陽太
ヒトの調査=ヒトの観察、と考える彼女にとってはそれが当然だろう。
だが彼女の反応を見た限り、自分の正体については全く知らないようだった。
なら都合が良い。ここで始末しておけば楽に終わるのだ。
――が、その時ふと思った。
「お前、行くあてはあるのか?」
「いいえ。でもここにいても何もなさそうだし、とりあえず移動しようかしら」
「じゃあ俺と一緒に来いよ。面白そうなもの見せてやるぞ」
こうして2人は旅を始めた。
どこに行くかも決めずに、気の向くままに旅を始める2人。
だがそれは、ヒトの歴史にとって重大なターニングポイントとなるものだった。
◆ 【第一章】
『1人の男』
◆ 時は西暦3020年。人類はまだ、新たな技術を手に入れることは出来なかった。
科学は進歩し、人々はより便利になった生活を享受していた。
そんな時代に、ひとりの男がいた。
彼は、とある企業の研究職に就いていた。
毎日のように研究に明け暮れ、休日には趣味の登山に出かけることもあった。
また、彼が所属している研究室では、新素材の開発にも取り組んでいた。
ある研究者は言った。
「どんな金属よりも硬く、しかも軽量な物質を開発したいんだ」
別の研究者はこう言う。
「僕はもうちょっと、柔軟性のある素材を作りたいんだよねえ」
さらに、別の研究者はこんなことを言い出す