主
主
主
主
これは、あるひと夏の淡い記憶___
梅雨に入ったばかりの頃
あるところに“ボク”と言う子が 住んでいました。
ボクは迷っていました。
何にって?
それは、
この人生を終わらせるかどうか。
ボクは、高校に入学してから、 わけもなくいじめられていたのです。
それは、あっという間にクラス中に 広まってしまいました。
しかし、ボクには、助けてくれる友達も 家族もいませんでした。
先生もいじめなんてそっちのけ。
こんな地獄のような日々を生きていて、
ボクの心は雨に降られてずぶ濡れでした。
ある夜、ボクは高いビルの 屋上にいました。
その日は、もう6月だというのに、 冷たい風が吹いていました。
雨はどしゃ降り。
服も髪も、もうとっくにびしょ濡れです。
でも、ボクはここに来ていました。
ボクは、ここから飛び降りることに 決めたのです。
誰にもボクを乾かすことは できないのだと、
そう思いながら。
飛び降りようとした、その時。
「まだ捨てんのは早いんじゃね?」
…同い年くらいの、男の子。
“キミ”は雨が降っているというのに、 傘もさしていません。
ボクは、風邪を引いてしまうと、 キミに言いました。
「それより、お前のほうが傘いるだろ。」
そう言って、キミはボクに傘を 差し出しました。
太陽のような笑顔で。
ボクは、その笑顔が眩しくて耐えられず、 泣き出してしまいました。
キミは、そんなボクを見て、 まだ笑っているのです。
その後のことをボクは覚えていません。
いつの間にか、ボクは家にいて、 ソファで眠っていました。
次の日も、ボクは雨が降っている中 学校に行きます。
朝も、いつも通りいじめられてHRが 始まりました。
でも、今日はちょっと違う。
転校生がいるそうです。
それが…キミでした。
キミは、ボクの隣の席に来ました。
「…俺が助けてやるよ。」
キミは小さな声で言いました。
でも、ボクにはよく聞こえた。
登校中に降っていた雨がやんで、 空が晴れました。
その後もキミは、相変わらず明るい笑顔で 授業を受けていました。
学校が終わりました。
ボクはまた屋上に呼ばれると 思っていました。
でも、呼ばれません。
なぜでしょう?
ボクが帰ろうとしたら、キミが 近づいてきました。
「ほら、一緒に帰んぞ。」
キミが差し伸べた手をボクは掴みました。
その手はとても暖かかった。
ボクは、帰りながら話を聞いていると、
キミはクラスの人たちに、 いじめを辞めるように言ったらしいです。
「もう、泣く必要なんかねえから!」
そう言って、キミは帰っていきました。
次の週から、いじめはパッタリと なくなりました。
こんなにすぐに無くなるものなのかと、 ボクは驚きました。
でも、たしかにキミはイケメンで、 明るくて、誰からも惹かれる存在でした。
誰にも乾かせないと思っていたボクが、 キミによって乾かされました。
このころ、ちょうど梅雨が明けました。
ボクの生活は楽しいものに一変しました。
君のおかげで。
本当に感謝してもしきれません。
でも、そんなこと思っていたのも 束の間でした。
7月のある日。
その日は、久しぶりに強い雨が 降っていました。
ボクは、今日もキミと一緒に学校から 帰っていました。
楽しく話していた、、、はずでした。
「あぶない!!!!」
ボクには、そんな声が聞こえました。
目覚めたとき、ボクは病院にいました。
ボクは、トラックにはねられたようです。
でも、それにしては、 怪我が軽いような…?
ボクの嫌な予感は的中してしまいました。
キミは、ボクを庇って、 大怪我を負っていたのです。
お医者さんには、目覚めるか どうかもわからないと言われました。
ボクは、何も考えられませんでした。
キミに二度助けられたボクには、
君がいない日々というのが、 考えられませんでした。
その一ヶ月、ボクはなんとか 日々を生きていました。
キミが目覚めることを信じて。
キミがまた、
太陽みたいに笑ってくれることを信じて。
8月のある日、病院から電話が来ました。
…キミが目覚めたようです。
ボクは、すぐに病院に向かいました。
キミがまた笑って、
待ってくれているとボクは 思っていました。
でも、扉の先にいたキミは
ボクが知っているキミでは ありませんでした。
キミは、いつも明るい笑顔だった。
今は、虚ろな目をして、 どこかを見ている。
「君…誰?」
自信のない声。
ボクには理解できませんでした。
涙すら出てきませんでした。
なんで、そんな事言うの?
なんで、キミじゃないの?
キミは、記憶喪失になってしまいました。
8月の最後の日。
キミは引っ越していきました。
記憶喪失で、今の状態じゃ、 ここではやっていけないのでしょう。
ボクは、キミと音信不通に なってしまったのです。
でも、ボクはその後も学校には 行き続けました。
せっかくキミが救ってくれたことを、 無駄にしたくはない。
だから、ボクは頑張った。
数年後、ボクは社会人になりました。
でも、就職した会社はブラック企業。
毎日がつらい日々でした。
でも、ボクにはもう雨はふりません。
太陽を見つけたからです。
それは、キミによく似たYoutuber。
ボクはキミに会いたかった。
だから、同じ界隈で有名になって そのYoutuberに会おうとしました。
そして、いろいろなオーディションを 受けまくって、
やっとこのグループに入ることができた。
それが今の“雨乃こさめ”。
ボクはこの日、“雨乃こさめ” としてやっていくことを決めた。
そしてキミは、“暇72”として生きていた。
なんで同じグループにいるのって?
それは、たまたま同じオーディションに 受かったんだよ〜!
やっぱり、“暇72”はキミだった。
それがわかったとき、こさめは めっちゃ嬉しかったよ!
こさめの運、全部使ったな〜、 なんて思ってw
でも、なつくんはボクのことは 覚えてないんだ。
だから、もちろんキミがボクを助けてくれたのも覚えてない…。
でも、こさめはなつくんが 思い出してくれるまで、なつくんと ずっと一緒にいるんだ!
まだボクを助けてくれた感謝を 伝えられていないから!
暇なつ
暇なつ
こさめ
こさめ
こさめ
暇なつ
www
なつくんに呼ばれちゃった〜。
まあ、まだ なつくんの瞳にはこさめしかうつってないから。
こさめは頑張るよ。
『“キミ”の瞳に“ボク”がうつるまで。』
暇なつ
暇なつ
こさめ
.End
コメント
1件
エモい〜!ボクとかキミをカタカナを使っている所もいいし、主様のエモくて、なんか儚い、そして感動できる作品が大好きです!!