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アミキティア魔法学校の入学式。
新入生は、約300人。
ぼく達6人は新入生組の列の1番前に、イスを並べられて座らされた。
6人というのは、ぼく、アルク、ユトリ、ナミスケの天井のステンドグラスを割って突入した4人と、制限時間ギリギリでスケボーに乗って滑り込んだ男女の2人。
入学式を一時でも荒らしたということで、その罰も兼ねているらしい。
メイカ
スケボーカップルの女の子がほっぺたをふくらませて、唇をとがらせる。
大きいツインテールが印象的な小柄な女の子で、少し生意気そうというか、取っ付きにくそうな感じを受けた。
ショウリ
スケボーカップルの男の子が、女の子をなだめる。
背が高くて、面倒見の良いいお兄さんって感じの人だ。
女の子の名前は明日月《あすつき》明日《めいか》、 男の子の名前は品森《しなもり》晶刕《しょうり》。
ぼく達も自己紹介、……というか名前だけは教えあった。
入学式のプログラムが始まり、それ以上の話はできなかったからだ。
まずは新入生代表の神酒杜《みきもり》獅子郎《ししろう》の堂々とした、新入生代表のスピーチ。
校長のあいさつ、職員や先生たちの紹介が続く。
その後で、アミキティア魔法学校の歴史が1000年以上続いていること、 先生方は世界中で活躍している魔法使いであること、 魔物は人知れず人を襲う驚異的な存在であること、 学校生活では魔法の他に一般教養も学ぶこと等が、長々と説明された。
正直、半分どころか、10分の1も頭の中に入らなかった。
緊張していることもあるけど、何よりも周りからの視線が気になったからだ。
最初にステージ上で出会った太った男の先生は、ストリクトと名乗り、魔法学科最高主任だと紹介されていた。
そのストリクト先生は、職員席の1番はしから、ずーっとぼく達をにらむように監視していた。
入学式に(文字通り)飛び込んできた悪ガキ共が、また悪さをしないかと目を光らせているわけだ。
その視線は、他の新入生も気づいているようで、後ろからも指すような視線が突き刺さる。
正直、少し体を動かしただけでも、あとでこっぴどく叱られそうな雰囲気だ。
アルク
緊張してかたまっているぼくとは対照的に、アルクは大あくび。 どこまで肝が座ってるのさ。
となりに座っているユトリもひじでアルクを突いて、姿勢を正すようにうながしている。
司会
ステージ上の司会者により、入学式の終了がアナウンスされた。
長く感じた緊張タイムも、これで終わりか。
ほっとしたのも束の間、司会者から衝撃の言葉が告げられた。
司会
アルク
退屈に押しつぶされていたアルクが、ついにツッコんだ。
静かで厳かな入学式の講堂の最前列で。
ストリクト先生
入学式中は黙って見ていたストリクト先生も、ついに切れて立ち上がった。
今のは流石にアルクが全面的に悪いと思う。
ホマレ
ホマレ
こちらに近づいてこようとしたストリクト先生の前に、ひとりの女の子が立ちはだかった。
まるでドレスのように派手な服に身を包んでいて、言葉使いや物腰も少し時代がかっている。
ストリクト先生
ホマレ
ホマレ
ストリクト先生
礼儀正しいホマレに毒気を抜かれたのか、ストリクト先生は自分の席に座り直した。
アルク
ユトリ
アルクがそっぽを向き、ユトリがなだめる。
トラブルがおさまったと判断した司会者が、説明を再開した。
司会
司会
魔物と聞いて、新入生達に緊張が走った。
ほぼ全員が夢の中での戦闘しか経験していない。
それでも恐ろしく、危険で、凶悪な相手であった。
司会
司会
司会者が指をパチンと鳴らすと、どこからともなく数体のガイド妖精が飛んで来た。
今までの厳かな雰囲気から一変して、エンターテイメントな空気になってきた。
司会
ガイド妖精から光が照射され、ステージの後ろの壁にプロジェクションマッピングのように、何かの表が投影された。
司会
司会
司会
司会
ノービスは、初心者や新参者という意味の言葉だ。 新入生のぼく達を指すには、ふさわしい言葉だろう。
司会
司会
司会
投影されていた表が、いろいろな競技の映像に切り替わった。
中には入学試験で行った問題のようなものもあった。
司会
司会
司会者から突然、新入生に向かって呼びかけられた。
と言うか、視線は最前列に座っているぼく達に向けられているように感じる。
司会
感じるじゃない。
確実にぼく達に言っている。
左右を見ると、ユトリも同じものを感じたみたいで、ほほや首筋にじっとりと冷や汗をかいている。
アルク
アルクはイスの背もたれに両手をかけて、もたれかかっている。
ナミスケ
ナミスケも前に出る気はないようで、足を組んでふんぞりかえっている。
2人の肝の座りっぷりは、少しだけ羨ましい。
メイカ
ショウリ
ぼくの左どなりでは、意気揚々と立ち上がろうとするメイカを、ショウリが腕を引っ張って止めていた。
カップルというより、活発な妹と苦労症の兄の兄妹って感じに見える。
ストリクト先生
ストリクト先生が強めの語気でつぶやいた。
司会者が視線を送るぼく達だけでなく、新入生全員に対して言っているようだ。
シシロウ
動けずにいた新入生組の中から立ち上がったのは、神酒杜《みきもり》獅子郎《ししろう》だった。
魔法使いの名門だという神酒杜《みきもり》家の次男、入学試験はトップ通過、入学式の最初には新入生代表スピーチも務め上げた。
これ以上にふさわしい人物もいないだろう。
ホマレ
もうひとり立ち上がる新入生がいた。
さっきアルクがストリクト先生に注意されそうになった時に、止めに入ってくれたドレスのような派手な服の女の子。
たしか、名前は火産神《かぐづち》火稀《ほまれ》。
司会
司会者に呼ばれて、シシロウとホマレがステージに向かう。
シシロウ
ホマレ
お互いに言葉で牽制しあいながら歩いていく。
ユウゴ
ユトリ
アルク
2人の後ろ姿を見送りながら、アルクが言う。
ユトリ
アルク
アルク
さっきストリクト先生に責められていたアルクをかばったのは、知り合いだったからという理由もあったのかな。
ステージの上で、シシロウとホマレが向かい合うように左右に分かれた。
司会
2人が並んだのを確認した司会者が舞台袖に引っ込んで行き、入れ替わりに、ふよふよと浮いていたガイド妖精の1体が、ステージの中央まで降りてきた。
ガイド妖精
壁に新たな映像が投影され、それを補足する形でガイド妖精の音声が流れる。
①アミキティア・サバイバルは、主に生徒間の能力差を測り、成績を決するための方法として行われる。 内容は、1対1の個人戦、多対多の団体戦、複数で行われる乱戦、特別ルールの特殊戦等、多岐にわたる。 ②アミキティア・サバイバルで行われる競技は、基本的に事前に告知されない。 競技の直前にルール説明を行う。 ③勝利、またはクリアで所定のポイントが加算され、獲得ポイントの累計が10をこえると、クラスがひとつ昇格する。 結果が振るわなくとも、内容次第で、理解力、判断力、発想力等が評価され、ポイントが与えられる場合がある。 ポイントが減点されることは無い。 ④敗北、または未クリアの度にペナルティが1付く。 ペナルティが連続で3回付いた場合、クラスがひとつ降格する。 ノービスクラスでペナルティが3になった場合、退学となる。 ⑤ガイド妖精はアミキティア魔法学校のあらゆる場所で、生徒の生活の安全を見守っている。 生徒間で言い争い、競い合い、トラブル等が発生した場合、すぐ近くにいるガイド妖精が即座にあらわれる。 トラブル解決の手段としても、アミキティア・サバイバルは行われる。
他にも細かい注意事項はあったけど、主な内容はこういうものだった。
アミキティア・サバイバルだと長いので、大抵の場面ではアミ戦と略されて呼ばれるらしいこともわかった。
アミ戦は、アミキティア魔法学校で行われる授業や試験、生徒間のトラブル解決手段など、あらゆる場面で行われると覚えておけばいいだろう。
アミ戦の説明が終わり、ガイド妖精がシシロウとホマレに話しかける。
ガイド妖精
シシロウ
ホマレ
ステージ上の2人があおり合う。
ガイド妖精
シシロウ
ホマレ
2人の自己紹介がかぶって、どっちも聞こえなかった。
シシロウ
ホマレ
早く始めてくれないかな?