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梨本和広
とと
美来
自分のことを知って欲しくて美来が話題を振った。
園之
人間らしい血の通った返事が返って来た。パンク一筋、音楽人間の園之、趣味の話題で嬉しいのだろう。
美来
園之
美来
園之
園之の暗い洞窟に一筋の光が届いたようだ。それを彼のラミー、否、ミラーで跳ね返しているかのように放ち始めた明るさ。
美来
まんざらでもなさそうな園之。
園之
美来
園之と美来と、沙華やや子にしか意味がわからないかもしれないが、美来には通じたのだ、その時園之のラミー語が。
でもこれは小説だから、読者がわかるように書くべきなんじゃないか? と悩む沙華やや子。――――彼女のことは置いといて、今一度二人のデートを覗いてみようじゃあないか。
――――そこへごはんがやって来た。
美来
園之
美来
園之がなにか言いたそうだ。
園之
やっと言えた。
ポッ。
パスタの中、魚介と一緒に入っているトマトよりも頬を真っ赤にする美来。
美来
園之の前には鉄板ハンバーグがジュージュー言っている。
園之
気を取り直すかのように園之がナイフとフォークを持った。
美来
美来は、パスタを堪能している途中でジュースを飲む時にやっと、店内の様子を落ち着いて見ることが出来た。
だって乙女だもん! やっぱ園之さん、超イケメンなんだもん。
美来にとって園之は『ラミー』としてパソコンで見るよりも、実物がはるかにセクシーオーラを放っているのだ。
だけど話し始めると頓珍漢。たまらぬギャップだ。
店内はアンティークドールやテディーベアに、ロマンチックな装飾のオルゴールが所狭しと飾られたメルヘンチックなムード。
かわゆい物が大好きな美来のツボをついて来る。
『素敵な女性の口説き方』にはまさか、お店までは載っていないわよねー。あたしのために……。嬉しいな!
園之
叫ぶ園之。まるで初めて食べた人であるかのようだ。
美来
園之
美来
園之
美来はフォークとスプーンをナフキンに置いた。
美来
そう言い残し、店を飛び出した。自分はこんなに速く走れたのかという程のスピードだ。涙が千切れて後ろへ流れ行く。
デス声、出た。
街中であろうとも、なりふり構わず、好きな人の裏切りに泣く女の雄たけび。
デス声なんか要らん! 要らん、要らん、要らんよっ。あたしは園之さんが!
とめどなく溢れ出る愛情たっぷりのデスボイス。
駅近くの小さな公園まで辿り着いた。この胸の痛みと疲労を癒やしたく、ブランコに揺られる美来。
ブランコを10回ぐらいこいだ頃、現れたるは汗だくの園之。美来をみとめた園之は、公園の入り口で一度膝に両手をやった。肩で息をしている。
そして顔を上げた園之と、園之をじっと見つめる美来の目が合った。
ひとたびおさまっていた美来の涙が再び溢れ出す。ウルウルした瞳にへの字口。
園之
美来
園之
なにも言えない園之。
美来
園之
美来
美来はさっきみたいに上手にデス声が出ないように気を付けて泣いた。今要らんから。今じゃないから。
園之
キッパリと園之が言い切った。
美来
今、美来は遠い目だ。デスボイスを出し切った疲れもある。
園之
美来
園之
美来
園之
美来
園之
美来
その時鳩のフンが園之の頭に落ちた。
園之
美来
あんたがクソ男だからそんなことになるのよ、と心の片隅で思わなくもない美来が陽炎の中に消えて行った。
ピンクの髪の毛にくっついたフンをティッシュで拭いつつ、淋し気な顔の園之は美来の背中を見送った。
***
今年の夏は猛暑だというけど、美来の胸の中には、一足お先に木枯らしが吹き荒むようだ。
あれから何度も園之から連絡があった。
メールには
園之
園之
でも美来は、差し迫って来ているライブのために集中したかった。穏やかな恋ならバンド活動の心の支えにもなるが、園之の独特な言動にはどうしても振り回されてしまう。
だから美来は一切返事をしなかった。
***
ハスタ
ハスタがカウントを取り演奏がスタジオで始まる。
今日は土曜日。いつも通り、美来来のバンド練習の日だ。
ひと通り演奏し終わったタイミングでベースの町木が言う。
町木
辰
と続けてギターの辰。
それはハッピーエンドを歌ったラブソングだ。
実は園之とのデートの前日に、突如と沸き起こった詞とメロディーだった。
大好きだったのにな、あたし、ラミーのことも園之さんのことも
密やかなため息にバンドメンバーは気づかなかった。そうしてみっちり2時間、本気120%のスタジオ練習は続けられた。
***
――――いよいよ迎えたライブ当日。
今回のライブはワンマンではなく、美来来を含め3バンド出る。美来来はトリを飾る。 本日はかなりの入りだ。お客さん、スタンディングで200人は入っているだろう。『ライブハウス・オールライト』満員だ。
自分達より先に演奏するバンドを客席で観ても良いんだけれど、今夜はなぜかそんな気分になれず、美来は控え室にいた。 他のメンバーは客席へ行き、自分たち以外の2バンドを観に行っている。
ボンテージファッションに身を包みツインテールにしている今日の美来。編み上げロングブーツを履いている。
2番度目のバンド演奏の中盤辺りで、ハスタ、辰、町木が控え室に帰って来た。
ハスタ
とハスタ。
――――出番だ!
お気に入りのミュージシャンのSEが流れ、照明の落とされたステージに、美来来一人一人のメンバーが入って行く。
時計草こと美来がマイクスタンドの前に立つとどよめきが起こり、パッとライトアップされ、すぐにロックンロールが始まった。
ライブオーディエンス
白熱するステージ。グイグイ客席から伝って来る感触。メンバーそれぞれの名を呼ぶファンたち。
ライブオーディエンス
2曲終わった後MCをする。
美来
そこで美来はメンバー3人の顔を見渡した。
3人はうんうん、と頷いた。
美来
と投げキッス。
ゴッリゴリのギターサウンドの中、ハードコアナンバーが始まる。美来来の人気ナンバーだ。