンとたたき始めた。

アルク

もう、走っても間に合わないから、飛んでいくわよ

飛ぶ?

アルク

荒削りの嵐《インスタントストーム》!

聞き返す暇もなく、アルクの起こした風で、ぼく達の体が持ち上げられた。

ユウゴ

この風にのって、講堂まで飛んでいくつもり?

アルク

そうしたいところだけど、そこまで長続きする魔法は使えないのよね

風で持ち上げられたぼく達の体は、ユトリがハンマーでやわらかくした地面に叩きつけられた。

やわらかくなった地面がグイーンと深く凹んだあと、トランポリンのようにぼく達を空高くに投げ出した。

ナミスケ

こんなのでうまくいくわけないだろ!

アルク

なんで、ナミスケも付いてきてるのよ?

ユウゴ

ぼくの足首に捕まっていたから

案の定飛距離が足りず、道の途中に落ちそうになる。

アルク

ユトリー、もういっちょ

ユトリ

こうなったら、ヤケです

ユトリ

何か軟化《バウンドスタンプ》!

ユトリ

何か軟化《バウンドスタンプ》!

ユトリ

何か軟化《バウンドスタンプ》!

ユトリがハンマーをかまえながら落っこちて、地面をやわらかくする。

そこにぼく達が遅れて落っこち、地面の弾力で投げ出される。

さらに投げ出される時に、アルクが突風を起こして、飛距離とスピードをアップさせる。

この一連の流れを何度か繰り返して、講堂の目の前まで迫った。

さっきのスケボーカップルが、講堂の入口から入って行くのが見えた。

アルク

この角度、ちょっとやばくない?

風と弾力での加速の勢いがよすぎて、このままだと講堂の入口前に降りれずに、壁に激突しそうだ。

ユトリ

壁をやわらかくすれば……

アルク

それだと後ろに戻っちゃうから、ユトリはハンマーをしまって

アルクがユトリを制すると、さらに強い風を起こした。

ぼく達の体が高く吹き上げられる。

ユウゴ

下じゃなくて、上!?

アルク

みんな、腕で頭を守って!

ぼく達4人が向かう先には、講堂の天井近くにあるステンドグラス。

まさか、アルクの狙いは。

アルク

時間までに中に入れば、間に合ったことになるでしょ!

そのまさかだった。

ぼく達4人はステンドグラスをぶち破って、講堂に突入した。

中では数百人の生徒の他、教師や関係者だろう大人の人が厳かな空気の中で、入学式の始まりを待っていた。

勢いよく飛び込んだぼく達は、講堂前方のステージに墜落した。

シシロウ

君達、どういうつもりだ?

ステージの上に立っていた、シシロウから声をかけられた。

アルク

あら、シシロウ。久しぶり~

アルクがフレンドリーに手をふって声をかけるが、シシロウはガン無視。

かわりに、シシロウのとなりに立っていた、まんまるに太った男の人が話しはじめた。

ストリクト先生

この無礼で失礼な子供達は、神酒杜《みきもり》様のご子息のお知り合いで?

シシロウ

いいえ、全く

シシロウがゴミを見るような視線を向けてくる。

気持ちはわからなくもないけども、この仕打ちはきつい。

ストリクト先生

そうでしょうとも。
新入生の代表スピーチをまかされた神酒杜《みきもり》様のご子息が、こんな粗暴な礼儀知らず共と、知り合いのはずがありませんでしたね

太った男の人は、ぼく達を蹴飛ばすように足で払って、ステージから降りるようにうながしてきた。

ぼく達だって、いつまでもステージの上で注目を浴び続けているつもりはない。

講堂の数百人の冷たい視線に迎えられながら、ぼく達4人はステージから降りた。

その後、すぐに入学式ははじまった。

ぼく達を冷たくあしらった男の人は、多分先生だろう。

入学初日から、かなり良くない印象を抱かせてしまった。

アミキティア魔法学校の闇

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