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コメント
1件
いやもう、冒頭から舞ちゃんの心情が痛いほど伝わってきて胸がギュッてなったわ……。あの「ふざけんなよクズ」って心の声と、笑顔で別れを受け入れる姿のギャップがリアルすぎる。「別れても仲良くしような」って言われた時の虚無感、分かりすぎて泣ける。恋愛に臆病になっちゃうのも納得の展開やった。続き読みたい🔥
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―――高校2年の秋、 私は3度目の失恋を経験した。
舞
夕闇迫る18時過ぎ。
嗚咽を漏らしながら歩く私に、周囲からの訝しげな視線が突き刺さる。
帰宅途中の学生や会社員、夕飯の買い出しに出掛けていたであろう主婦の群れ。 夕方の並木通りを行き交う彼らの視線が、一斉に私へと向けられている。
……無理もない。
涙と鼻水でぐしゃぐしゃの顔を恥ずかしげもなく晒し、号泣しながら足早に歩く私の姿は端から見ても悲惨すぎる。
これでは目立って注目を浴びてしまうのも仕方がないというもの。
そして、そんな私を案じて声を掛けてくれるような人は、この場に誰一人としていなかった。
……でも、それはそれで好都合だ。
もし声を掛けられたとしても、私も他人に意識を向けられる余裕なんてなかったから。
舞
とめどなく溢れる涙を、必死に手の甲で拭う。
『―――あのさ、別れてほしいんだけど』
放課後、待ち合わせ場所に現れた私の彼氏は、実にあっけらかんとした態度で別れの言葉を口にした。
舞
驚きで目を見開く。
言葉が出てこなかった。
制服デートだと浮かれていた私に放たれた言葉は、奈落の底へ突き落とさんばかりの衝撃だったから。
別れの予兆なんて何も感じていなかったし、なんなら前日の深夜まで、普通にラインを楽しんでいた仲だった。
関係が拗れるような喧嘩なんてしてないし、「また今度デートに行こう」なんて言ってくれたのは、一緒に水族館へと出掛けた3日前のことだ。
だから心の準備すら出来ていなかった。
舞
タチの悪い冗談だと思った。
またいつもの悪ふざけだって思いたかった。
だって目の前にいる男の態度は、実に堂々としていて明るいものだったから。
彼女に別れを告げる男の纏う空気じゃない。
舞
恐る恐る尋ねる私とは逆に、彼氏はなんとも爽やかな笑顔を私に披露してみせた。
元彼
舞
元彼
舞
―――浮気じゃんか。
元彼
元彼
元彼
舞
……だから、って何だ。
浮気してた身分で「もういいかな」って何様のつもりだ。
反省の色すら滲んでいないその顔を、容赦なく殴ってやりたい衝動に駆られた。
舞
元彼
どっちが先か後かなんて聞いてないし。
そう突っ込んでやろうかと思ったけど、罪の意識すら感じていない清々しい顔を見ていたら――― ……もう、どうでもよくなった。
何の悪びれもなく、自らの過ちを笑顔で明かす彼氏が心底気持ち悪い。 彼女がいながら他の女の子とヤれる神経も理解できないし、そのヤッた女すら汚いと思ってしまう。
最低な彼氏と浮気女に殺意すら湧いたけど、噴出しそうになる醜い感情をなんとか理性で抑え込んだ。
こんな裏切り者の為に、一時の迷いで人生を棒に振る方が馬鹿らしい。
だから愛想よく笑顔を作った。
舞
舞
元彼
舞
舞
元彼
元彼
舞
……本当は「ふざけんなよクズ」って罵倒してやりたかった。
別れるなんて嫌だよって、可愛らしく泣いて縋りつきたかった。
でもそんなこと出来ない。
平然と私を裏切った相手に、そんな無様な姿を晒すなんて一生の恥だ。
……だから、笑った。
聞き分けのいい女の子のフリをして、軽く振られてあげる役に徹した。
結局見栄とかプライドが邪魔をして、素直に別れ話を受け入れる形になってしまった。
舞
重いため息が漏れる。
一気に号泣したせいで、涙が止まった後は心も体もぐったりしてた。
まぶたも熱くて腫れぼったくて、きっと酷い顔をしているに違いない。
こんなに泣き晴らした顔で家に帰るわけにもいかず、人気のない公園に、私は足を踏み入れた。
紅に染まるブランコに腰を下ろし、錆び付いた鎖を緩く掴んで地面を蹴る。
キィ、と軋む音を奏でながら、私を乗せたブランコは前後に揺れ始めた。
涙の筋が残る頬を、吹き抜けていく風が優しく撫でていく。
舞
自嘲めいた笑いが込み上げる。
まさか浮気されていたなんてつゆ知らず、私は青春を謳歌している気になっていたんだ。
いつも明るくて話も面白くて、お調子者な彼のことが私はとても好きだった。
彼も「好きだよ」って何度も言ってくれたのに―――こんな結末はあんまりだ。
舞
ぽつり、ひとりごちる。
いつもそうだ、片想いの期間はすごく楽しいのに、交際にまで発展すると途端に全部が駄目になる。
好きになれなかった、思ってた印象と違った、他に好きな人ができた――― いつも、私の一方通行だ。
舞
頑張ってアピールして、告白したらOKの返事を貰えて有頂天になっていた私に、「やっぱり好きになれなかったから別れよう」と言われたのは、その僅か2ヶ月後のことだった。
だったらなんで告白を受け入れたんだよって、文句のひとつも言いたくなる。
舞
返事を保留にしてほしいと一言あれば、たとえ振られても傷も浅くて済んだのに。 どいつもこいつも自分勝手だと憤慨する。
―――基本的に恋愛は追うタイプ。
逆にグイグイ迫られると引いてしまう。
そういう気質のせいか、誰かに告白された時は必ず断ると決めている。
まあ実際のところモテないから、告白されたことなんて一度もないけれど。
それでも―――次に付き合う相手が出来たら、今度は私が告白される形がいい。
ちゃんと私のことを好きでいてくれる人がいい。
嘘をつかない人がいい。 浮気をしない誠実な人がいい。
そうやって失敗を繰り返す度に、次への理想は高くなっていく。
苦い失恋経験を繰り返して、私はすっかり恋愛に臆病になってしまった。