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昼過ぎ

○○は洗濯機の前で立ち尽くしていた

回るはずの洗濯槽は

うんともすんとも言わない

〇〇

はー...

ため息をついて電源を入れ直しても

結果は同じだった

〇〇

ついに壊れた...

そんなつぶやきが空気に溶ける

仕方なく洗濯物を抱えて外に出る

昼の光が眩しくて

少し目を細めた

この辺にコインランドリーなんてあったかな

そんなことを思いながら歩くと

ふと商店街の角に

小さな青い看板が見えた

〇〇

...あった

ドアを押すと

柔軟剤の香りと

静かな機械音

そして人の気配がした

奥の待機場所でスマホをいじっている人がいた

姿勢、指先の癖、横顔

見覚えがありすぎて○○の足が止まる

〇〇

あれ...

〇〇

国見さん?

顔を上げたその人は

少し驚いたような顔をした

国見

どうも

スーツじゃない

グレーのパーカーに黒のスラックス

思っていたよりもラフで

○○は拍子抜けした

〇〇

洗濯ですか?

国見

はい

国見

壊れてるので

〇〇

あ...奇遇ですね

〇〇

私もついさっき

国見

運が無いですね

国見さんは無表情のままそういった

悪意は無い

それだけは伝わる

声は相変わらず落ち着いていて

カフェであった時よりも少し柔らかい

あ...髪がノーセットだから

そう見えるのかな

○○はそんなことを考えながら暫く国見を見つめた

国見

顔に穴が開く勢いですね

〇〇

え、

〇〇

あ...すみません

恥ずかしくなり一瞬だけ顔を逸らした

〇〇

そういえば

〇〇

融資の件

〇〇

改めて感謝してます

国見

仕事なんで

〇〇

...それでも

〇〇

助かりました

国見

...まぁ

国見

良かったです

とだけ言って

国見は洗濯機のドラムを見つめた

しばらくの沈黙

洗濯機の音だけが回っている

〇〇

...よく来るんですか?

○○がぽつりと聞くと

国見

家に干すと

国見

猫がいたずらするので

〇〇

猫飼ってるんですか?

○○がそう質問をすると

国見

...元カノの

○○は返す言葉を見つけられずに

少しだけ笑って誤魔化した

乾燥機の音が止まる

国見が静かに立ち上がり

洗濯物をたたみ始める

その手つきが丁寧で

どこか寂しげだった

国見

じゃあ...

国見

また

そう言って国見は袋を肩にかけた

〇〇

...また

思わず同じ言葉を返す

多分

もう会えないかもしれないのに

洗濯したシャツを畳みながら

ぼんやりと今日のことを思い出していた

国見の声

指の動き

そしてあの何気ない一言

〇〇

元カノ...か

呟きながら○○は苦笑した

〇〇

まぁそうですよね

〇〇

あの顔だもん

ひとりやふたりの元カノなんて...

普通にいるでしょ

そう心の中で思っても

心のどこかが痛かった

夕方

カフェは今日、臨時休業だった

○○は那月と駅前のご飯屋さんで

夕ご飯を食べていた

那月

それで覚えてる?

那月

林先生が○○怒ったの

〇〇

...

那月

おーい

〇〇

え、ごめん

〇〇

なんか言ってた?

那月

なんか言ってたって

那月

それ何回目ですかね

〇〇

ごめんごめん

〇〇

色々考えてて

那月は少し不機嫌そうに味噌汁をすすった

那月

なんかあった?

〇〇

え...いや別に

そう言いながら○○も味噌汁に手をつけた

那月

もしかして

那月

あの銀行の人の事?

その言葉に驚き

○○は味噌汁を吹き出しそうになる

〇〇

ちょ...なに

那月

図星か

〇〇

別に違うって

水をのみ呼吸を整えた

〇〇

変なこと言わないで

那月

変なことですかね

〇〇

うん

〇〇

ただこの前偶然会ったの

那月

偶然?

〇〇

うん

〇〇

洗濯機が壊れて

〇〇

コインランドリーで

那月

へぇ

那月

コインランドリーにね

〇〇

そう

〇〇

スマホ見てる姿がなんか

〇〇

見覚えあって

那月

見覚え?

那月は○○の顔を覗いた

〇〇

え?うん

〇〇

だって担当だったから

那月

あ...そういうことな

〇〇

うん

那月

まぁよく人の事見てんのな

〇〇

見てる...っていうか

〇〇

なんか気になるの

那月

気になる、ね

那月の声には

僅かに棘が混じる

○○はそれに気が付かず

唐揚げにレモンを搾った

〇〇

ねぇ那月

那月

ん?

〇〇

私、猫飼いたい

那月

急だな

〇〇

急...なのかな

〇〇

ずっと考えてたんだけど

〇〇

初めて言葉に出したかも

那月は「ふーん」とだけ言った

〇〇

ほら

〇〇

好きだったでしょ?

那月は箸を止めて静かに○○を見た

那月

だった?

○○は俯いたまま呟いた

〇〇

隼人が好きだったでしょ

〇〇

テーブルの上の湯気が

二人の間を揺らす

那月は何も言わなかった

ただその名前が出た瞬間

胸の奥が締め付けられたような顔をした

〇〇

あ...ごめん

〇〇

悲しい気持ちで言った訳じゃない

○○はそういったが

那月はそのまま○○を見つめていた

〇〇

ん?

那月

いや...なんも

〇〇

まぁとは言っても

〇〇

今はお店も忙しいし

〇〇

そんなこと言ってられないけど

笑いながら○○はそう言った

那月

じゃあ那月ニャンを飼います?

〇〇

結構です。

2人の笑い声は夜にとけていった

あなたがいない冬

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コメント

1

ユーザー

っすー、ちょっっっっとあれだね○○ちゃん国見ちゃんに影響されたかな?私も猫飼いてぇぇぇ😭吸いたい(?) 続き待ってます!

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