テラーノベル
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兵士
金属の扉が開き、冷たい声が響いた
互いに目を合わせ、小さくうなずき合う
繋いだ手をそっと離して、二人で立ち上がった
兵士
背中を電気棒で小突かれながら、列に並ばされる
同じように番号を呼ばれた者たちが、どこか焦点の合わない目で前を向いていた
彼らと共に、朔弥と奏多も“労働場”へと連れて行かれる
今日が、最初の“仕事”だった
目の前にあったのは、大きな廃ビルのような場所だった
崩れかけた階層を鉄材で無理やり補強し、そこに資材や廃材を運び込んでいる
老朽化した建物を強引に修復させているらしい
仕事は、鉄材の運搬・ガレキの選別・崩れた壁の修復作業の手伝い――
どれも、体に重くのしかかるものばかりだった
最初に渡された小さな鉄製の台車を引きながら、歯を食いしばる
柊 朔弥
柊 朔弥
兵士
背中を打たれて、呻き声を漏らす
遠くで、まだ小さな手で木片を運んでいる奏多の姿が見えた
柊 朔弥
よろめく足を必死に動かしながら 前を向き続けた
奏多もまた、小さな体で、木くずや軽い鉄片を拾っていた
指の先は赤く腫れ、足元には擦り傷が絶えない
奏多
彼は泣かなかった
誰かに怒鳴られないように
息を切らして働く朔弥と、震える手で石を運ぶ奏多
お互いが見える場所で、命を削るような労働が続いていく
ー夜ー
帰ってきた牢で、食事も喉を通らないほど疲弊しながら、朔弥は奏多の手を握る
柊 朔弥
柊 朔弥
奏多
奏多
柊 朔弥
奏多
柊 朔弥
言葉は乾いていたけれど、奏多の頬にはうっすらと笑みが浮かんだ
この場所がどれだけ地獄でも
何もかも奪われても
“生きてる”ことだけは、まだ誰にも奪わせない