久しぶりの外は、すっかり夏の風が吹いていた。
じめじめと湿気が顔にまとわりつく。
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
そう思い立ち、電話もLINEもしたが、いずれも反応がなかった。
電話は、電源が入っていないらしく、留守電に繋がれた。
大陽
大陽
タクシーを呼び、駅に向かう。
どこか行くのだとしたら、駅だと思った。
しかし、どこにも彼の姿はなかった。
家にも行ったが、もちろんもぬけの殻だった。
そうして彼は、2度目の消息不明になった。
なぜ彼があんな言葉を置いていったのか、あんな甘い口付けを残していったのか、答えは見つからぬまま、時は過ぎた。
そんな時、ある都内の一角。
パソコンのモニターに囲まれた薄暗い部屋で男は笑みを浮かべていた。
謎の男
謎の男
謎の男
謎の男
謎の男
謎の男
謎の男
謎の男
謎の男
謎の男
虚ろな目つきで男はエナジードリンクの蓋を開けた。
あれから1ヶ月。
僕はウィーンで演奏会を開いていた。
2週間の演奏会も今日が最終日だった。
大陽
大陽
大陽
退院した日からずっと、彼にLINEをしていた。
しかし、返信はない。
今日で最後にしよう、と決めていた。
荷物を詰めながら、携帯に手を伸ばす。
大陽
大陽
大陽
思い切って、通話の発信ボタンをおした。
もう期待しない、この1か月自分にどれだけそう言い聞かせたことだろう。
毎日毎日言い聞かせたことで、もう割り切れただろうと思った。
しかし、電話を掛けているのは期待をしているから。
彼が出てくれるとどこかで信じてしまっているから。
出るはずのない発信音が、抑揚のない機械の声に代わる。
ーおかけになった電話番号は、電波の届かないところにいるか、電源が入っておりません。ー
ーもう一度おかけになるか、次の発信音に続いて留守番電話サービスに切り替え致します。ー
大陽
大陽
自嘲的な笑いがホテルの室内に響いた。
その笑いとともに涙が床に落ちた。
電話が、留守電に切り替わった。
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
大陽
最後は涙と嗚咽で、何を喋っているのか、自分でも聞き取れなかった。
その夜はずっと暗い部屋で泣き続けた。
しかし、そんな夜には頭中にメロディーが溢れて止まらなかった。
一晩で1曲を書き上げた。
異国の地で傘をさして歩いていた。
ここはオーストリアのウィーン。
服のデザインがこっちの会社の目にとまり、コラボの話が舞い降りた。
その取引のために一昨日から来た。
隆
隆
1か月前の彼の退院の日。
すぐに姿を消した。
なるべく遠くに遠くに逃げた。
そう、''逃げる''という表現がお似合いだ。
自分の気持ちから逃げたのだ。
溜めてきた気持ちが溢れて抑えが効かなくなる前に、気持ちから遠ざかりたかった。
毎日来るLINEも、無視を続けた。
隆
隆
雨の匂いはこっちでも変わらないな、と思った。
その時、ホテルの一室で電話がなり続けていることも知らずに。
隆
隆
こういう時に限って鈍感なのは何故だろう。
疑いもしなかった。
ベッドに座り、ネクタイを解きながらスマホを耳に当てた。
隆
隆
スピーカー越しに聞こえるのは、沈んだような自分を宥めるような彼の声だった。
いつしかそれは泣き声に変わり、想いを叫んでいた。
あぁ、俺は、と思った。
涙が止まらない。
隆
隆
隆
隆
それは目の前の霧が突然晴れ、その先に真っ青な空が見えたような気分だった。
答えはすぐ目の前にあったのに気が付かなかった。
自分はなんて愚かで馬鹿なんだろう、と自嘲した。
そして、涙を拭い、傘も持たずに部屋を飛び出した。
主
主
主
主
主
主
主
主
主
主
コメント
1件
あの男の人が気になるな…