テラーノベル
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気がついたらそこはやけに優しい場所だった
ふわふわとした雲が床みたいに広がっていて
足を踏み出しても沈むこともない
空は淡い空色で、
ところどころ小さな星も浮かんでいる
まるで現実じゃないみたいな、夢の中の景色
でも、ここはーー
僕にとっては
いつもの場所だ、
ーーー
ぼくは小さくつぶやいて、
近くに転がっているぬいぐるみを抱き上げた。
くまの顔をしたそれは、いつもと同じように
何も言わない。もちろん、動きもしない。
ーーー
少しだけ寂しくなって、空を見上げた、そのとき
ーーふわり、と。
何かが落ちてきた
ーーー
ぼくはゆっくり近づく。
心臓が、少しだけ早くなる。
ここに、ぼく以外の誰かがいる なんて、初めてだったから。
ーーー
そっと声をかける
すると、その人はゆっくり目を開けた
ゾム
その声を聞いた瞬間、胸の奥がきゅっとした。
ああ、声だ。
誰かの、ちゃんとした声
それだけでなんだかすごく嬉しくなってしまう
ーーー
ーーー
そう言って、手を差し出す。
その人は、迷った後ゆっくりと手を取った
その瞬間
指先にちゃんとした温もりが伝わってくる
ぬいぐるみじゃないちゃんとした体温
ゾム
僕は嬉しくて思わず笑ってしまう
ーーー
ーーー
ーーー
そう言いながら
少し手を握る力を強めた
「逃げられないように」、じゃなくて
…「離れて欲しくなくて」
ーーー
僕はその人の顔を覗き込む
ーーー
自分でもびっくりするくらい
すぐにそう聞いていた
だってーー
こんなにふうに誰かと話せるの
初めてだったから、
その人は、小さく笑った
ゾム
ーーー
ーーー
僕は手を引く
このやさしい世界を見せたいから
少しでも長く
この温もりを話したくなくて…
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