Side 春千夜
自分がSubであると知ってからの人生は最悪だった。
誰かに支配されたいと願うなんて狂ってる。ましてや自分が誰かに命令されて喜ぶだなんて、想像するだけで反吐が出る。
家族は自分以外全員Dom、幼馴染みや友人でさえ大半はNormalかDomだ。
何をしていても、自分はコイツ等より下の立場なんだという負の感情がつきまとっていた。
唯一のSubの仲間はマイキーだけだった。マイキーはSubの立場にして、常に集団のトップにいた。
でも俺は知っている。マイキーは自分がSubであることを受け入れて、仮のパートナーのドラケンとプレイしていた。
14歳の春、マイキーの家に遊びに行った時にドラケンも来ているからと家に通された。
ふすまから不思議なワードが聞こえてきて、隙間からそっと中を覗いた。そこで目撃してしまった。
マイキーがドラケンに抱き締められながらプレイしていた。
マイキー
ドラケン
マイキー
ドラケン
マイキー
ドラケン
マイキー
春千夜は慌てて目をそらした。親友2人のキスなんて見たくない。
それでもキスの生々しい音とマイキーの甘い吐息が聞こえてきて、脚がガクガクと震えた。
2人に知られないようにマイキーの家から逃げ出して、声を上げて泣いた。
春千夜
幼い日にトラウマを植え付けられた俺は、大人になってからもパートナーを作る気は微塵もなかった。
それでも確実に身体は『Sub』として成長していく。薬で沈む気持ちを抑えようとしても限度がある。俺は完全に薬に依存するようになっていた。
元々俺はSubの中でも欲求が強い方らしく、薬も効きにくい体質らしい。日に日に増えていく薬の量に反比例して、効果は薄れていった。
春千夜
春千夜
生きていることがギリギリだった。そんな中、Normalだと思っていた灰谷蘭が、実はSubであることを風の噂で聞いた。しかもパートナーがいないらしい。
藁にもすがる思いだった。パートナーがいなくても平気でいられる方法を知りたくて、駄目な事とはわかっていたが配下に灰谷の家に侵入させて、盗聴器を仕掛けた。
その晩、なぜ蘭が涼しい顔で過ごしていられるのかすぐにわかることになる。
竜胆
春千夜
蘭
春千夜
竜胆
蘭
俺は血の気が引くのを感じた。蘭と竜胆は兄弟でプレイをしている。
おかしい。本能的に家族同士はダイナミクスのプレイも嫌悪感を抱くはずだ。それに身内でのプレイは犯罪行為にあたる。
呆然とする俺をよそに、2人のプレイは進んでいった。俺のトラウマのきっかけであるキスの音も聞こえてきた。
竜胆
蘭
竜胆
蘭
竜胆
蘭
春千夜
スピーカーから段々と深まっていく2人の行為の音が聞こえてくる。俺は震える手で盗聴器の音声を受信するPCの電源を切ると、頭を抱えて項垂れた。とんでもない秘密を知ってしまった。
春千夜
悔しいけれど、竜胆のコマンドの声が頭にこびりついて離れない。不本意だが身体が命令して欲しいと騒いでいる。息苦しくなって、震える手で薬を何粒も口に放り込んで飲み下した。
春千夜
欲しい…あの声で命令されて、叱りつけられて、褒めて欲しい。
劣等感だらけの俺を認めて、包み込んで欲しい。
春千夜
俺は自我を失いかけて、ギリギリのところでマイキーに連絡をして病院に搬送された。
医師
マイキー
薬で朦朧としている意識の中、ベッドの横でマイキーと医者が話しているのが聞こえる。
医師
マイキー
医師
マイキー
医師が去ると、マイキーは俺の髪を撫でた。俺は薄く目を開けて、掠れた声でマイキーに話しかけた。
春千夜
マイキー
マイキーの言葉を聞いて、涙が溢れだした。
春千夜
マイキー
春千夜
マイキー
──…マイキー……お前はどうしてそんなにマヌケな過去を懐かしむ顔をするんだよ……。訳わかんねェ…。
マイキー
マイキーはドラケンと離れてからパートナーを作っていない。俺と同じように薬で耐えているせいで、常に目の下にはクマができているし、時にはサブドロップ寸前まで沈むことがある。
マイキー
春千夜
マイキー
──…俺と同じ道を辿るな。幸せになれよ。
このマイキーの一言で、俺は自分のプライドに折り合いをつけてパートナーを作る決意をした。
竜胆との初めてのプレイは俺の家でシた。
竜胆のことを半ば脅すかたちでパートナーになったから、当然嫌われている自覚はあった。
それに蘭がサブドロップになったのもマイキーから聞いていた。せめてもの償いに、蘭と相性の良いDomを医師に聞いて鶴蝶に見舞いに行かせたが、これが仇となってさらに恨みを買ったのも知っている。
春千夜
Subだからと見下されたくなくて、先に釘を刺しておいた。すると竜胆は普段は見せねークソ生意気な顔で俺を見てきた。
竜胆
ほら見ろ。案の定DomはSubのことを見下す。頭に血が上って竜胆に凄んだ。コマンドも拒否した。
すると竜胆はもの凄い剣幕で『グレア』をかましてきた。初めてのプレイではご法度とされている行為だ。
今までに感じたことがないほどの恐怖が全身を駆け巡って、不安で不安で仕方がなくなって、膝から崩れ落ちてしまった。
春千夜
ガタガタと震えが止まらない。目の前の竜胆が怖くてたまらない。──おかしい。俺の身体が俺のものじゃないみたいだ。
竜胆
怖い……命令に逆らって叱られるのが怖い。悔しいけれど、竜胆の命令に従うしかなかった。
竜胆の顔を見ると、奴は小さく震えた。──どういう事だよ。そんなに俺が嫌なのか?……怖い…嫌だ……竜胆に否定されたくない……。
竜胆
予想に反して褒められた瞬間、全身に今まで感じたことがない幸福感が広がった。たったの一言なのに、今まで否定し続けてきた自分の存在が肯定される感じがした。
思わず表情が緩みそうになったが、唇を噛んで堪えた。
春千夜
竜胆はコマンドを続けた。
竜胆
春千夜
無言で言われた通りに床に四つん這いになった。すると竜胆は屈んでから俺の目の前に手を差し出して、またしてもコマンドを告げた。
竜胆
屈辱的な命令だったが、言われた通りに指先にキスをして、指に舌をはわせた。竜胆は指を俺の口に差し入れると、舌に絡めて弄んだ。
竜胆
春千夜
苦しい。それに竜胆に叱られると悲しくなって、泣きそうになる。
竜胆
命令に従って尻を突き上げた。加減はされているものの臀部を掌で打たれて、再び幸福感に包まれた。
春千夜
春千夜
再び尻を叩かれて、快楽が押し寄せた。
春千夜
春千夜
竜胆
春千夜
竜胆
この頃には何がなんだかわからなくなっていた。言われるままに竜胆にキスをして、執拗に口内をかき乱された。興奮した竜胆に抱き抱えられてベッドに連れていかれて、結局最後までシてしまった。
ちゃんとした判断力がある時なら絶対にこんな失態は犯さない。けれどプレイ中は俺の全てを竜胆に預けている心地になるから、とにかく奉仕したくてたまらなくなる。
──プレイ前にマイキーに忠告された。
マイキー
竜胆に興味なんてなかった俺は、その時は大して気にも止めないで聞いていた。
けれどプレイを経験してそのことは本当だと思い知らされることになった。
竜胆とパートナーになってしばらく経つ。随分と精神も安定した。相変わらず竜胆は俺の事を恨んでいる。
──それなのに、俺だけが竜胆に心が動いている。Domのお前にはわからないだろうな。俺達SubにとってはDomが全てだ。
情けないよな。お前に想われていないことが、辛いなんて。
英語で脳みそが疲れるので、オラに力を! Next……♡3,000
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