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包丁を取り出すために、カバンに手を伸ばした僕の手を 彼は掴んだ

彼は中年の男だった。一瞬、自分の父親かと思ったが違った

まじまじと その顔を見ると、すぐに理解ができた

彼は僕だった

だいぶ歳をとっているようだが、紛れもなく僕自身だった

ちょっとお茶しようよ?

彼は僕の手を掴んだまま、道路の向かいにある喫茶店に歩を進めた

横断歩道を半分くらいまで渡ったところで、僕は彼の手を振りほどいた

男同士で手を繋いでいるなんて、変な人だと思われます

はは

彼は笑った

別にいいだろ?なんて思われようが

君は通り魔なんだから

喫茶店に着くと、彼は店員にアイスコーヒーとアイスカフェオレを頼んだ

ブラックはまだ飲めないだろ?

彼の言葉を意に介さず 僕は質問した

...過去を変えるのが目的ですか?

彼は口の端を少し上げた

さすが。話が早い

それから彼は 自分の半生について語り出した

とても興味深い内容だった。だって、それは自分の未来についての話なのだから

とはいえ、第三者が聞いてもつまらないものだろうから 話を折ると

僕は今日、通り魔をおこなって3人に軽傷を負わせ、捕まり、15年服役することになる

そして、服役中に 自分の行動を反省し、後悔したため、タイムマシンに乗って過去に来た

要約すると そんな内容だった

...だから道端で包丁を振り回すなんて、無意味なことは考え直して欲しい

自分自身から真剣な眼差しで見つめられると、何だか気持ちが悪かったが

彼の話、そして顔に刻まれた皺や 白髪交じりの髪は、どんな説得よりも雄弁だった

僕はカフェオレを飲み切るよりも早く、自分の計画を破棄することにした

15年は長い。 一度きりの人生を、今日1日で棒に振るのは確かに馬鹿げてる。 僕はそう思った

...わかりました

僕の反応を見て彼は、テーブルを指で軽くトンッと叩いた

包丁を渡せ という意味だろう

僕はカバンから 新聞紙に包んだ包丁を出して、テーブルの上に置いた

良かった。これで過去が変わる

彼は安堵の表情を浮かべ、そう言った

包丁を手渡した僕も、何か緊張の糸が切れたように感じた。

肩の荷が降りて、体が軽くなったような気までした

ありがとうございました

自分に対して使う言葉として適切かは分からなかったが、感極まって泣きそうになった僕は、そう言うとソソクサと席を立った

外に出ると、夕日がオレンジ色でとてもキレイだった

これからの未来は誰にもわからない

さっきまで敷かれていた運命のレールは、もう消し飛んだのだ

心の中でナレーションを流して、僕は少し微笑んだ

とりあえず、これから何をしようかな

そう呟いた

僕の手を、彼は再び掴んだ

そして彼は、笑顔で 僕に差し出したのだ

一丁の拳銃を

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解説 未来の僕は包丁で3人に軽傷しか負わせられなかったことを後悔して殺傷力の高い銃を渡した

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