まふまふside
今日は師匠と買い出しだ。
城下町の店をまわる。
師匠
師匠
まふまふ
まふまふ
師匠
今日は、師匠も心做しか はしゃいでいるように見える。
僕も、久しぶりの買い物で楽しみだ。
まふまふ
強盗
まふまふ
遠くから、男の声が聞こえた。
師匠
僕たちは顔を見合わせる。
まふまふ
師匠
まふまふ
僕たちは声のする方に走っていった。
まふまふside
強盗
男が刀を振りかざして叫ぶ。
師匠
強盗
師匠
師匠が煽るごとに 強盗はみるみる険しい顔になり、 青筋が浮かぶ。
強盗
強盗が刀を 師匠に向かって振り下ろす。
大丈夫。師匠は刀なんか当たらない。
僕はそっと後ろに下がって 師匠を見守る。
師匠は刀を避け、素早く身を翻す。
そして、大きく跳んで…… 回し蹴りで刀を弾き飛ばした。
強盗
忍びならではの身の軽さ、 師匠だけの身体能力。 師匠''だから''出来たこと。
まふまふ
僕の声が聞こえたのか、 師匠はこちらを向いて 親指を立てる仕草。
強盗
強盗の小さな声が聞こえた。
まふまふ
強盗が刀を拾い、 真っ直ぐこちらに向かって 歩いてくる。
え?
強盗は、にやりと笑みを浮かべる。
え?
全てが、 ゆっくり動くように見える。
強盗が、僕の頭上で 刀を振りかざした。
……え?
刀が、振り下ろされる。
師匠
師匠が僕に覆い被さる。
師匠
師匠でいっぱいの視界の隅に、 赤いものが飛び散る。
師匠が、斬られた。
まふまふ
まふまふ
まふまふ
僕は師匠の腕の中から抜け出して、 自分の服を裂く。
それを師匠の背中の切り傷に 強く押し当てて、止血を試みる。
師匠
師匠
まふまふ
師匠
まふまふ
まふまふ
師匠
師匠
師匠
まふまふ
僕は振り返って、 師匠を斬った強盗を睨みつける。
強盗
強盗
まふまふ
怒りで頭がぐらぐらする。
強盗
まふまふ
僕は、いつも腰に提げている短刀に 手を掛ける。
師匠が、護身用にと僕にくれた、 大切な短刀。
強盗
まふまふ
師匠はっ……僕を育ててくれた!
生きる術を与えてくれた!!!
お前なんかに分かったようなこと言われてたまるか!!
まふまふ
まふまふ
まふまふ
まふまふ
僕は一気に強盗に飛びかかる。
バシュッ!!!
真一文字に振った短刀の先から、 赤い液体が弾ける。
強盗
強盗
強盗
まふまふ
まふまふ
師匠が、少し笑ったように見えた。
この日、僕は初めて、
人を殺めた。
まふまふside
何だか、さっきから 師匠の様子がおかしい。
まふまふ
まふまふ
師匠
師匠
師匠は、ぐったりとしている。
''失血死''と言う文字が 頭の中で点滅する。
まふまふ
まふまふ
師匠
まふまふ
まふまふ
師匠
師匠
師匠
まふまふ
目頭が熱くなる。
師匠の顔が滲んで、歪む。
師匠
師匠
まふまふ
師匠
まふまふ
まふまふ
師匠
師匠はゆっくりと手を伸ばし、 僕の涙を拭う。
僕は師匠を抱えて、 師匠の道案内に合わせて歩き出した。
まふまふside
まふまふ
師匠
青々とした葉が生い茂る原っぱ。
空が近く見える。すごく綺麗な場所。
師匠
まふまふ
僕は、抱えていた師匠を そっと原っぱに下ろす。
師匠
師匠
まふまふ
まふまふ
『何色の花か、 咲くまでに当ててごらん!』
母さんの言葉を思い出す。
師匠
師匠
まふまふ
師匠
師匠
まふまふ
師匠
まふまふ
まふまふ
まふまふ
師匠
師匠
師匠
師匠
まふまふ
まふまふ
まふまふ
師匠
師匠
師匠が、ゆるゆると口角を上げる。
いつもの、からからした笑い声は 聞こえない。
原っぱに、赤い染みが じわじわと広がってゆく。
やだ……やだやだやだ!!!
駄目!!だめ!!
師匠がっ……いなくなっちゃうっ…!
師匠の顔に、 ぱたぱたと僕の水滴が落ちる。
師匠
師匠
まふまふ
まふまふ
師匠
師匠
師匠
師匠は、僕に手を伸ばす。
僕の頬を優しく撫でる手は、冷たい。
僕の白い手よりも、 白くなった師匠の手。
師匠
師匠
師匠
師匠
師匠
まふまふ
まふまふ
日が傾いて、原っぱが赤く染まる。
師匠は、いつも僕に言うみたいに、
さも、当たり前のように。
師匠
師匠
師匠の手が僕の頬を滑り、 髪の毛に指を通す。
まふまふ
まふまふ
師匠の手から、力が抜ける。
……僕は知っている。
瀕死の人間が ここまで動くことは出来ないこと。
''師匠''だから出来たってこと。
まふまふ
まふまふ
まふまふ
師匠の傍に寝転がる。
今日は、今日だけは……
ずっと一緒にいたい。
涙がいつ止まったのか、 僕は知らない。
両手を合わせて、目を閉じる。
師匠を原っぱの真ん中に埋めて、 僕はその場を離れた。
………また、
また、すぐに会いに来る。
腰に提げていた物に手を伸ばす。
血に塗れた短刀。
僕は
どんな手でも使ってやる。
人を殺める事だって。
やってのけてみせる。
だって………
一人前の忍びになるんだから。
──三年後──
春
まふまふside
あれから僕は、 東の大名の元についた。
今では城で一番重宝されている。
城の皆からはこう呼ばれているんだ。
日本一の忍び
まふまふ
まふまふ
斜面を登って、三年間の間に すっかり伸びた木々をかき分ける。
木の葉の緑が無くなった先に 待っていたのは……
満面の、黄色。
菜の花の、色。
まふまふ
まふまふ
師匠の、あの暖かい手だとか、 からからした笑い声だとか。
そんな師匠の暖かいところを 集めたみたいな、黄色。
まふまふ
菜の花畑の真ん中、 師匠が眠っているところまで歩く。
僕は屈んで、 黒い手甲から出ている指先で 土を撫でる。
人間が埋められているところに 咲く花は、 その養分で鮮やかな色になるらしい。
一際鮮やかに彩った菜の花。
その花を見つめて、 師匠に届くようにって祈りながら、 口を開く。
最後に師匠に言われた言葉。
眠りっぱなしじゃあ、駄目でしょ?
まふまふ
まふまふ
早く起きて。
それから、 僕が日本一の忍びになったとこ ちゃんと見ててよ。
だって、
あなたはいつまでも、 僕の師匠なんだから。
ノンカフェイン
ノンカフェイン
ノンカフェイン
ノンカフェイン
ノンカフェイン
ノンカフェイン
コメント
18件
(´;ω;`)…
めっちゃ、切ない…
ぁぁあ…泣いちゃうよ… 大変ですティッシュが足りません…っ( > <。) 番外編感動した…! 本編も楽しみっ