昼過ぎ
○○は洗濯機の前で立ち尽くしていた
回るはずの洗濯槽は
うんともすんとも言わない
〇〇
ため息をついて電源を入れ直しても
結果は同じだった
〇〇
そんなつぶやきが空気に溶ける
仕方なく洗濯物を抱えて外に出る
昼の光が眩しくて
少し目を細めた
この辺にコインランドリーなんてあったかな
そんなことを思いながら歩くと
ふと商店街の角に
小さな青い看板が見えた
〇〇
ドアを押すと
柔軟剤の香りと
静かな機械音
そして人の気配がした
奥の待機場所でスマホをいじっている人がいた
姿勢、指先の癖、横顔
見覚えがありすぎて○○の足が止まる
〇〇
〇〇
顔を上げたその人は
少し驚いたような顔をした
国見
スーツじゃない
グレーのパーカーに黒のスラックス
思っていたよりもラフで
○○は拍子抜けした
〇〇
国見
国見
〇〇
〇〇
国見
国見さんは無表情のままそういった
悪意は無い
それだけは伝わる
声は相変わらず落ち着いていて
カフェであった時よりも少し柔らかい
あ...髪がノーセットだから
そう見えるのかな
○○はそんなことを考えながら暫く国見を見つめた
国見
〇〇
〇〇
恥ずかしくなり一瞬だけ顔を逸らした
〇〇
〇〇
〇〇
国見
〇〇
〇〇
国見
国見
とだけ言って
国見は洗濯機のドラムを見つめた
しばらくの沈黙
洗濯機の音だけが回っている
〇〇
○○がぽつりと聞くと
国見
国見
〇〇
○○がそう質問をすると
国見
○○は返す言葉を見つけられずに
少しだけ笑って誤魔化した
乾燥機の音が止まる
国見が静かに立ち上がり
洗濯物をたたみ始める
その手つきが丁寧で
どこか寂しげだった
国見
国見
そう言って国見は袋を肩にかけた
〇〇
思わず同じ言葉を返す
多分
もう会えないかもしれないのに
夜
洗濯したシャツを畳みながら
ぼんやりと今日のことを思い出していた
国見の声
指の動き
そしてあの何気ない一言
〇〇
呟きながら○○は苦笑した
〇〇
〇〇
ひとりやふたりの元カノなんて...
普通にいるでしょ
そう心の中で思っても
心のどこかが痛かった
夕方
カフェは今日、臨時休業だった
○○は那月と駅前のご飯屋さんで
夕ご飯を食べていた
那月
那月
〇〇
那月
〇〇
〇〇
那月
那月
〇〇
〇〇
那月は少し不機嫌そうに味噌汁をすすった
那月
〇〇
そう言いながら○○も味噌汁に手をつけた
那月
那月
その言葉に驚き
○○は味噌汁を吹き出しそうになる
〇〇
那月
〇〇
水をのみ呼吸を整えた
〇〇
那月
〇〇
〇〇
那月
〇〇
〇〇
〇〇
那月
那月
〇〇
〇〇
〇〇
那月
那月は○○の顔を覗いた
〇〇
〇〇
那月
〇〇
那月
〇〇
〇〇
那月
那月の声には
僅かに棘が混じる
○○はそれに気が付かず
唐揚げにレモンを搾った
〇〇
那月
〇〇
那月
〇〇
〇〇
〇〇
那月は「ふーん」とだけ言った
〇〇
〇〇
那月は箸を止めて静かに○○を見た
那月
○○は俯いたまま呟いた
〇〇
〇〇
テーブルの上の湯気が
二人の間を揺らす
那月は何も言わなかった
ただその名前が出た瞬間
胸の奥が締め付けられたような顔をした
〇〇
〇〇
○○はそういったが
那月はそのまま○○を見つめていた
〇〇
那月
〇〇
〇〇
〇〇
笑いながら○○はそう言った
那月
〇〇
2人の笑い声は夜にとけていった







