女子大生と男子中学生が交際している話 シーズン2

俺はダイニングテーブルでお母さんと向かいあって座り真剣な話し合いに挑んでいた。

___俺の通ってる塾は受験生を対象に夏と冬の年2回、3者面談が行われる。

今日はその3者面談で 「この夏の頑張り次第で呉董都(おとうと)学園も合格圏内に入るよ【=このままでは合格しないよ】」と言われた。

「お母さんとしては滑り止めの公立校に行くことになっても全然いいんだけどね」 「絶対に嫌だ。俺は呉董都学園に行く」

__等の会話を帰りの廊下でしていると どっかで聞いてたんじゃないのっていう見事なタイミングで

拒否権がなかった俺は、先輩が家庭教師に来るのを受け入れざるを得なくなった。

テーブルに突っ伏していると、今までソファーでスマホを弄っていたお姉ちゃんが口を開いた。

～bitter 5～

2日後。 契約通り先輩は昼から(仮の姿で)やって来た。

蒼陽高校に一般入試で入っただけあって先輩はなかなか教えるのが上手い。(ボロクソ言うけど)

俺がボロクソ言われながらアンペアだのボルトだのに立ち向かっていると、部屋のドアがノックされた。

2人分の飲み物をお盆に載せたお姉ちゃんが入って来た。 お姉ちゃんは「オームの法則」と格闘してる俺を一瞥すると先輩に向き直った。

俺はシャーペンを持ったままテーブルに突っ伏していた。 理由はハートが大ダメージを喰らったから。

ひどいことに2人は俺の存在を全く無視して何やら雑談している。 ……柚月が蒼陽高校に合格したらこの2人が先輩になるわけで

柚月は こんな人たちみたいになって欲しくないなぁ…… あと俺の方が絶対大変な気がする。

アンペアとか かわいくないパスカルとかと2時間ほど闘うとようやく休憩時間が与えられた。

俺は疲れたのでテーブルに突っ伏したまま答える。

先輩の口から物凄く意外な言葉が出た気がして顔を上げた。

頬杖をついてスマホを弄っている先輩を まじまじと見つめていると、先輩はスマホ画面から目を離さずに不機嫌そうに口を開いた。

▶こうた のレベルが上がった！ ▶こうた は「オームの法則もかわいくない」を覚えた！ ▶こうた のHPが20下がった！(残り5%)

___、と頭の中でゲームのナレーションごっこをやってしまうくらいには疲れた。

先輩が部屋に来てから4時間半。ようやく勉強会はお開きとなった。

「オームはもういいからトーブン(糖分)をくれ」と脳が主張してるので階下に降りてハー●ンダッツを調達する。

ちなみにハー●ンダッツはお姉ちゃんが「私専用」とか言いながら買って来た物だけど、特に名前とか書いてなかったので遠慮なく貰って来た。 どこかの非リアな弟家でも名前を書くのは当たり前。

先輩はベッドに寝そべってる大きなクマノミさんのぬいぐるみを指さした。

▶こうた のHPが10上がった！ 俺は少しだけ胸を張った。

そこまで言って言葉を切った。 ベッドの上のぬいぐるみを眺める先輩の顔が

「本気で好きだから」と言ったあの夜を想起させるほど いつもと違っていた。

俺が言葉に詰まっていると、先輩は頬杖をついて顔を背けた。

先輩は顔を背けたまま苛立たし気にため息を吐いた。

先輩はもう1度大きく息を吐くと 小さな声で付け足した。

～bitter 6～

溝口君を目で追うようになったのは、自宅からの最寄り駅が同じということに気づいてからだ。

自宅に帰る電車でたまたま同じ車両に乗り合わせて、同じ駅で降りたんだからびっくりした。

その日以来電車で溝口君の姿を探すようになった。 イヤホンで音楽を聞きながら舟をこいでいたり単語帳をめくっていたり

テレビにも出る有名人だけど この人も普通の男子高校生なんだなぁ、と思いながら遠巻きに眺めているだけだったけど

先日は漫画の話で盛り上がった。 そして今日_____…

溝口君が朋ちゃんの弟さんに勉強を教えるというので、朋ちゃん経由で最寄り駅に呼び出して、今日……

今日………………………

気持ちを伝える、はずだった。

溝口君の顔がいつもと違った。

今にも泣き出しそうな切なげな微笑を浮かべていたのは、ほんの数秒だったけど 私の脳裏にはいつまでも その姿がこびりついていた。

溝口君が背負っていたリュックから綺麗に畳まれた傘を差し出す。 私は顔を上げずに受け取った。

私は小さく深呼吸すると、手を握った。

たとえ一瞬でも、あんな泣きそうな顔されたら それで充分だ。

数歩 歩き出した溝口君が足を止めて振り替える。

涙が零れそうになるのを必死で堪えながら、私は言った。

__たとえ一瞬でも、充分だ。 そんな顔されたら、私の負けだ。

あの人は本気で彼女さんのことが好きなんだ 私のことなんて全く眼中にないんだ

それは火を見るよりも明らかな確定事項。

………こんなのワンチャンでも何でも無い。 朋ちゃんの嘘つき。

一番の嘘つきは私だ

__家に帰って、自分の部屋までたどり着くと 声を上げて泣いた。

お知らせ！

なんと先週の8月25日で このシリーズが始まってから 2年になります！！

連載化したのはもうちょっと後だけど、のぞみさんが柚月君に告白してから25日で2年！

趣味全開の読み切り作品がこんなに長く続くなんて…😳 読んでくれる読者の皆様と温かいコメントのおかげであります😌

思えばたくさんのキャラが出て来ました。 2周年記念として、メインの4人と悪役4人(四天王)の簡単な情報を纏めてみました↓

「誕生日一緒だ」「身長一緒だ」と１人で盛り上がってみてください😁

8月25日にTwitterに載せた画像↓

これからも 時々どろどろシリアスなラブコメをお届け出来ればと思っております。 読んでくださりありがとうございました❗