あれ、確かこっちに行ったはずなのに…。
朔蘭
王城を出た藍都を追いかけ、朔蘭も街へとやって来ていた。
朔蘭
ここに来てから数十分。 前にかすかに見えていたはずの彼の姿が雑多に押し流され、影を無くしていた。
私はまだ、魔力の痕跡を追えるほど長けてないし…。
ぎゅっ、と藍都からお守りにと貰った小さな笛を握りしめた。
入れ違いも嫌だし、帰ってようかな…。 もしかしたら、帰り道にまだ居るかもだし…。
うんうん1人で悩んでいると、
朔蘭
店から出て来たのを目視する。
朔蘭
またその背中を見失わないよう、急いで後を追いかけた。
あれ、また見失っちゃった…。 もう、あいと君たら、私の魔力の気配に気づいてくれないの?
朔蘭
しょんぼりとした気持ちを抱えながら、歩いて来た道へと踵を返した。
朔蘭
朔蘭
朔蘭
上手く歩いてきたつもりだったが、すれ違った誰かと肩がぶつかる。
朔蘭
しかし、当の人物はこちらには目もくれず、急いだ様子で足速に去っていった。
朔蘭
人間って、どうしていつもあんなに『不安』そうなんだろう…。
再度向き直る。人の流れに逆らい、歩みを進めた。
くるくると笛を手の中で転がす。
しばらく、ぼーっと歩き続けていると、
朔蘭
がたいのいい男
茶髪の男
朔蘭
朔蘭
がたいのいい男
朔蘭
がたいのいい男
朔蘭
小首を傾げた。
茶髪の男
茶髪の男
がたいのいい男
おかしなことを言う人だ。 私はちゃんと避けた。
朔蘭
朔蘭
がたいのいい男
がたいのいい男
関係ないところに飛びついて来た。
茶髪の男
周りもこちらの状況に気がついて来たようで、野次馬ができ始める。
がたいのいい男
がたいのいい男
っ…!
茶髪の男
がたいのいい男
どうしてその情報が…。
茶髪の男
朔蘭
途端、2人は人を変えたようにじりじりとにじり寄って来た。
朔蘭は足でそっと、半円を形取る。 すると、どうだろう。何処からともなく水柱が彼らの前に立ち塞がった。
茶髪の男
がたいのいい男
まずいことになった…。
野次馬をかき分け、足を走らせる。 この人だかりで大きな魔力を使うわけにもいかず、頭を悩ませていた。
どこに行っても人、人、人。人ばっかり…。
流石にもう、追ってきてないはず。
朔蘭
ずるずると壁に寄りかかり、その場にしゃがみ込んだ。
もう、走れない…。変身薬は…、良かった、ある。
今まで酷使してきた脚が悲鳴を上げている。
ちょっと休んだら、帰ろう。
朔蘭
ふと、誰かの気配を感じ取り顔を上げた。
がたいのいい男
あ、やばい、どうしよう。走れない。 水で…、いや、狭すぎる。 助けを。誰も居ない。 力づくで。いや、2人いる。
ぐるぐると脳をフル回転させる。しかし、どれも行き着く先は同じだった。
ぎゅっと笛を握りしめる。
…そうだ、笛。
藍都
藍都
って、言ってた気がする…。
がたいのいい男
朔蘭
小さな笛を口に咥え、力一杯それを吹いた。すると、微かではあるが甲高い音が鳴り響く。
茶髪の男
がたいのいい男
がたいのいい男
朔蘭
音は確かに出てるはず…。
朔蘭
伸びてきた腕に咄嗟に身構える。 次の瞬間、
?
男の腕にツタらしきものが絡みついていた。
朔蘭
青架
天音
朔蘭
青架
天音
噂…。 じゃあ、私はまんまと騙されたわけだ…。
未だ複雑に絡み合う植物が彼らの体を締め上げる。それに共鳴して苦しげな声が発せられた。
天音
青架
青架
朔蘭
くるりと振り返った青架が口を開きかけたそのとき、ここ一番で聞きたかった声が耳に届いた。
藍都
朔蘭
青架
血相を変えた藍都が朔蘭に抱きついた。
朔蘭
藍都
朔蘭
朔蘭
藍都
朔蘭
朔蘭
ちらりと藍都が青架たちを一瞥する。
藍都
青架
青架
天音
青架
背中に携えていた刀を鞘から取り出し、目にも留まらぬ速さで絡み合っていた植物たちが細切れになった。
地べたに落ちた男たちを再度立たせ、歩き始める。その後ろ姿を見つめていると、
藍都
青架
藍都
ペコリと、ぎこちなく藍都がお辞儀をした。
青架
満足気にひらひらと手を振り、去っていった。
朔蘭
2人で帰路に着く頃、男の発言が引っかかっていた朔蘭は疑問を投げかけた。
藍都
藍都
藍都
朔蘭
藍都
藍都
朔蘭
藍都
朔蘭
藍都
朔蘭
藍都
夕焼けを背景に、2つの楽し気な影がいつまでも伸びていた。
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あぁぁぁ好き♡