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昔々
地方のある村に
「お福亅という女が居た
そのほがらかな笑みは
自然と周りを明るくし
潤んだ瞳は
村中の男を彷彿とさせた
彼女はその名の通り
多くの人に「福」を与えた
「ある者」を除いては
6月上旬のこと
福
父
父は遠くのお福に声をかけた
福
お福は庭の畑を耕していた
母
母
福
母
福
泥のついた顔を拭い父に歩み寄る
父
福
父
福
父
父
福
母
父
福
福
足袋を履きながらお福は訪ねた
父
父
福
夜
父
母
父
父
福
母
父
父
父
父
父は酒瓶を抱えたまま寝てしまった
母
母は父に布団を欠けながら言った
福
福
お福は今年で十七だった
福
福
福
父
父
福
父
父は強くお福を揺すった
福
そのとき
ゴォォォ
福
耳をつんざくような激しい轟音がお福に襲いかかった
福
それが雨音だと理解するのに時間はかからなかった
ピチョン
福
お福の鼻先に水滴が落ちた
母
母
福
お福はバタバタと 慌てて用意を始めた
時刻は丑の刻のことだった
父
父
母
闇夜に作物や柵が吸い込まれていく
母は座り込んでしまった
母
父
福
お福は母の手を引っ張った
福
母
福
福
お福はきっぱりと言い切った
父
父
母
福
ドスン
父は腰を抜かしてしまった
父
福
母
二人とも正気が保てた様子では なかった
稲を植え、育てる作業というのは 気が遠くなるような時間と管理が 必要とされる
その努力が一晩で散ったのだ
二人が青ざめるのも当然だろう
福
福
その時だった
ピカッ!!
福
大きな雷が近くで落ちた
お福の横顔が照らされる
父
母
「なぁお福」
母
「雷様はおっかねえ人だよきっと」
母
「なんでもかんでも 連れていってしまうんだから」
母
母は雨と涙に濡れた ぐしゃぐしゃの顔で物乞いをした
母は正気ではなかった
父
父はその後すぐに 何かを言いかけたが聞こえなかった
大地の底から 低い唸り声がしたからだ
???
腹の底まで響くおぞましい声だった
母
母は恐ろしさのあまり戦慄いた
???
母
???
???
???
鬼神はギラギラとした目つきで
手を合わせて何か呪文を唱えた
そしてものすごい速さで上空へ上って行った
福
はっと気付いた時には
空は嘘のように晴れわたっていった
朝焼けがキラキラと輝いて 美しかった
父
母
泥だらけで泣いていた 自分達がちっぽけに見えた
その時
母は後ろの気配が消えていることに気が付いた
母
母
お福は空の上 鬼神に口を押さえつけられていた
福
父
母
鬼神
鬼神
母は自分のしたことの 重大さに気が付いた
母
父
父
父は険しい顔で鬼神に語りかけた
父
父
鬼神
父
鬼神
父
母も頭を下げた
父は膝をつきこの通りだと言い続けた
鬼神
鬼神は殺気立った目で父を見た
福
福
鬼神
鬼神
鬼神はお福を地上へそっとおろした
鬼神
そう言って遠くの空へ消えて行った
季節は秋へと変わった
福
父
母
母は涙を堪えてお福を着付けた
お福は自分を見て少し驚いた
福
母
福
二人は少し抱き合った
父
福
福
母
父
このために秋にしたのだった
福
福
福
その時強い風が吹いた
ビュオオオオオオ
家中の戸がガタガタと震える
父
福
風が止むといつの間にか 一人の老人が立っていた
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