放送
――起床、全棟
冷たい金属音と共に、牢の天井に仕込まれたスピーカーから機械の声が流れた
目を開けたまま、体を起こす。眠ってなどいなかった
目を閉じていた時間も、耳だけはずっと、研ぎ澄まされていたから
柊 朔弥
(隣の部屋の声丸聞こえだな)
柊 朔弥
(いや、隣だけじゃないか)
部屋の壁は薄く囁き声さえも耳に入る
ー夜ー
人間
明日は鉱山作業移動だってよ
人間
まじかよ
人間
薬品の運搬が楽なのにな
柊 朔弥
(鉱山、薬の運搬、、、か)
人間
ってか、D ブロックの番号が5つ減ったらしいぜ
人間
またかよ、脱走か?
人間
いや、首吊りらしい
人間
Fんとこは喰われたらしいけどな
人間
はっまたかよ
柊 朔弥
(、、、喰われた)
柊 朔弥
(ここでも、喰う奴がいるんだな)
人間
早くここから出てぇな
人間
出ても地獄だろ
人間
それもそうか
不意に、奏多が身じろぎして目を覚ます
奏多
おはよぉさくやぁ
柊 朔弥
、、、おはよう寒くないか?
奏多
ちょっと、でもへーき!
柊 朔弥
そうか、、、
柊 朔弥
(奏多にはこんな世界見せたくなかったなぁ)
自分がここに放り込まれるのは仕方ない。運命だと諦めもついた
でも――奏多まで、こんな場所で、生きなきゃいけないなんて
彼の小さな体が、この先どれだけの苦しみにさらされるのか想像するだけで、胃がねじれる
柊 朔弥
( “生きようとすること”が、罰みたいな世界だ、、、)
ガシャン、と遠くで鉄が落ちる音
誰かが暴れたような音
続いて響く、複数の足音と、何かを殴る音
そして、それが唐突に“無音”へと変わる
柊 朔弥
(俺は絶対に、、、)
柊 朔弥
(奏多を辛い目に合わせない)
例え、自分がどれだけ踏みにじられようと、引き裂かれようと――
この子の命と笑顔だけは守り抜く







