ガッ
ゴン
萩
....
千広
おい
千広
なんか言えよ!
ゴン
千広
勝手に飯を取るなって言ってるだろ!?
千広
あー気分悪い
乱暴に戸が閉められる
僕達は今まで幸せだった
父さんが死んでから 母さんがおかしくなった
大人びていた母さんは 子供みたいになった。
だけど父さんの口癖だった 子供に腹をすかすな をずっと守ってくれていて 僕らにご飯をくれる
だけど母さんは僕らの年が増えている事に気づいていない。
だからご飯の量も増えていない
萩
……仁。
仁
なに?
萩
俺たち……幸せか?
仁
もう何回も聞いたよ。
仁
幸せなわけないだろう
仁
…どこかのアフリカの誰かさんよりは幸せかもね
萩
ははっ
萩
何回目だよ。それ
その日僕らは早めに寝た
日付が変わったか怪しい時間だったかな
僕は轟音で目が覚めた
萩
仁!?
本能的に弟の名前を叫ぶ
また鳴る轟音に僕の声はかき消される。
周りに仁はいない
僕は足早に部屋の戸を開けた。
仁
萩っ…
ガンッ!
千広
黙れ!
千広
喋るな!
母さんが仁を蹴ったり本で思い切り叩いている
ガラスも飛び散っていて踏み場所が無かった
その飛び散る破片の中にスナック菓子のようなものが混ざっていた
僕は理解した
仁は食べ物を取りに行っていたんだ
昨日僕が失敗したから
千広
寝てたのに!
千広
どうして!
千広
うるさいんだよお前はよ!
仁
お願い
仁
ご飯をたべさせて
仁
お菓子はいっぱいあるじゃん
千広
人の物を取るなって言ってんだよ!
千広
衣食住与えてんのにまだ文句あるの?
千広
気持ち悪いんだよお前は
千広
誰が食わせてやってると思ってるんだ
ガン
萩
やめて
千広
あ?
千広
あんたは見てるだけでしょ?
千広
やめてほしいなら行動しろよ!
母さんがガラス片を仁に刺す
萩
父さんは…
萩
今の僕達を見たらどう思う?
千広
死んでるんだから何も思わない
千広
薄っぺらい言葉だなぁ
萩
父さんの事は愛してたの?
千広
なわけないでしょ
千広
ただの金ヅル
萩
じゃあなんで!
萩
父さんが死んでから生まれた子供に
萩
父さんと同じ名前つけたんだよ
千広
……
千広
お前は本当に気色悪いなぁ
千広
もう寝るから
千広
お前らも黙って寝とけ
そう言って母さんは敷布団を整え始めた
僕は弟と自分の部屋に戻った







