任務完了報告書 提出者:こさめ 件名:対象集団〈六名〉殲滅任務 ―――――――――――――――――― 任務は、完了した。 対象は当初の想定通り、連携能力が高く、個々の戦闘力も平均以上。 特に以下の点を確認。 ・剣士(暇72) 反応速度・判断力ともに高水準。 ただし、仲間への信頼が行動判断に強く影響。 ・槍使い(自分) 近接戦闘における死角補完役として機能。 ・弓使い、魔術師二名、回復役 役割分担が明確で、長期戦に強い構成。 ――以上を踏まえ、内部からの崩壊が最も効率的と判断。 作戦は予定通り進行。 戦闘開始前に敵側の陣形・癖・詠唱タイミングを把握済みだったため、 初動で回復役を排除。 その後、弓使いを無力化。 その後、制御系魔術師を戦闘不能に。 攻撃特化の魔術師は抵抗が激しかったが、問題なし。 剣士(暇72)は最後まで残存。 彼は、最後までこちらを疑わなかった。 背後に立っても、武器を向けなかった。 ――これは誤算ではない。 計算通り。 感情の揺らぎは、発生していない。 致命的な支障には至らず。 最終的に対象は全滅。 剣士については、 苦痛を与える必要はなかったが、 抵抗の余地を完全に断つため、確実に処理。 確認後、現場を離脱。 世界側の反応は薄く、 事後干渉はなし。 記録・記憶ともに、 対象集団は「最初から存在しなかった扱い」となる見込み。 ――以上。 追記: 任務遂行に支障はなかった。 忠誠心にも揺らぎなし。 ただし、 次回以降、同様の構成を用いる場合、 「信頼」を基軸とした集団は、 引き続き内側から崩すのが最適と提案する。 提出、完了。
報告書を提出した後、魔王城の廊下を1人、歩いて部屋に向かった
任務後にいつも感じるはずの高揚も達成感もない
部屋に戻る 扉を閉める 鍵をかける
そこでようやく、肩から力が抜けた
槍を壁に立てかける
血は落としてある
汚れも、傷もない
いつも通りだ
なのに___
手が震えていた
こさめ
理由は分かってる
考えないようにしても、頭に浮かぶ
みんなのことが
任務は終わった
やり切った
失敗もない
それなのに、胸の奥でつっかえるものがある
罪悪感でも後悔でもない
もっと厄介なもの
――「役割」を演じきった感覚
あの笑顔も
一緒に過ごした時間も
何気ない会話も
背を任せられた戦闘も
全部嘘だったはずなのに
こさめ
独り言は壁に吸われて消えた
返事はない 当然だ
こさは仰向けに倒れた
天井を見上げる
そこには何もない
影も、記憶も、名前も
――滅びに、名前がつく前に
なぜか、その言葉だけが脳裏に残っていた
こさめ
呟いて、目を閉じる
眠れるはずなのに眠気は来ない
代わりに、胸の奥で何かが静かに軋んでいた
それは何か
こさは考えない
考えた瞬間、
任務は「完了」じゃなくなるから
だから今日も、何事もなかったように息をする
――次の命令を、待つために






