テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

夜の猫、猫花に酔う

一覧ページ

「夜の猫、猫花に酔う」のメインビジュアル

夜の猫、猫花に酔う

3 - 夜の猫、猫花に酔う(後編)

♥

42

2021年04月22日

シェアするシェアする
報告する

人喰いが現れた次の日の夜のことである。

いつものように少年が少女の目覚めを待っていると、人の足音が聞こえた。

少年

(1人…2人…いや、もっといるぞ。)

足音は次第に多く、大きくなっていく。

少年は少女をおぶい、近くの茂みに隠れた。

しばらくして、男の声が聞こえてきた。

村人1

たしかこの森に逃げ込んだはずだ。

村人2

この前仕留め損ねたからな。

村人2

こんどこそは…!

村人3

この前、女の子が黒猫と一緒にいるのを見かけたぞ。

村人1

なにっ!そいつは妖怪の仲間かもしれん。

村人1

そいつも一緒に仕留めよう。

少年

(なっ…!)

少年

(同じ人間を…。)

少年

(それも子供だぞ…?)

少年がこっそり顔を出すと、たくさんの男が列になって歩いているのが見えた。

少年

(すごい人数…)

少年

(俺1人じゃ太刀打ちできねぇ…。)

すると、列の真ん中辺りにいた女が突然声をあげた。

霊媒師

いるっ!

少年

!?

村人1

本当ですか!?

村人2

よぉし!ここら一帯をくまなく調べろぉ!

少年

(やばい…!)

少年は少女をおぶってそっとその場を離れた。

次の瞬間、

パキッ!

少年

(うわっ!)

少年が踏んだ枝の折れる音が、静かな森の中に響いた。

村人3

誰かそこにいるのか?

少年

(くそっ!こうなったら…)

少年は全速力で「ある場所」へと向かった。

村人1

いたぞ!あそこだ!!

村人2

撃てー!!

あちこちから聞こえる銃声。

次々と降りかかる、銃弾の雨。

少年

ぐっ…

少年

(この子は、この子は無事なのか…?)

少年は少女を守ることに必死だった。

足を撃たれても、彼は走り続けた。

地面に青い血が垂れる。

激痛に耐えながらも、走り続けた。

そして…

少年

へへっ…。

少年

こんなところまでノコノコとついて来やがって…

少年

…でも、ここまで来れば…

少年の目の前に広がるのは、妖艶に青く光る、猫花の花。

少年は中央に進み、少女を降ろした。

と、同時に、少女が目を覚ました。

少女

んん…

少女

ここは…?

少年

おはよう。どこも痛くない?

少女

?うん。

少女

っ!あなた、すごい怪我…!

少女

どうしたの…?

少年

大丈夫、これくらい。

少年

…少なくとも、ここまで来れば。

村人3

よし!周りを囲んだぞ!

村人1

全員!撃てー!!

村人が一斉に発砲した。

少女

きゃっ!

弾丸は2人めがけて飛んで行った。

…が、

少年

パァンッ!

村人2

うわぁー!!

飛んで行ったはずの弾丸は見えない壁によって弾き返された。

少女

…?

少年

悪いけどこの勝負、僕がもらうよ。

少年

…守らなければならない人が、いるからね。

大きく深呼吸をする。

少年の体が、青く光り出す。

少年

この花は、僕に力を与えてくれる。

少年が村人に向かって指をさした。

村人3

…っ!!

村人たちは、銃を地面に落とし、直立状態になった。

少年

これでお前たちは動けない。

村人1

く…そ…!

少女

ねえ、何をするつもりなの…?

少年

心配しなくていい。

少年

ちょっと「始末」するだけさ。

少年が左手を挙げると、頭上に巨大な青い火の玉が浮かんだ。

少年

お前らなんて、この森ごと焼き切ってやる…!

少年が手を振り下ろそうとした、その時。

少女

や、やめて!

少女が少年の左腕を掴んだ。

少年

何をするの?

少年

あいつらは僕たちを殺そうとしたんだよ?

少女

…でも、

少女

それでも、人を殺したくない…。

少女は左腕の上の方にしがみついた。

少年

ちょっ…そんなとこ掴んだら火傷しちゃうよ!?

少女

ううっ…

少女

お願い…

少女

もう、人が死ぬところは見たくない…

少年

…!

少年

…しょうがない。

少年

おい、お前ら。

少年

ここにいるお嬢様のご好意に乗じてお前らを殺すのはやめにしてやる。

少年

ただ、僕たちに関する記憶は全て消去させてもらう。

少年が指をパチンと鳴らすと、村人たちは崩れるように倒れた。

少年がもう一度指をパチンと鳴らすと、大量の透けた猫が出てきた。

少年

あいつらを村まで届けて。

猫たちはニャーニャーと鳴きながら村人の方へ向かっていった。

そして、猫たちは村人と共に消え去った。

少年

うっ…

少年は全身の力が抜けるような感覚に襲われて、その場に倒れ込んだ。

少女

!!

少女

大丈夫!?

少年

こんなに妖力を使ったのは初めてだ…。

少年

花の力を借りたとはいえ、少し疲れたよ…。

少年

はは…僕、猫花に酔っちゃったみたいだ…。

少年はそう言って笑ってみせた。

少年

少し…休んでもいい?

少女

もちろん…!

少年

ありがとう。

少年

…僕も、1人だった。

少女

…!

少年

ねえ、これからも一緒にいてくれる?

少女

少女は少年にそっと近づいた。

そして、少年の頬に口付け、抱きしめた。

少年

…!

少女

当たり前じゃん…!

少女

私も、ずっと1人だったんだから…!

少年

…ありがとう。

少年

嬉しい。

少年は少女を優しく抱きしめ返した。

やがて2人は夜の闇に溶けていく。

この作品はいかがでしたか?

42

コメント

1

ユーザー

💓

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚