亜空間が解け、造船所に夕日が差し込む。 蘭堂さんは中也の攻撃を受け、倒れていた。
中原中也
手前は手品師かクソ太宰
太宰治
あのね、中也
何の意味もなくギブスなんて付けるわけないでしょ
何の意味もなくギブスなんて付けるわけないでしょ
太宰治
全部話してくれるよね?蘭堂さん
蘭堂
八年前のあの日、
私は相棒である諜報員と共に此の地に潜入していた
私は相棒である諜報員と共に此の地に潜入していた
太宰治
相棒?
蘭堂
軍が秘密施設に封印しているという
高エネルギー生命体を奪取するためだ
高エネルギー生命体を奪取するためだ
蘭堂
だが其の生命体を手に入れたあの時
相棒が私と祖国を裏切った
相棒が私と祖国を裏切った
蘭堂
私と彼は其の生命体を奪い合い、
其の挙句此の国の軍に見つかり追い詰められた
其の挙句此の国の軍に見つかり追い詰められた
蘭堂
其の包囲を突破するために私は
奪った生命体…つまり中也君を、
奪った生命体…つまり中也君を、
蘭堂
私が操る異能生命体とすべく
其の封印を解いたのだ
其の封印を解いたのだ
蘭堂
其の瞬間、あの施設を記録ごと吹き飛ばし、
同時に私も記憶を失った
同時に私も記憶を失った
蘭堂
…私の名は蘭堂ではない
蘭堂
私の所持していた帽子の
スペルを見たこの国の者が誤読して名付けたのだ
スペルを見たこの国の者が誤読して名付けたのだ
太宰治
相棒は如何したの?
蘭堂
私が此の手で殺した
蘭堂
……中也君、君は荒覇吐そのものではなく
荒覇吐を制御するための入れ物として
荒覇吐を制御するための入れ物として
蘭堂
選ばれた人間なのだろう
蘭堂
だが君は荒神としてではなく一人の人間として強い
中原中也
そりゃどうも
蘭堂
君の中に何が住んでいようと、
君は既に君だ
君は既に君だ
蘭堂
其れで良いのではないか?
蘭堂
凡ての人間、凡ての人生は
結局自分が何者か知らないままに生きるのだから
結局自分が何者か知らないままに生きるのだから
中原中也
……
蘭堂
不思議だ、……少しも寒くない…
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
中原中也
死んだ後まで迷惑な旦那だぜ
それから一ヶ月が経った。 「荒覇吐事件」と名付けられた一連の破壊騒動は、
蘭堂の単独犯として処理された。
遺体は鄙びれた共同墓地に埋葬された。
崖にせり出すように並んだ碑銘のない墓石の群れ。 その墓石のひとつに中也は腰掛けていた。
中原中也
あんたが集めていた荒覇吐の記録は
全部ポートマフィアに奪われちまった
全部ポートマフィアに奪われちまった
中原中也
おかげで手がかりは無くなった
中原中也
…まあ、あんたが生きてても
その辺の話は誰にも云わなかっただろうけどな
その辺の話は誰にも云わなかっただろうけどな
中原中也
また来るぜ
白瀬
探したぜ中也
中也の前に現れる白瀬と呼ばれた少年。 電子遊戯場にて〇〇と一度接触した羊の少年だ。
中原中也
?、白瀬?よく此処が判ったな
白瀬
お前に謝ろうと思ってさ
白瀬
あの後俺達も反省したんだ。
今回の事でよく判った…羊の問題点がね
今回の事でよく判った…羊の問題点がね
白瀬
其れで皆で相談して解決方法を決めた
中原中也
お前達が決めたなら俺は───
瞬間、鈍い音と共に中也の腹に痛みが走ったがした。 何が起こったか理解するのに時間がかかった。
中原中也
おまっ……ぐっ……、!
白瀬
心底油断してる時に視界の外から攻撃する…
白瀬
そうすれば重力を使う暇は無い…そうだろ中也?
白瀬を押し返して座り込む中也の左腹には 短刀が刺さっている。
暗緑色のライダースーツに血が滲んだ。