ある日、異世界に転生しまして。

第12話

俺とメリアスでお留守番

2021年01月07日

#日常

#異世界

#スキル

#転生

黄葵黒豆

フェンリルと精霊の姿が完全に見えなくなる。

赤ちゃんな俺（元・山田）

（さ、俺も歩く用意でも始めるかな）

赤ちゃんな俺（元・山田）

（あれ？）

メッセージ

ピコン

選択肢が現れました。

メリアスと二人っきりです。 100年前、何があったのか、メリアスにききますか？ ▶聞く ▷精霊が話すまで待つ

赤ちゃんな俺（元・山田）

（選択肢、久しぶりに出てきたな……）

メリアス

選択肢～？

赤ちゃんな俺（元・山田）

（あー……）

赤ちゃんな俺（元・山田）

（いや、なんていうか）

メリアス

？

赤ちゃんな俺（元・山田）

（というか）

空中に浮かんでいるシステムメッセージをじっとみつめる。

赤ちゃんな俺（元・山田）

（これも久しぶりにでてきたけど、フィフティー・フィフティーもこの頃全然出現しないな……）

メッセージ

ピコン

スキル『フィフティー・フィフティー』を使用しますか？ ▶はい　　　▷いいえ

赤ちゃんな俺（元・山田）

（あれ、出てきた）

赤ちゃんな俺（元・山田）

（スキルのこと考えたからか？）

メリアス

……

赤ちゃんな俺（元・山田）

（……）

赤ちゃんな俺（元・山田）

（なあ、メリアス）

残り時間　5秒メリアスと二人っきりです。 100年前、何があったのか、メリアスにききますか？ ▶聞く ▷精霊が話すまで待つ

赤ちゃんな俺（元・山田）

（あ……）

赤ちゃんな俺（元・山田）

（どうする？）

赤ちゃんな俺（元・山田）

（時間ねえし……聞くか？）

メリアス

どう～したの～

カーソルを聞くに合わせる。

赤ちゃんな俺（元・山田）

（あのさ……）

メリアス

ど～したの～

赤ちゃんな俺（元・山田）

（さっきの、さ、話なんだけど）

メリアス

さっき～？

赤ちゃんな俺（元・山田）

（……ちょっと気になって）

赤ちゃんな俺（元・山田）

（100年前、何かあったの？）

メリアス

あ～

メリアス

100年前にね～フェンリルは～

メリアス

当時の～姫様との～間に～

メリアス

子供を～つくったんだ～

精霊

（さっきメリアスが持っていた聖水）

精霊

（あれは聖女様しか、主しか作れないもののはずですわ……）

精霊

（つまり、この辺りに主が……？）

精霊

（でも……）

精霊

はあ

小さなため息を漏らす。

精霊

（わたくしはまだ、主に顔向け出来ませんわ）

精霊

（だけれど……）

精霊

（いつの日か、必ず助けてみせますわ）

精霊

（主……）

赤ちゃんな俺（元・山田）

（子供を……？）

赤ちゃんな俺（元・山田）

（え？）

赤ちゃんな俺（元・山田）

（フェンリルが？）

赤ちゃんな俺（元・山田）

（姫様って、人間だよな？）

メリアス

ニンゲン、だよ～

赤ちゃんな俺（元・山田）

（それってつまり……）

メリアス

でも～

メリアス

フェンリルの子は～この世に～生を受けて間もなく～命を～落としたんだ～

赤ちゃんな俺（元・山田）

（え？）

赤ちゃんな俺（元・山田）

（なんで……）

メリアス

それは～……

メリアス

フェンリルの～……特性、かな～

赤ちゃんな俺（元・山田）

（特性？）

メリアス

フェンリルは～ニンゲンとの間だろうと～子を成す子が～出来るの～

メリアス

でもね～

メリアス

うまれたばかりの子を～

メリアス

攻撃しちゃうんだ～

赤ちゃんな俺（元・山田）

（こう、げき？）

メリアス

そう～

メリアス

フェンリルは～うまれたころからそれなりの～殺傷能力を～持ってるの～

メリアス

その力を～親であるフェンリルが～試すの～

メリアス

つまり～

メリアス

どちらかが～死ぬまで～争うの～

赤ちゃんな俺（元・山田）

（え？）

赤ちゃんな俺（元・山田）

（は？）

赤ちゃんな俺（元・山田）

（まって、色々と頭が追いつかないんだけど……）

赤ちゃんな俺（元・山田）

（フェンリルが姫様との間に子どもをつくってて？）

赤ちゃんな俺（元・山田）

（それで、その子を……）

赤ちゃんな俺（元・山田）

（なんで？）

メリアス

それが～フェンリルという～魔物の特性だから～だよ～

赤ちゃんな俺（元・山田）

（特性だからって……）

赤ちゃんな俺（元・山田）

（そんな……）

赤ちゃんな俺（元・山田）

（あれ？）

ふと、フェンリルのステータスを鑑定したときのことを思い出す。

赤ちゃんな俺（元・山田）

（フェンリルには王族の血が流れている……）

赤ちゃんな俺（元・山田）

（ってことは……）

赤ちゃんな俺（元・山田）

（フェンリルは……あいつは、うまれた時……どうだったんだ？）

赤ちゃんな俺（元・山田）

（……）

フェンリル

ふん

フェンリル

くだらない

赤ちゃんな俺（元・山田）

（フェン、リル）

フェンリル

ほら、ベリルを集めてきた

フェンリル

食え

赤ちゃんな俺（元・山田）

（……そんな気分じゃねえよ）

赤ちゃんな俺（元・山田）

（なあ）

赤ちゃんな俺（元・山田）

（おまえ、なんで自分の子を……）

フェンリル

チッ

フェンリルが大きく舌打ちをして、こちらを睨む。

フェンリル

胸糞悪い

赤ちゃんな俺（元・山田）

（でも）

フェンリル

お前達ニンゲンも、我が子の命を奪うだろう

フェンリル

それと同じだ

赤ちゃんな俺（元・山田）

（いや、それは……）

フェンリル

それに……

フェンリル

いや、なんでもない

赤ちゃんな俺（元・山田）

（……）

また、周りに変な沈黙が落ちる。

メリアス

ごめんね、フェンリル

フェンリル

いや

赤ちゃんな俺（元・山田）

（でもさ、納得出来ねえよ）

フェンリル

納得出来ずともそれが全てだ

赤ちゃんな俺（元・山田）

（……）

精霊

まあ

精霊

なんですの？

精霊

この重苦しい空気は……

赤ちゃんな俺（元・山田）

（なんでもないよ）

メリアス

わ～ベリルがたくさん～

フェンリル

ふん

フェンリル

我は先に休む

精霊

へ？

精霊

ちょっと！！

精霊

お待ちなさい！

こちらを振り返ることなくフェンリルがどこかへと走り去る。

精霊

なっ……！

精霊

なんなんですの！

精霊

本当に自分勝手な生き物ですわ！

赤ちゃんな俺（元・山田）

（……）

メリアス

ま～ま～

精霊

全く……

精霊

では、わたくしはベリルを煮込んできますわね

赤ちゃんな俺（元・山田）

（え？）

赤ちゃんな俺（元・山田）

（あ、うん）

赤ちゃんな俺（元・山田）

（ありがとう……）

精霊

？

精霊

どうしましたの？

精霊

元気がありませんわね

赤ちゃんな俺（元・山田）

（え？）

赤ちゃんな俺（元・山田）

（あー……うん、ちょっと、ね）

精霊

ふうん

精霊

何があったのかはわかりませんが

精霊

元気を出すのですわ

赤ちゃんな俺（元・山田）

（うん）

精霊

それでは、向こうで煮込んできますわ

精霊が俺達から少し離れた位置へと向かう。

それを見届けてからメリアスが口を開く。

メリアス

そんなに～気になるの～？

赤ちゃんな俺（元・山田）

（いや）

赤ちゃんな俺（元・山田）

（気になるというよりは……さ）

赤ちゃんな俺（元・山田）

（なんかモヤモヤするんだよ）

メリアス

モヤモヤ～？

赤ちゃんな俺（元・山田）

（あいつは、フェンリルはさ）

赤ちゃんな俺（元・山田）

（殺したくて我が子に手をかけたのかな？）

メリアス

？

メリアス

そういう～生き物だから～

赤ちゃんな俺（元・山田）

（たとえそうだとしてもさ）

赤ちゃんな俺（元・山田）

（そういう生き物だから、で、片付けていい問題なのかな？）

赤ちゃんな俺（元・山田）

（我が子と生きる道ってねえの？）

メリアス

……

メリアス

少なくとも～

メリアス

フェンリル自身～自分の親を殺しているわけで～

メリアス

それと同じことを～自分の子にも～しただけじゃ～？

赤ちゃんな俺（元・山田）

（そうじゃなくて……）

メリアス

？

赤ちゃんな俺（元・山田）

（あー、だめだ）

赤ちゃんな俺（元・山田）

（うまく言葉に出来ない）

メリアス

……

精霊

あら？

精霊

あなた達までどうしましたの？

赤ちゃんな俺（元・山田）

（別に）

精霊

……やれやれですわ

精霊

さ、お食べなさい

精霊

きっとお腹が空いてイライラしているのですわ

赤ちゃんな俺（元・山田）

（そう、なのかな）

赤ちゃんな俺（元・山田）

（いや）

赤ちゃんな俺（元・山田）

（そうなのかも）

赤ちゃんな俺（元・山田）

（いただきます）

精霊

どうぞ、召し上がれ

とろとろに煮込んであるベリルが、精霊の魔法の力により、スプーンにのせられて俺の口へと運ばれていく。

赤ちゃんな俺（元・山田）

（……うん、おいしい）

精霊

当たり前ですわ！

精霊

このわたくしが拾ってきて調理したんですもの！

得意気な様子の精霊をみて少しいつもの調子を取り戻す。

赤ちゃんな俺（元・山田）

（よーし）

赤ちゃんな俺（元・山田）

（たくさん食べてはやく大きくなる！）

精霊

その調子ですわ！

赤ちゃんな俺（元・山田）

（おう）

赤ちゃんな俺（元・山田）

（今は考えていても仕方ない）

赤ちゃんな俺（元・山田）

（なあ、おかわりある？）

精霊

ありますわよ

赤ちゃんな俺（元・山田）

（んじゃ、おかわりくれ！）

精霊

ええ

精霊

もちろんですわ！

この日、俺はいつもよりたくさんの量の食事をとった。

胸の中のモヤモヤを紛らわせるかのように。

そして……

赤ちゃんな俺（元・山田）

（……うえ）

吐いた。

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黄葵黒豆

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