夕方の病院の廊下に 面会時間の終わりを告げるチャイムが鳴る
窓の外は沈みかけた陽が廊下を橙色に染めていた
阿部亮平
阿部亮平
阿部亮平
阿部亮平
俺は看護師さんに頼まれた書類を返しに 先生の研究室を訪れた
静かな部屋の中ーー 机の上にファイルが一つ開かれていた
阿部亮平
ほんの出来心だった
"何かに呼ばれているように"指が動いていた
ゆっくりとページをめくり見てみる
ーー提供者名: S・Tatibana ーー年齢: 17歳 ーー提供臓器: 心臓 ーー執刀医: M・Tatibana
阿部亮平
阿部亮平
視界を少し下にずらすと備考欄の端に手書きのメモが残っていた
『次に生まれ変わったら、お姉ちゃんに恋をする。 沙耶。』
阿部亮平
その名を口にした途端 胸の奥で"ドクン"と音が跳ねた
阿部亮平
俺は苦しくなって胸を押さえた
記憶の欠片が光のように弾ける
白い服の少女 「お姉ちゃんって呼んで」と微笑んだ唇
温もり、涙、笑顔
俺は涙を滲ませた
阿部亮平
すると背後の扉が静かに開いた
橘美咲
先生の瞳は夕陽の中で静かに揺れていた
阿部亮平
阿部亮平
先生は小さく息を吐く
橘美咲
阿部亮平
少しの沈黙が流れる 先生は笑うように、泣くように頷いた
橘美咲
阿部亮平
俺は声を震わせながら呟いた
橘美咲
阿部亮平
俺が静かにそう言うと 先生は涙を堪えきれず涙が頬を伝った
橘美咲
阿部亮平
俺は先生にそっと微笑んだ
風が吹き抜け白いカーテンが揺れる
『ありがとう。お姉ちゃん。』
橘美咲
橘美咲
橘美咲
私は今日初めて診断した
“恋の心臓”は、まだ――生きている
コメント
10件
妹さんだったんか、、(?) めちゃくちゃ感動した...、
めっちゃ感動した(T ^ T) あの子の正体は 先生の妹さんだったん だね!
泣きます。泣かせていただきます。えぇん……(?)